大学出版部協会

 

「資源化」と総力戦体制の比較史農林資源開発の世紀

農林資源開発史論Ⅰ
農林資源開発の世紀 「資源化」と総力戦体制の比較史

A5判
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-87698-259-2 C3061
奥付の初版発行年月:2013年02月 / 発売日:2013年02月下旬

内容紹介

新しい財を得ようとする人間の需要拡大,科学技術の発展は,史上空前の大規模な「資源化」を生んだ.第一次世界大戦を境に,日本では総力戦体制とあわせて進行し,ドイツでは自給自足経済を,アメリカでは世界市場の喪失をもたらした.農林と地域をめぐる諸問題の歴史的比較は,現代社会における人間と自然の関係にも示唆を与える.

著者プロフィール

野田 公夫(ノダ キミオ)

京都大学大学院農学研究科教授
専攻:近現代日本農業史、世界農業類型論
主要業績
『戦間期日本農業の基礎構造農地改革の史的前提』文理閣、1989年
『〈歴史と社会〉 日本農業の発展論理』農山漁村文化協会、2012年

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はしがき

序章 農林資源開発の世紀 —課題と構成— 野田公夫
 はじめに
 第一節 「資源」概念の形成とその浮上
 第二節 日本(内地)における農林資源問題と総力戦体制
  一.農林省の編成替えにみる農林資源概念の普及過程
  二.科学動員と農林業
 第三節 日本総力戦体制の困難と農林資源問題
  一.「持たざる国」ドイツとの比較
  二.傾斜生産という圧力、原料物動・代替資源開発という努力
 第四節 課題と構成
  一.日本(内地)における農林資源問題
  二.日本およびドイツ・アメリカの比較農林資源論
  三.資源概念と資源論の検討

第Ⅰ部 日 本

第一章 日本における農林資源開発 —農林生産構造変革なき総力戦— 野田公夫
 はじめに
 第一節 戦時増産政策の概要
  一.重要農林水産物増産助成規則(一九三九)から農地開発法(一九四一)へ
  二.食糧増産応急対策第一次(一九四三)・第二次(同)・第三次(一九四四)へ
  三.増産対象と増産根拠の変遷 「重要農林水産物増産(生産)計画」の分析
 第二節 農業資源開発実績
 第三節 農林資源開発における科学動員
  一.研究課題からみた農林資源開発
  二.農林水産物の加工・転用に関する研究 大豆利用工業と水産資源利用工業
  三.技術指導・技術普及
  四.主な成果
 第四節 農林生産物の軍需資源化
  一.「非常時」が要求した技術の性格
  二.あらゆる農産物の軍需資源化
 おわりに
第二章 「石黒農政」における戦時と戦後 —資源としての人の動員に着目して— 伊藤淳史
 はじめに
 第一節 戦前・戦時における農民政策
  一.政策対象としての「人」の発見(一九三二〜三七年)
  二.動員の本格的展開(一九三七〜四二年)
  三.戦時末期における比重増大(一九四二〜四五年)
 第二節 戦後における農民政策の展開
  一.要員局から開拓局へ(一九四〇年代後半)
  二.「二三男問題」の時代(一九五〇年代前半)
 第三節 農民政策の戦時と戦後
  一.戦時農政における人の動員
  二.戦後農民政策 連続と断絶
 第四節 内原グループと農民政策 戦後における分岐
  一.石黒忠篤 改革派小農主義者
  二.小平権一 もうひとりの「社会派官僚」
  三.那須皓 政治なき政策論の陥穽
  四.加藤完治 皇国日本との一体化
  五.橋本伝左衛門 皇国日本への便乗
 石黒農政再考 むすびにかえて
第三章 戦時期日本における資源動員政策の展開と国土開発 —国家と「東北」— 岡田知弘
 はじめに
 第一節 資源動員政策から国土開発・国土計画へ
  一.資源動員政策の形成と展開
  二.資源動員政策としての東北振興事業
  三.戦時期における国土開発・国土計画の形成
 第二節 地方行政組織の広域化と垂直統合化
  一.戦時期における道州制論と広域行政再編
  二.広域連携から垂直統合へ
  三.地方行政協議会から地方総監府へ
 第三節 戦時期の国土開発と東北振興事業
  一.河水統制事業と工業立地・誘導政策の展開
  二.農工調整問題と「農工協力体制」
  三.東北振興事業の展開と軋轢
 第四節 戦後国土・資源開発への展望
  一.国土・資源開発政策体系の再編
  二.戦後電源開発の展開と東北
 おわりに
第四章 森林の資源化と戦後林政へのアメリカの影響 大田伊久雄
 はじめに
 第一節 日本における森林資源化の進展
  一.明治期における森林管理政策の黎明
  二.明治後期から昭和初期にかけての造林政策
  三.総力戦体制下における林業と国民生活
 第二節 日本とアメリカ 林政と林学の系譜
  一.林学草創期の日米比較
  二.国有林経営とフォレスター像の日米比較
  三.戦時期のアメリカにおける日本林業研究
 第三節 戦後林政にアメリカ人フォレスターが与えた影響
  一.山林局における技官局長の実現
  二.林政統一
  三.森林法の改正
  四.造林の推進
 おわりに
第五章 基地反対闘争の政治 —茨城県鹿島地域・神之池基地闘争にみる土地利用をめぐる対立—  安岡健一
 はじめに
  一.課題
  二.対象地域 鹿島町と神栖村
 第一節 軍事基地と農業問題
   食糧自給を目指した時代/国会農林委員会での議論/
   農林省の動き/高度成長の時代へ
 第二節 労働組合の平和主義と基地闘争
   平和四原則と労働組合/茨城県労働組合連盟の動き/
   農村と労働組合の接触/県議会の動き
 第三節 村の闘争の始まり
   動き出す農村/総決起大会/防衛庁の説得/
   「弾圧」事件と買収価格/分裂の危機/
   誘致活動/「主体」の外と内
 第四節 議会と住民の分裂
   基地設置に「反対しない」決議/祭頭祭の分裂/
   総決起大会へ/基地誘致決議:鹿島町/最後の実力阻止
 第五節 闘争の終わりと村の変容
   議会での決着:神栖村/村長選挙での決着:鹿島町
 おわりに

