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大韓民国エリートの起源帝国大学の朝鮮人

帝国大学の朝鮮人 大韓民国エリートの起源

四六判 352ページ 上製
価格:3,740円 (消費税:340円)
ISBN978-4-7664-2735-6 C0021
奥付の初版発行年月:2021年04月 / 発売日:2021年04月中旬

内容紹介

何のために日本へ旅立ち、韓国・北朝鮮で何をなしとげたのか?
留学生たちの激動の歴史

近代日本のエリート養成所であり、朝鮮独立運動の水源地でもあった
帝国大学で学んだ朝鮮人たちの足跡がはじめて明らかにされる
韓国のベストセラー歴史書

▼1945年の解放以降、大韓民国の樹立にさまざまな人々が参加した。そのうち左右を問わず、近代日本のエリート育成装置であった帝国大学に留学した朝鮮人は欠かせない存在であった。彼らの多くは帝国日本の官僚として服務し、帝国の先端知識や官僚の経験を元手に、1945年の解放後も韓国と北朝鮮の行政、経済、司法、知識体系に大きな影響を及ぼした。もちろん帝国大学に留学した全員が出世をねらう官僚になったわけではなかった。急進マルクス主義の洗礼を受けて変革運動に飛び込んだ人物もいたし、世俗的な成功と時代の制約の間で葛藤し、学問の道に進んだ人物もいた。

彼らは解放後の大韓民国の社会に有形無形の影響を及ぼし、いまもなお亡霊のように浮遊している。本書は、植民地時代に日本に留学した朝鮮人たちが、なぜ留学し、何を学び、戻って何をしたのか、著者の長年の調査と入念な資料・文献の渉猟によって明らかにする。

巻末には東京帝国大学と京都帝国大学の朝鮮人留学生名簿を掲載。

著者プロフィール

鄭 鍾賢(チョン ジョンヒョン)

韓国・仁荷大学校文科大学韓国語文学科副教授。専攻は韓国近現代文学・文化史。韓国・東国大学校国語国文学科・同大学院卒業(文学博士)。「植民地後半期・韓国文学にみられる東洋論研究」で2006年に博士号取得。東アジア比較文学、知性史、読書文化史、冷戦文化研究など、幅広い分野で業績は多数。2010年から1年間、京都大学人文科学研究所でポストドクター研修後、成均館大学校東アジア学術院HK研究教授、仁荷大学校韓国学研究所HK教授を経て現在にいたる。
著書(以下すべて韓国語)に、『東洋論と植民地朝鮮文学』(創作と批評社、2011年)、『帝国の記憶と専有――1940年代韓国文学の連続と非連続』(語文学社、2012年)、共著に『新羅の発見』(東国大出版部、2009年)、『アプレゲール「思想界」を読む』(東国大出版部、2009年)、『文学と科学』(ソミョン出版、2013年)、『検閲の帝国』(青い歴史、2016年)、『アメリカとアジア』(高麗大亜研出版部、2018年)、『大韓民国の読書史』(ソヘ文集、2018年)など。共訳に『故郷という物語』(成田龍一著、東国大出版部、2007年)、『帝国大学――近代日本のエリート育成装置』(天野郁夫著、山のように、2017年)などがある。

渡辺 直紀(ワタナベ ナオキ)

武蔵大学教授。専攻は韓国・朝鮮文学。1965年東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。出版社勤務などを経て渡韓。韓国・東国大学校大学院国語国文学科博士課程修了(文学博士)。高麗大招聘専任講師を経て2005年より現職。カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員(2011年度)、高麗大招聘教授(2018年度)なども歴任。東京外国語大学非常勤講師。
主著に『林和文学批評――植民地朝鮮のプロレタリア文学と植民地的主体』(韓国・ソミョン出版、2018年)、訳書に『闘争の詩学――民主化運動の中の韓国文学』(金明仁著、藤原書店、2014年)、『植民地の腹話術師たち――朝鮮の近代小説を読む』(金哲著、平凡社、2017年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

日本語版序文
はじめに
 
プロローグ──玄海灘を渡った青年たち
 植民地留学生の苦悩、志士か出世か?/植民地(人)/帝国(エリー
 ト)の間の分裂/帝国大学朝鮮人留学生の集団伝記

第1章 帝国大学──近代日本のエリート育成装置
 ヨーロッパ(ドイツ)の大学を翻案する/法学部エリートが支配する
 国/新人会、あるいは抵抗と転向の精神構造/帝国大学とノーベル賞、
 そして講座制

