歩く・見る・聞く――知のネットワーク37

ルイス・キャロルの初版本
「不思議の国のアリス」・「鏡の国のアリス」等を公開中!

川並弘純



 本学には、学校法人「聖徳学園」の歴史的な変遷を紹介した「建学記念館」と学園の貴重なコレクションを展示・公開している「ギャラリー」があります。
 聖徳学園は、昭和8(1933)年、東京市大森区(現在、東京都大田区)に新井宿幼稚園を開設した事から始まり、そして、71年目を迎えた平成16年に、聖徳学園7番目の幼稚園となる「聖徳大学附属浦安幼稚園」が誕生しました。その開設を記念して、子どもたちに人気の高い本の中から、ビアトリクス・ポターの「ピーターラビット」に関する絵本と、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」の物語に関する資料を、特別展覧会「ピーターラビットとその仲間たち」展と「アリスの魔法の世界―不思議の国・鏡の国―」展として、2回に分けて公開することにしました。
 現在、ギャラリーでは「ピーターラビットとその仲間たち」展を終了し、「アリスの魔法の世界―不思議の国・鏡の国―」展を開いており、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」・「鏡の国のアリス」・「スナーク狩り」・「シルヴィーとブルーノ」などの初版本とそれらの物語に関するグッズ類を展示してあります。
 物語で魔法の世界に入りこんだアリスのモデルは、英国のオックスフォード大学の中でも最も権威のあるカレッジである、クライスト・チャーチに学寮長として勤務していたヘンリー・ジョージ・リデルの三姉妹の次女アリス・リデルとされています。「不思議の国のアリス」は、作者ルイス・キャロル(オックスフォード大学の数学講師)が、1862年の7月のある日、アリス・リデル(当時4歳)たちとの舟遊びの最中に語った即興の架空の話が元になっています。その後、1865年マクミラン社から、風刺画家ジョン・テニエルの挿絵で出版し、当時ビクトリア女王も愛読したと言われる程大評判になりました。1871年には続編の「鏡の国のアリス」を出版します。その後、「スナーク狩り」(1876年初版)や「シルヴィーとブルーノ」(1889年初版)等を出版しています。
 現在、世界40ケ国以上で翻訳され親しまれているこの「不思議の国のアリス」は、読者を素晴らしい魔法の世界へと誘うものです。もしルイス・キャロルが、アリスに語った話を出版しなかったら、これほど読者の想像力をたくましくさせる本が他にあったでしょうか。
 これまで本学は、その建学の精神を達成するために実物教育の素晴らしさを取り上げており、その1つに美術資料と関係図書文献を揃えております。美しい純白の色調を持ち、ピカソをも釘付けにしたと言われる、わが国が世界に誇る藤田嗣治画伯の絵の素晴らしさは格別ですが、聖徳学園創立70周年記念特別展覧会として公開しました。また、坪内逍遥、尾崎紅葉、島崎藤村、林芙美子、川端康成、三島由紀夫など日本近代作家の自筆原稿も収蔵しており、その一部を展示・公開しました。生き生きとした躍動感あふれる自筆原稿をとおして、本物の持つ魅力が評判となりました。その他、「イギリスの児童文学展」、「ロートレック版画展」、「中世ヨーロッパの楽譜展」、「外国語に訳された日本昔噺―ちりめん本の美しさ―展」などの展覧会を開催しており、いずれも大好評でした。
 今年は、わが国でもなじみの深いデンマークの童話作家アンデルセン(1805-1875)の生誕二百年にあたり、本学で所蔵しているアンデルセンの処女作とも言える「みにくいアヒルの子」の初版本などを中心とし、併せてアンデルセンの「人魚姫」をディズニーがアニメーション映画としてアレンジした「リトル・マーメイド」のセル画などの展示も考えております。
 本学では、創立以来一貫して児童教育、女子教育を中心とした教育に力を注ぎ、その教育に必要とされる初版本を中心とした関係資料を収集しております。なかでも今回公開のコレクションは、「質」・「量」ともに世界有数なものとなっています。是非、この機会にご覧ください。
(聖徳大学出版会 理事長室長)

「アリスの魔法の世界―不思議の国・鏡の国―」展
会 場:聖徳大学8号館 クリスタルホール・ギャラリー
会 期:平成16年10月12日(火)〜平成17年3月31日(木)
    午前9時〜午後5時
休館日:毎日曜・祝日と学事日程による休業日
案 内:JR・新京成線とも松戸駅下車、東口より徒歩5分
問合せ:聖徳大学川並記念図書館
    Tel:047-365-1111(大代)
URL :http://www.seitoku.ac.jp/lib/



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