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―その産業構造と経済・金融・マーケティングハロルド・ヴォーゲルのエンタテインメント・ビジネス

ハロルド・ヴォーゲルのエンタテインメント・ビジネス ―その産業構造と経済・金融・マーケティング

A5判 728ページ 並製
価格:8,800円 (消費税:800円)
ISBN978-4-7664-2064-7 C3034
奥付の初版発行年月:2013年10月 / 発売日:2013年10月上旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

全米殿堂入りアナリストが贈る、「完璧主義の投資家が知りたい」エンタテインメント・ビジネスのすべて

米国で1986年に刊行されて以来、エンタテインメント・ビジネスの分析書として10版を重ねてきた超ロングセラー、Entertainment Industry Economics: A Guide for Financial Analysis, 待望の邦訳版。著者はメリル・リンチ証券のトップ・アナリストだったハロルド・ヴォーゲル。著者自分が「完璧主義の投資家が知りたいすべて、それ以上でもそれ以下でもない」と定義する業界分析のバイブルである。アナリストとしてのヴォーゲルの幅広く高度な専門性はウォルト・ディズニー社からアップルまで、エンタテインメントがその産業構造を革新する時期を支えることで培われたが、金融経済学の博士号も持つ理論家でもある。現在はニューヨークで投資顧問会社を経営、長年の功績が認められてインスティテューショナル・インベスター誌による全米選抜リサーチ・チームに殿堂入りしている。

徹底的に暴かれる利益追求の内実と非情さ、業界を知り尽くし愛する著者ならではのユーモアと裏話

驚くべきはその詳細すぎる業界の内実。トップ・アナリストだからこそ入手できた膨大なデータを駆使し、経済・金融・マーケティング理論を使って分析した内容の広さと深さは他に類を見ない。映画をはじめ音楽・放送・ケーブル・出版・玩具・ゲーム・ギャンブル・スポーツ・演劇・サーカス・オーケストラ・テーマパークに至るまで「エンタテインメント・ビジネス」の根底にある非情なまでの利益追求の実態が徹底的に暴露されている。一方で、人の心を揺り動かし夢中にさせるこのビジネスの魅力と危うさすらも、歴史や心理学、経済学的側面から鮮やかに描き出され、著者が愛する古今東西のエンタテインメント作品についてのユーモアや裏話がその考察を楽しく奥深いものにしている。

夢と利益を求めた果てにあるのはあまりにも大きな栄光と敗北、業界の特殊性すらも普遍性に転換し分析できることを証明した、業界分析に関わるすべての人々、必携の書

「本書の最大の貢献とは、我々が『業界の特殊性』と済ませてきたものを誰にでも理解でき分析できるような形で俎上に載せたことだ。こうして暴かれた特殊性はもはや特殊性ではない。この意味で、エンタテインメント・ビジネスに関わる人たちだけが本書を読むのは余りにもったいない。同じ手法を用いたならば、あらゆる業界の特殊性を普遍性に転換することができることを本書は教えてくれるからだ。」(田中洋、『日本経済新聞2013年12月8日』「この一冊」より)投資家や財務アナリスト、エンタテインメントを学び・研究する人たちは勿論のこと、経営者・会計士・法律家・ジャーナリスト・プロデューサーなど業界分析に興味のあるすべての人々、必携の書である。

著者プロフィール

ハロルド・L.ヴォーゲル(ハロルド エル ヴォーゲル)

メリル・リンチ証券で17年間アナリストとして活躍し、インスティテューショナル・インベスター誌によるエンタテインメント部門・アナリスト・ランキングで10年間、第1位の座にあった。また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙のオールスター・アナリスト・ランキングでもカジノ部門第1位、エンタテインメント部門第3位になるなど、エンタテインメント・ビジネスを専門とする米国3大アナリストのひとりとして、20年以上にわたりその名を馳せた輝かしい実績を持つ。現在はニューヨークで投資顧問会社を経営、長年の功績が認められインスティテューショナル・インベスター誌による全米選抜リサーチ・チームに殿堂入りしている。金融経済学博士でもあり、主な著書に、 Financial Market Bubbles and Crashes, Cambridge University Press, 2020, Travel Industry Economics: A Guide for Financial Analysis, Second Edition, Cambridge University Press, 2016など。ニューヨーク大学修士(経済学)、コロンビア大学修士(経営管理)、ロンドン大学博士(金融経済学)。

