マテリアル・ガールズ フェミニズムにとって現実はなぜ重要か
価格:3,960円 (消費税:360円)
ISBN978-4-7664-2987-9 C0036
奥付の初版発行年月:2024年09月 / 発売日:2024年09月中旬
ジェンダーアイデンティティとは何か
混迷をきわめるジェンダー問題を分析し、 平等な社会のための現実的な解決策を提示する
多様な「性」を尊重する社会づくりが世界的に進むなかで、それに合わせた法制度などが整備されつつある。その一方で、複雑化した「ジェンダー概念」への理解が追いつかず、社会的混乱を来してもいる。本書では、生物学的性別よりもジェンダーを優先する、いわゆる「ジェンダーアイデンティティ理論」が生まれた思想的背景を、ボーヴォワール、ジュディス・バトラーなどを振り返りながら丁寧に説明し、「ジェンダーアイデンティティ」とは何かを明らかにする。さらに、女性専用スペース、医療、政治、データ収集など、さまざまな文脈において生物学的性別の重要性を提示することを通して、「誰もが生きやすい社会」の実現に向けた現実的な解決を試みる。
キャスリン・ストック(キャスリンストック)
1972 年生まれ。元イギリス・サセックス大学教授。オクスフォード大学で哲学の学士号を、セント・アンドリュース大学で修士号、リーズ大学で博士号を取得。専門は、美学、フィクションの哲学。特にジェンダーと性別(セックス)に焦点を当てた研究が注目を集めている。ジェンダーと性別の複雑な問題に対する哲学的研究は、フェミニズムとジェンダー理論の分野で重要な貢献をしている。著書に、Only Imagine: Fiction, Interpretation and Imagination, OUP, 2017 など。
中里見博(ナカサトミヒロシ)
大阪電気通信大学教授。専門は憲法、ジェンダー法学。主要著作に、『ポルノグラフィと性暴力──新たな法規制を求めて』(明石書店、2007 年)他。翻訳に、キャサリン・マッキノン、アンドレア・ドウォーキン『ポルノグラフィと性差別』(共訳、青木書店、2002 年)、キャサリン・マッキノン『女の生、男の法』上下(共訳、岩波書店、2011 年)。
千田有紀(センダユキ)
武蔵大学社会学部教授。専門はジェンダーの社会学、現代社会論、家族社会学、教育社会学。
主要著作に、『日本型近代家族──どこから来てどこへ行くのか』(勁草書房、2011 年)、『女性学/男性学』(岩波書店、2009 年)、共著に、千田有紀・中西祐子・青山薫『ジェンダー論をつかむ』(有斐閣、2013 年)、翻訳に、シーラ・ジェフリーズ『美とミソジニー』(共訳、 慶應義塾大学出版会、2022 年)他。
目次
日本語版への序文
序 章
第1章 ジェンダーアイデンティティの簡潔な歴史
局面1 ボーヴォワールが「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」と言った
局面2 マネーとストーラーが「ジェンダーアイデンティティ」概念を導入した
局面3 アン・ファウスト=スターリングが、生物学的な性別は「連続体」だと主張した
局面4 バトラーが「ジェンダーはパフォーマンスである」と説いた
局面5 ジュリア・セラーノが「ジェンダーアイデンティティが人を女性や男性にする」と言った
局面6 ジョグジャカルタ原則が、ジェンダーアイデンティティを人権として認めることを推奨した
局面7 「ターフ」という概念が発明された
局面8 アイデンティティの爆発的増殖
「ジェンダー」の持つさまざまな意味
議論を擁護するために
第2章 性別とは何か
性別とは何か
普通、人の染色体が何なのか、外性器がどんな形をしているのかを知らない
性分化が異なる人がいる
性別は社会的に構築されている①
性別は社会的に構築されている②
性別は社会的に構築されている③
「自然なもの」と「人工的なものとの対立は存在しない
結 論
第3章 なぜ性別が重要なのか
医 療
スポーツ
性的指向
異性愛の社会的影響
競い合わせるべきではない
第4章 ジェンダーアイデンティティとは何か
ジェンダーアイデンティティとトランスでない人びと
「スティック・オブ・ロック」モデル
医療モデル
クィア理論モデル
「同一化(アイデンティフィケーション)」モデル
同一化モデルのそのほかの帰結
第5章 何が人を女性にするのか
概念分析
概念としての〈女性〉の機能
ジェンダーアイデンティティとしての〈女性〉
利益のヒエラルキー?
社会的役割としての〈女性〉
WASを支持する根拠の問題点
WASに反対する追加的な論点
第6章 フィクションへの没入
法的フィクション
フィクションと現実
没入とは何か
フィクションに没入することのメリット
個人レベルでの没入のリスク
制度レベルでの没入のリスクーー他人への没入の強制
性別不合な言語がもたらすリスク
私自身の代名詞の使い方
第7章 なぜこんな事態にまで至ったのか
ゲイやトランスへの偏見の歴史
トランス活動家のプロパガンダとその効果
客体化と「トランス女性は女性である」の関係
客体化とオートガイネフィリア
第8章 今後のよりよい運動に向けて
もっと非二元的(ノンバイナリー)であれ
運動の主題を変えるな
よりインターセクショナルであれ
アカデミックな(高踏)理論をより少なく、アカデミックなデータをより多く
謝辞
解説(千田有紀)
訳者あとがき
注
索引