第Ⅱ部 ドイツ・アメリカ

第六章 「第三帝国」の農業・食糧政策と農業資源開発 —戦時ドイツ食糧アウタルキー政策の実態— 足立芳宏
 はじめに
 第一節 戦時ドイツ国内の農業・食糧政策
  一.農産物の市場統制Marktordnung
  二.戦時期の食糧供給実態
    穀物/「乳牛=酪農」とバター/豚とジャガイモ
 第二節 ナチス・ドイツの食糧アウタルキー政策と農業資源開発
  一.農学研究の拡大とナチ政権による再編
  二.ナチス・ドイツのルーマニア大豆開発プロジェクト
    第二次大戦と満洲大豆/ナチス・ドイツの大豆開発/
    ルーマニアの大豆プロジェクト
 おわりに
第七章 冷戦期における農業・園芸空間の再編 —戦後東独における農林資源開発の構想と実態— 菊池智裕
 はじめに
 第一節 社会主義的農業に関する先行研究の議論
 第二節 国際園芸博覧会と「社会主義」
 第三節 農林資源開発の実態
  一.ビッシュレーベン=シュテッテンの土地改革と集団化における園芸
  二.「混合型村落」マルバッハ村および「純園芸村落」ディッテルシュテット村
    マルバッハ村における土地改革/マルバッハ地区における農業集団化/
    ディッテルシュテット村の土地改革と農業集団化
 おわりに
第八章 アメリカ合衆国における戦時農林資源政策 —南東部における生産調整と土地利用計画を中心に— 名和洋人
 はじめに
 第一節 一九三〇年代の農業問題と生産調整政策
  一.大恐慌期における農業問題
  二.生産調整政策の成立
  三.生産調整政策の強化
 第二節 アメリカ合衆国における第二次大戦期農業政策 農務省の内部資料分析を中心に
  一.アメリカ参戦(一九四一年十二月)以前
  二.アメリカ参戦(一九四一年十二月)以降
 第三節 南東部地域計画に見る農畜産物生産方針
  一.アメリカ南部の農業問題
  二.全国計画委員会(NPB)と土地利用計画
  三.第二次大戦の南東部への地域的インパクト
  四.南東部地域計画委員会(SERPC)による生産調整計画
  五.勧告内容:南東部地域計画委員会(SERPC)と州土地利用計画委員会
  六.郡(カウンティ)レベルの土地利用計画 アラバマ州リー郡
 第四節 地域農業の変貌
  一.南東部七州における生産調整計画目標と実績の比較
  二.地域農業変貌の要因
  三.綿花地帯における土地利用と農畜産物生産実績 アラバマ州リー郡
  四.タバコ地帯における農畜産物生産実績 ノースカロライナ州ロッキンガム郡
 おわりに
終章 農林資源開発と総力戦の比較史 —「資源」概念と現代— 野田公夫
 はじめに
 第一節 本書が明らかにしたこと
  一.日本(内地)における農業資源開発と総力戦(第Ⅰ部 一)
  二.日本林政は森林資源をどのように捉えてきたか(第Ⅰ部 二)
  三.ドイツ・アメリカにおける農林資源開発と総力戦(第Ⅱ部)
 第二節 比較農林資源開発論 日本・ドイツ・アメリカ
  一.日本 生産構造変革なき農林資源開発
  二.ドイツ 科学動員と生産構造変革の遂行
  三.アメリカ 原料農産物輸出型路線の転轍
  四.戦後への脈絡
 第三節 「資源論」「資源概念」における日本と西欧
 第四節 戦前期日本の資源論とりわけ「人的資源論」をめぐって
  一.戦前期日本の資源論における「保育」概念について
  二.「人的資源論」を懸念する声
  三.資源論および人的資源論をどう評価すべきか
 おわりに 農林資源問題から未来を考える
  一.資源化と農林業
  二.代替可能資源としての農林産物
  三.「資源」問題と現代 地域という視座

あとがき
英文要約
索  引


一般社団法人 大学出版部協会 Phone 03-3511-2091 〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目14番13号 メゾン萬六403号室
このサイトにはどなたでも自由にリンクできます。掲載さ>れている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
当協会 スタッフによるもの、上記以外のものの著作権は一般社団法人大学出版部協会にあります 。