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 古代ローマをめぐるマキァヴェッリとの交錯共和主義者モンテスキュー

共和主義者モンテスキュー 古代ローマをめぐるマキァヴェッリとの交錯

A5判 400ページ 上製
定価:5,800円+税
ISBN978-4-7664-2727-1 C3031
奥付の初版発行年月:2021年02月 / 発売日:2021年02月中旬

内容紹介

▼自由の擁護、専制への対抗
古代ローマ史解釈をめぐるマキァヴェッリとの内的対話から、
市民とは誰か、自由とは何か、変わりゆく時代のなかで、
ありうべき共和政とはいかなるものかを問い続けた
共和主義者モンテスキューの思想の核心に迫る。


旧体制下のフランスに生きた『法の精神』の著者モンテスキューは、今日的な意味での君主政支持者に対立する共和主義者ではない。しかし、古代ローマ人が考えたように「僭主への対抗」という意味で、法の支配を肯定する「共和主義者」では間違いなくある。では、そもそも「共和政」の理念とは何か。本書全体を通じて問うのは、そのことである。

モンテスキューが、法の支配を政治社会に必要不可欠と考える根本的な理由の一つは、私たちが自由を求めるからである。さらに、なぜ自由を求めるのかと言えば、それは私たちが、個別の意思や感情・情念をもつからである。しかし、その個別の意思や感情、あるいは利害が対立すれば、争いの原因にもなる。だからこそ、他者と共有できる意思を探し、それを約束事として調和を追求する結果として「共通の・モノ」が発見される。それが慣習や法・政治制度として結実し、法の支配の基盤になっていく。『法の精神』が問うのも、多様な国家と社会において、この法の支配が実現する条件なのである。

本書では、軍事的偉業を実現した古代ローマを共和国の模範と見なしたマキァヴェッリとの内的対話を通じ、軍事、政治、経済が織りなす動態力学を考慮したうえで、むしろ国内での法の支配と国家間での平和な秩序が不可分なものとして実現しうる条件を模索したモンテスキューの共和主義思想の核心に迫る。

著者プロフィール

定森 亮(サダモリ リョウ)

1977年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、2003年同大学大学院経済学研究科修士課程修了、同大学大学院経済学研究科博士課程入学。2003年から2006年まで慶應義塾大学経済学部研究助手。2006年パリ第一大学大学院哲学研究科修士課程入学(フランス政府給費留学、パリ高等師範学校所属)。2007年から2010年までパリ第一大学特別研究員(allocataire de recherche)。2008年慶應義塾大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得満期退学。2016年パリ第一大学大学院哲学研究科博士課程修了。博士(パリ第一大学、哲学)。現在、慶應義塾大学、神奈川大学、専修大学等非常勤講師。第3回研究奨励賞『経済学史研究』論文賞受賞。
主な論文に、「モンテスキュー『法の精神』における「シヴィルcivil」概念の二重性――ハリントン『オシアナ共和国』との対比において」、『経済学史研究』(経済学史学会、49巻1号、19~36頁、2007年)等がある。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

序 章
 I モンテスキューとマキァヴェッリの交錯
 ――近代ヨーロッパを映す古代ローマという鏡
 II 共和主義研究と「自由」の定義
 III 「共和主義者」としてのモンテスキュー

第1章 市民の「自由」とは何か
――『法の精神』における商業発展と法律の生成
 I はじめに
 II 法律による統治と自由の精神
  1 政治的自由と独立性――「三権分立」再考
  2 タキトゥス『ゲルマン人の習俗について』からの「自由の精神」
  概念の析出
 III イングランド人の商業と自由の精神
  1 国制による習俗の形成
  2 自由の精神による国制の歴史的創造――ドンヴィル宛書簡の読解
 IV 結びに

第2章 共和国とは何か
――モンテスキューとマキァヴェッリにおける「法の支配」の相違
 I はじめに
 II 『ディスコルシ』における自由と国内対立
  1 共和政ローマにおける混合政体と厳しい刑罰  
  2 古代ローマとルネサンス期フィレンツェにおける裁判制度と大逆罪
 III 『法の精神』における権力抑制と裁判権力の分離
  1 近代イングランドの裁判制度と大逆罪
  2 共和政ローマの民衆裁判と法の支配の条件――最初の成文法制定
  の意味
 IV 結びに