第2章 京都帝大の朝鮮人学生、帝国の事業家になる
 大阪工団に魅了された植民地の少年/民族企業家か、帝国の反逆者か/
 帝国大学という社会資本/「京城紡織奨学生」と階級再生産

第3章 帝国大学に留学した朝鮮人たち
 日本「内地」の帝国大学を選んだ理由/帝国大学朝鮮人留学生の規模/
 帝国大学の玄関口、旧制高校/帝国大学の学生は特権階級?

第4章 官費留学と帝国の奨学金
 貧しい帝大生/日本帝国の官費留学生/官費留学生は親日派か?/人間
 的な厚意と帝国の利益のあいだ/自疆会はなぜ朝鮮人学生を支援したの
 か?/自疆会の奨学金をもらった留学生

第5章 寮生活──帝国エリートのアイデンティティを育む
 大学予科としての旧制高校/寮という特殊な共同体/バンカラ/ストー
 ム/デカンショ節/旧制高校生の読書/帝国大学の入試/勉強と娯楽と
 恋愛

第6章 帝国大学の教授たち
 帝国大学のキャンパスの風景と教授たち/吉野作造と金雨英/河合栄治
 郎と李東華/河上肇と延禧専門学校・普成専門学校の商科/藤浪鑑と尹
 日善

第7章 総督府の特権層となって帰ってきた朝鮮人たち
 帝国大学の朝鮮人留学生の進路/植民地版の科挙、高等文官試験/行政
 官僚たちの弁明/司法官僚たちの弁明/高秉國、あるいは例外的人間/
 植民地官僚たちの解放以降

第8章 植民地人、科学技術を通じて帝国の主体を夢見る
 科学者と祖国/植民地版「文科ですみません(ムンソンハムニダ)」/
 差別を克服する「科学」ファンタジー/植民地文学が描いた科学技術
 者/京都帝大の二人の朝鮮人教授/科学者の選択──道徳と合理のあい
 だ/李升基の科学は道徳的か?

第9章 帝国の知で帝国に抵抗した人々
 星になった青年、宋夢奎/「熊」と呼ばれた闘士、朴英出/劉亨植、帝
 大出身の小市民の肖像/親日派の父と左翼の息子/学生運動の大学生か
 ら総督府警察に/マルクス主義者からピンク映画ブローカーに

第10章 女人禁制の領域、帝国大学に進学した朝鮮人女性たち
 帝国大学に登場した女子学生たち/辛義卿、帝大初の朝鮮人女子留学
 生/趙賢景、九州帝大最初の女子留学生/金三純、最初の女性農学博
 士/梨花女子専門学校と帝国大学/申眞順、北朝鮮の文学芸術を動か
 した帝大生

第11章 植民地人たちの帝国大学同窓会
 連合学友会から帝国大学同窓会に/関東大震災と一九二〇年代の京都学
 友会/『学潮』と一九二〇年代の帝大留学生の認識/『同窓会報』と植
 民地後期の帝大生の認識/植民地留学生会から帝国の地方郷友会に

第12章 帝国大学の留学生は解放後に何をしたか
 大韓民国臨時政府と「行政研究委員会」/帝国大学法学部と制憲憲法/
 「四捨五入改憲」と帝大出身者/権力と知識人、二人の同窓のそれぞれ
 の処世/閔寬植と高校平準化/帝国大学と「文学」の社会的地位

第13章 大韓民国の知の再編を主導する
 帝大出身者と解放後の教育・学術/植民地の清算と「国大案」騒動/
 「教授自治」の理想と虚像/日本の知からアメリカの知に/「朝鮮学」
 から「韓国学」に

第14章 北朝鮮の知の制度を確立した帝国大学の卒業生
 金日成総合大学の創設/「愛国米」と「人民の大学」/帝大出身者が
 金日成総合大学に行った理由/日本の知からソ連の知に/崔應錫の医
 療システム

エピローグ──「帝国大学留学」の歴史化のために

原注 

 訳者あとがき
 付録 東京帝国大学・京都帝国大学朝鮮人学生名簿
 人名索引


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