助川 たかね(スケガワ タカネ)

岡山県立大学デザイン学部教授。慶應義塾大学経済学部卒業。在学中に劇団四季付属演劇研究所に入所。その後もイベント、ゲームなど一貫してメディア/エンタテインメント企業でプロデュースおよびマネジメント業務に携わる。コロンビア大学経営大学院在学中、カリスマ・アナリストとして知られていたヴォーゲルが母校で初めて教鞭をとった際には、その授業を受講。現在はメディアから都市デザインまでクリエイティブ産業の実務に経営理論やデザイン理論を応用する教育を展開している。コロンビア大学修士(経営管理)、ハーバード大学修士(行政管理および都市計画)。

上記内容は本書刊行時のものです。

【著者】
ハロルド・L. ヴォーゲル(Harold L. Vogel)
投資コンサルティング会社を経営

【訳者】
助川 たかね(すけがわ たかね)
岡山県立大学デザイン学部教授。

目次

日本語版に寄せて
第8版への序文
はじめに

第Ⅰ部 序 論
 第1章  経済学的視点
  1.1 時間の概念
    余暇と労働 / リクリエイションとエンタテインメント /
    時間 / 余暇時間の拡大
  1.2 供給と需要の要因
    生産性 / 余暇の需要 / 期待効用の比較 /
    人口統計と借金 / 参入障壁
  1.3 基本原理
    限界という概念 / 価格の差別化 / 公共財の特徴
  1.4 個人消費支出の関係
  1.5 価格効果
  1.6 産業構造と業界
    構造/業界
  1.7 評価方法
    現在価値割引キャッシュ・フロー /
    類似企業比較(マルティプル)法 /
    オプション・プライシングモデル
  1.8 まとめ

 第2章 基本原理
  2.1 心理学的な要因
  2.2 原理原則
    メディアの法則 / ネットワークの特性
  2.3 法的な機能と限界
    法的な機能 / 法的な限界と集中の課題
  2.4 インターネット
    変化の立役者 / ロング・テール効果
  2.5 広告宣伝
    機能性 / 経済およびビジネスからの視点
  2.6 会計手法と企業価値評価
    会計手法 / 企業価値評価
  2.7 まとめ

第Ⅱ部 メディアを使ったエンタテインメント
 第3章 映画のマクロ経済
  3.1 走査線のゆらめき
  3.2 フォースとともにあらんことを
    (May the forces be with you)
    進化する要素 / ペッキング・オーダー(Pecking order)
  3.3 好況と不況
    観客数のサイクル / 価格と弾力性 / 製作の開始と資金 /
    公開と在庫 /市場占有率の要因 / 副次的な要因 /
    財務に関する所見
  3.4 一次市場と二次市場
  3.5 資産
    映画ライブラリ(所蔵映画作品) / 不動産
  3.6 まとめ

 第4章 映画製作とマーケティング
  4.1 資産 ―― 物質的なものと精神的なもの
  4.2 財務基盤
    普通株式の募集 / コンビネーション・ディール /
    有限責任事業組合と租税回避 /銀行からの融資 /
    未公開株式とヘッジファンド
  4.3 製作に向けて
    全体像 / 労働組合
  4.4 マーケティングの諸問題
    配給業者と上映業者 /
    家庭用ビデオと一括購入契約、商品化 /
    マーケティング費用
  4.5 経済学的な視点
    収益構造の枠組み / 理論的基盤
  4.6 まとめ

 第5章 映画とテレビの財務会計
  5.1 金の動きと業界の常識
    クラウト――契約と交渉力 / 数字の指揮者
  5.2 財務会計で概観した企業
    収入認識の基準 / 棚卸資産 / 棚卸資産の償却 /
    未償却残存価値 /支払利息、その他の費用 /
    収益計算をめぐる争い / SOP 00-2
  5.3 財務会計で俯瞰する業界
    財務構造の概観 / 利益参加型の契約 /
    配給業者と上映館間の収益計算 /
    配給業者への収益還元と費用 /
    スタジオの間接費とその他の製作費用 /
    予算――天国と地獄
  5.4 テレビ番組の会計
    長編劇映画の放送許諾権 / 番組製作と配給
  5.5 鎖の切れ目
    配給業者とプロデューサー間の問題
  5.6 まとめ