第3章 なぜ歴史を解釈するのか
――『ディスコルシ』と『法の精神』における「徳」論と制度・機構論の関係
 I はじめに
 II 『ディスコルシ』における軍事拡大と「徳」の内実
  1 古代ローマ史解釈と民衆的政体の提案――政体循環論の適用方法
  2 十人委員会の暴政から農地法改革者グラックス兄弟への歴史的展
  開
  ――名誉をめぐる対立から富をめぐる対立へ
 III 『法の精神』における法学的「徳」概念
  1 古代ローマ史の転換点としての十人委員会の暴政
  ――財産登録制度と十二表法の解釈
  2 裁判制度改革者グラックス兄弟の位置
  ――共和政末期ローマにおける君主政の統治機構の出現  
 IV 結びに

第4章 市民権とは何か
――共和政ローマの衰退と富の不平等の拡大に関する分析の相違
 I はじめに
 II 『ディスコルシ』における君主政の歴史的出現
  1 軍事指揮官カミルスに関する二つの評価の矛盾
  2 市民の従属と君主政確立の歴史叙述
 III マキァヴェッリの農地法とモンテスキューの相続法
  1 『ディスコルシ』におけるローマ市民権と財産登録制度の理論的
  前提
  2 『法の精神』における財産登録制度の分析
  ――貨幣の導入と動産移転の歴史
 IV 結びに

第5章 なぜ軍事力によって法律は沈黙させられるのか
――共和政ローマの崩壊と軍人政治の出現に関する『法の精神』の政治経済学
 I はじめに
 II 国制と富の源泉
  1 共和政ローマの軍事的拡大と富の源泉――貨幣の移転を映し出す
  利子率分析 
  2 『法の精神』の論理構造とドンヴィル宛書簡草稿――イングラン
  ドに関する「法の精神」
 III 近代イングランドと古代ローマにおける国制と富の源泉
  1 近代イングランドにおける世界商業と国制――議会による軍事権
  力の制限
  2 共和政末期のローマにおける富の略奪とその分配の帰結――軍事
  的専制の出現
 IV 結びに

第6章 古代と近代の連続性はどこにあるのか
――モンテスキューとマキァヴェッリの交錯地点
 I はじめに
 II マキァヴェッリとモンテスキューにおける共和政末期ローマの腐敗
  1 マキァヴェッリの軍事力による介入の提案
  ――共和政の「腐敗の度合い」とグラックス兄弟以降の三世代の歴史
  2 モンテスキューの立法による介入の提案
  ――共和政末期のローマにおける「国家の支配権」と「所有権」の分
  離
 III 『法の精神』における暴政と自由の精神
  1 共和政末期のローマにおける裁判権力の濫用と言論の沈黙
  ――共和政の形式の下に隠れた軍事的専制
  2 イングランド人の自由の精神と一八世紀における裁判権力の分離
  ――未完の『法の精神』とその補遺としてのドンヴィル宛書簡草稿
 IV 結びに

第7章 軍事力と法律はどちらが優位すべきか
――マキァヴェッリの「新たな君主政」とモンテスキューのフランス世襲君主政
 I はじめに
 II マキァヴェッリ、軍事力による君主政秩序の創設
  1 『ディスコルシ』と『君主論』における完全に腐敗した共和政
  2 祖国防衛の必要とマキァヴェッリの実践的選択
  ――『ディスコルシ』と『君主論』の接合点
 III マキァヴェッリとモンテスキューにおけるフランス世襲君主政評
 価
  1 一五世紀イタリアと一八世紀フランスの比較から見える軍事・財
  政制度の変容
  2 モンテスキューによる専制批判とマキァヴェッリ評価の揺れ
 IV 結びに

第8章 「共和政」の歴史とは何か
――ハリントンの古代社会とモンテスキューの封建法の遺産
 I はじめに
 II ハリントンとモンテスキューにおける「共和政」の異質性
  1 『オシアナ共和国』における古代共和政の再興計画案
  2 『オシアナ共和国』と『法の精神』における「立法者」の位置づ
  け
 III 『法の精神』におけるヨーロッパ君主政と封建法の遺産
  1 イングランドの国制における代表制と裁判制度の由来
  2 フランス君主政における世襲貴族の誕生と法生成の契機
 IV 結びに

終章
 I モンテスキューと「共和政」の問い
 ――マキァヴェッリの古代ローマ史解釈の乗り越え
 II 『法の精神』における経済学の位置
 ―― 一八世紀における「諸国民の富」とイングランドの国制


あとがき

参考文献

索引


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