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美術品にかかわる法律の知識アート・ロー入門

アート・ロー入門 美術品にかかわる法律の知識

A5判 352ページ 並製
価格:3,740円 (消費税:340円)
ISBN978-4-7664-2741-7 C3032
奥付の初版発行年月:2021年04月 / 発売日:2021年04月上旬

内容紹介

▼アート×法律?
▼芸術家、美術愛好家、画廊、美術館、画廊、アートビジネスにかかわるすべての方へ向けて!

ナチス略奪美術品をめぐる紛争、
エゴン・シーレの真贋とオークションの責任、
ダ・ヴィンチ素描画を仲介した美術商の責任 etc....

法律や裁判は、アート(芸術)の世界から最も縁遠い、無粋な堅物たちが活動する領域と考えている方が多いのではないだろうか?

しかし、実際上、アートと法律は切っても切れない関係にある。本書に紹介するアート作品にかかわるさまざまな事件は、各作品の個性・来歴やアートの歴史の一部にもなっている。法律に興味がない方でも、どのような作家の作品がどのような紛争に巻き込まれたのかという観点から本書を読み進めていけば、気づかないうちにアート・ローを理解していただける。

登場する美術品に思いを馳せながら、アートと法律を楽しんで読み解ける一冊。

著者プロフィール

島田 真琴(シマダ マコト)

慶應義塾大学大学院法務研究科教授、弁護士(一橋綜合法律事務所)。
1979年慶應義塾大学法学部卒業。1981年弁護士登録。1986年ロンドン大学ユニバーシティカレッジ法学部大学院修士課程修了(Master of Law)。ノートンローズ法律事務所、長島大野法律事務所勤務等を経て、2004年より現職。2005年から2007年まで新司法試験考査委員。2015年から2016年ロンドンシティ大学ロースクール客員研究員、2018年より同大学名誉客員教授。英国仲裁人協会上級仲裁人(FCIArb)。
専門:国際商取引一般、国際訴訟及び国際仲裁、アート法、イギリス法。
著作に、『イギリス取引法入門』(慶應義塾大学出版会、2014年)、『The Art Law Review』(共著、Business Research Ltd、2021年)、「The Operation of Mitigation under Japanese and English Commercial Law: A Comparative Analysis」 International Trade Law Review Issue 2(共著、2020年)、「Termination of a continuous contract and good faith under Japanese and English law」慶應法学38号(2017年)、「21世紀におけるイギリス契約法の変容とEU離脱」慶應法学36号(2016年)、「信託訴訟の国際裁判管轄」慶應法学28号(2014年)、「イギリスにおける金銭支払を命ずる判決の強制執行」法学研究84巻12 号(2011年)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はしがき

 00章 アート・ローとは何か
1 アートとは
2 美術品の取引と法律
3 美術品の展示・公開と法律
4 芸術家のための法律
5 アートの商品化
6 アートの保護、促進
7 アート・ローとは何か

 01章 美術品の盗難予防、デューデリジェンス
1 美術品の盗難予防
2 美術品・文化財の盗難予防のための国際条約
3 美術品犯罪を規制する各国の刑事法
4 盗品の予防・被害者への返還に関する業界団体の倫理規程
5 美術品取引とデューデリジェンス
CASE STUDY 東京の美術館で見つかったレイノルズの肖像画

 02章 盗品・略奪品の取戻し
1 盗品の取戻しに関する日本の法制度
2 盗品の取戻しに関するイギリス法
3 盗品の取戻しに関するアメリカ法
4 ナチスが奪った美術品
CASE STUDY 消えたモネの小品の取戻請求と出訴期間制限

 03章 贋作美術品をめぐる紛争
1 贋作とは
2 美術品の真贋鑑定の方法
3 裁判所における真贋の判断
4 真贋をめぐる紛争の種類
5 美術品の真贋と名誉毀損
6 英米法における名誉毀損
CASE STUDY 2枚目のダ・ヴィンチ作「美しきフェロニエーレ」?