 第6章 音楽ビジネス
  6.1 ハマってるぜ(Feeling groovy)
  6.2 規模と構造
    経済的な相互作用 / 作曲、音楽出版、マネジメント /
    ロイヤルティの流れ / 同業者組合と労働組合 /
    コンサートや劇場での使用
  6.3 レコード音楽の製作とマーケティング
    仕掛け人の喜び / 製作費 / マーケティング費用 /
    販売網と価格設定
  6.4 財務会計と企業価値評価
    アーティストの視点 / レコード会社の観点 /
    企業価値評価の見方
  6.5 まとめ

 第7章 放送事業
  7.1 番組放送中
    技術革新と歴史的出来事 / 運営構造 / 規制 /
    組織編成と優先順位 / 視聴率と視聴者
  7.2 経済学的特徴
    マクロ経済学的関係性 / ミクロ経済学的考察
  7.3 財務実績の特徴
    変動費の要素 / 財務会計の実際
  7.4 放送局資産の評価
  7.5 まとめ

 第8章 ケーブル業界
  8.1 微弱な放送信号を届けるために
    有料サービスの発展
  8.2 ケーブル業界の構造
    運営状況/事業承認 / 収入構造
  8.3 財務構造の特徴
    資本について / 会計慣行
  8.4 発展の方向
    ペイ・パー・ビュー / ケーブル・テレビと競争 / 電話会社
  8.5 ケーブル・テレビ会社の資産評価
  8.6 まとめ

 第9章 出版
  9.1 グーテンベルクの贈り物
    印刷された最初の言葉 / 運営面での特徴
  9.2 分野別の特徴
    書籍 / 定期刊行物
  9.3 会計と企業価値評価
    会計 / 企業価値評価
  9.4 まとめ

 第10章 玩具とゲーム
  10.1 子供だけのものじゃない
     財務的な特徴 / 積み木(Bulding blocks)
     ――構成要素
  10.2 チップスアホイ!(Chips ahoy!)
     ―コンピュータ・チップの彼方に
     スロット・マシーンとピンボール /
     「ポン(Pong)」以前と以降
  10.3 構造的所見
     家庭用ビデオ・ゲーム / 利益性の力学 /
     コイン式ゲーム
  10.4 まとめ

第Ⅲ部 ライブ・エンタテインメント
 第11章 ギャンブルと賭け事
  11.1 太古の昔から
     その昔 / 米国の賭博 / アジアのジャックポット
  11.2 金が動かす
     マクロ経済的事柄 / 資金調達機能 / 規制/
     財務実績と企業価値評価
  11.3 利益性の基本原則と専門用語
     原則 / 専門用語と勝敗率の標準
  11.4 カジノ経営と会計指針
     マーケティング / 現金と与信 / 典型的な振る舞い
  11.5 ギャンブルと経済
  11.6 まとめ

 第12章 スポーツ
  12.1 味付けが肝心
     最初の盛り上がり / メディアとの関係 /
     賭け事との関係
  12.2 運営上の特徴
     収入源とその割合 / 労働問題
  12.3 税務会計と企業価値評価
     税に関する問題 /
     資産価値評価に必要な要素
  12.4 スポーツの経済学
  12.5 まとめ

 第13章 パフォーミング・アーツと文化
  13.1 観客と演目
     商業演劇 / オーケストラ / オペラ / 舞踊
  13.2 収益源と経済的ジレンマ
  13.3 劇こそまさにうってつけ(The Play's the thing)
     作品に対する資金調達と利益参加 /
     運営上の特徴
  13.4 芸術市場
  13.5 経済学者に倣って
  13.6 まとめ

 第14章 遊園地とテーマ・パーク
  14.1 フラワー・パワーから始まった
     庭園や果樹園 / モダン・タイムス
  14.2 財務運営上の特徴
  14.3 経済的感受性
  14.4 テーマ・パークの資産評価
  14.5 まとめ

第Ⅳ部 総 括
 第15章 産業の業績と政策
  15.1 共通する要素
  15.2 公共政策の課題
  15.3 エンタテインメントおよびメディアの株式の評価指針
  15.4 おわりに

付記

付記 A: 情報源
付記 B: 賭け事に使うゲーム
付記 C: 補助データ
用語解説
参考文献

訳者あとがき

索引


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