 04章 贋作売買と画商の責任
1 美術品取引市場と贋作
2 日本法における贋作美術品の売主の責任
3 イギリス法における贋作美術品の売主の責任
CASE STUDY 4枚目?のヴァン・ダイク

 05章 美術商・画廊の法的義務
1 美術商と画廊
2 美術商に対する規制
3 美術商の取引形態
4 委託販売を行う美術商と美術品の買主の間の法律関係
5 委託販売における美術商の売主(委託者)に対する義務
6 委託販売において販売受託者から再委託を受けた者の委託者に対する責任
CASE STUDY ダ・ヴィンチ素描画の売買を仲介した美術商の責任

 06章 オークションハウスの活動と責任
1 オークションの仕組み
2 オークションハウスと出品者の関係
3 オークションハウスと落札者の関係
4 美術品の真贋とオークションハウスの責任
CASE STUDY エゴン・シーレの真贋とオークションの責任

 07章 美術館の機能と責任
1 美術館とは
2 美術館の要件
3 美術館の館長・専門職員
4 美術館の倫理規程
5 美術館による美術品の保管
6 特別展のための美術品の借受け
CASE STUDY フランク・ステラ作品を借り受けた美術館の責任

 08章 美術館における特別展
1 特別展とは
2 特別展開催の手順
3 美術品の損害保険
4 展覧会と美術品の国家補償制度
5 展覧会と美術品の差押禁止制度
CASE STUDY 展覧会出品のためのエゴン・シーレ作品貸出しに伴うリスク

 09章 美術の著作権の発生、存続、帰属
1 著作権と美術の著作物
2 著作権の帰属
3 著作権の保護期間
4 著作権の譲渡等に関する登録制度
CASE STUDY 芸術家が制作した遊戯具の著作権

 10章 美術館の活動と著作権
1 著作権とその制限
2 美術館の活動に伴う著作権の利用
3 著作権等管理事業
4 権利者不明の著作物の利用
CASE STUDY バーンズ・コレクション展事件

 11章 著作物に関する芸術家の権利
1 著作者人格権とは
2 日本の著作者人格権
3 イギリスの著作者人格権
4 アメリカの著作者人格権
5 芸術家追及権
CASE STUDY イサム・ノグチ財団と慶應大学(著作者人格権)

 12章 現代アートと著作権
1 現代アートとは
2 著作権による現代アートの保護
3 ストリート・アートと著作権
4 パロディと著作権の制限
CASE STUDY ジャクリーヌ・ケネディの写真とウォホール作品(パロディと著作権)

 13章 美術品、映画のキャラクターの商品化ビジネス
1 キャラクター商品化ビジネスとは
2 許諾を受けるべき権利及び権利者は
3 映画のキャラクターの著作権
4 キャラクター商品化許諾契約
CASE STUDY バットマン・キャラクターの商品化権ライセンス

 14章 展覧会、芸術祭と表現の自由
1 国際展、芸術祭とは
2 国際展に対する公的支援
3 国際展の開催手順
4 展覧会と表現の自由
5 美術品のわいせつ性と表現の自由
CASE STUDY 「表現の不自由展・その後」事件(芸術祭と表現の自由)

 15章 国の芸術振興策及び企業の芸術支援活動
1 国の文化芸術政策
2 美術品、文化財の展示促進ための税制
3 企業による芸術の支援・促進活動
CASE STUDY 企業経営者の美術コレクションの企業による活用

 16章 文化財の保護と活用
1 文化財保護法とは
2 文化財保護の仕組み
3 文化財保護に携わる各機関の役割
4 文化財の保存活用に関する国の権限及び所有者等の義務
5 文化財保護に関する税制優遇措置
6 民法による文化財保護
CASE STUDY 旧同潤会大塚女子アパート解体撤去差止事件(文化財の現状変更に対する市民の権利)

 17章 アートに関する紛争と国際訴訟
1 国際裁判管轄
2 主権免除
3 裁判所における準拠法の決定

 18章 アートに関する紛争とADR
1 美術品・文化財をめぐる紛争の種類と特徴
2 裁判所によるアート関連紛争解決の問題点
3 仲裁・調停
CASE STUDY ナチス略奪美術品をめぐる紛争の解決手段


CASE STUDY 解答のヒント

事項索引
人名索引
事件索引


column 01 「モナリザ」はなぜ盗まれた?
column 02 どちらが運慶作?
column 03 アートの値段はどのように決まる?
column 04 アーティストへの道
column 05 最後のダ・ヴィンチの売主の取り分
column 06 美術館・博物館の誕生
column 07 美術品貸与の見返り
column 08 ミッキーマウスの寿命
column 09 ロシアの「禁じられたアート展」
column 10 アートとサブカルチャー
column 11 世界遺産・無形文化遺産の選び方
column 12 今世紀最大のアート取引紛争


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