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清朝期のユーラシア世界と帝国版図関羽と霊異伝説

関羽と霊異伝説 清朝期のユーラシア世界と帝国版図

A5判 324ページ 上製
価格:5,940円 (消費税:540円)
ISBN978-4-8158-0961-4 C3022
奥付の初版発行年月:2019年09月 / 発売日:2019年09月上旬

内容紹介

三国志の英雄はなぜ中国を代表する神となったのか。民間信仰の広がりと近世国家による統治の不可分の関係を示すとともに、帝国版図の拡大にはたしたその役割を、ユーラシア諸民族とのせめぎあいや現地の神々との習合も視野に描き出す。古代から今日にいたる関羽信仰の全貌を捉えた力作。

前書きなど

東日本大震災と関羽への祈願

二〇一一年六月一八日、台湾の『台湾新生報』なる新聞に「逾八〇〇間関帝廟同歩祈福(八〇〇間を超える関帝廟で同時に幸福祈願活動が実施された)」と題された、次のような興味深い記事が掲載された。

全国八〇〇余間の「関帝廟」では、昨日同時に一〇〇万人による台湾および地球レヴェルの幸福祈願活動が挙行され、総統馬英九(当時。引用者補)は中央・地方官僚を率いて四湖保安宮に赴き、関聖帝君に向かって国泰民安、風調雨順、国家の安定繁栄、商売繁盛などを祈求した。

四湖保安宮では昨日午前一〇時、……、総統馬英九、立法院王金平、副県長林源泉、議長蘇金煌、前行政院秘書長李応元、保安宮主委李金上、彰化県長卓伯源、前総統府資政許信良、各級の民意代表および三〇〇〇名……



[「序章」冒頭より]

著者プロフィール

太田 出(オオタ イズル)

1965年 愛知県に生まれる
1988年 金沢大学文学部卒業
1999年 大阪大学大学院文学研究科博士課程修了
広島大学大学院文学研究科准教授などを経て
現 在 京都大学大学院人間・環境学研究科教授、
    博士(文学)
主 著 『中国近世の罪と罰――犯罪・警察・監獄
    の社会史』(名古屋大学出版会、2015年)

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡 例
参考地図

序 章 領域統合と民間信仰
1 現代における国家と関羽信仰
2 中国近世の民間信仰に関する研究
3 清朝の統治構造、王権と宗教に関する研究
4 本書の目的と構成

第1章 唐朝から明朝における関羽の神格化
1 『三国志』『三国志演義』に見える関羽の義行と霊異伝説
2 唐朝から元朝までの関羽の霊異伝説
3 明朝における関羽の霊異伝説
4 関羽の神格化と霊異伝説

第2章 清朝と関聖帝君の「顕聖」
 ――霊異伝説の創出――
1 清朝における関羽の祭祀・封号と軍隊
2 関聖帝君の霊異伝説の分析
3 関聖帝君の顕聖と「われわれ」意識の共有

第3章 関帝廟という装置
1 現代中国の関帝廟
2 記憶・伝承装置としての関帝廟
3 顕聖する空間としての関帝廟

第4章 「白蓮」の記憶
 ――明清時代江南デルタの謡言と恐怖――
1 恐怖の謡言をめぐる研究視角
2 光緒二年の謡言(1)――県志中に見える紙人、魘魅、割辮
3 光緒二年の謡言(2)――郷鎮志中の「国を挙げて狂うが若し」
4 たぐりよせられる過去の記憶
5 「白蓮」紙人の恐怖と関聖帝君の顕聖

第5章 清朝のユーラシア世界統合と関聖帝君
 ――軍事行動における霊異伝説の創出――
1 乾隆帝と関聖帝君の顕聖
2 新疆・チベット・台湾における関聖帝君の顕聖
3 乾隆帝と関聖帝君・転輪聖王・ゲセル

第6章 清朝の版図・王権と関羽信仰
 ――乾隆帝の十全武功と関聖帝君の顕聖――
1 十全武功の記憶化と版図の可視化
2 清朝の版図と関聖帝君
3 清朝皇帝の権威と関聖帝君

終 章 国家と宗教
1 中国近世における国家と宗教――清朝の王権と関羽信仰
2 近世東アジアにおける王権と宗教
3 近代国家と宗教


参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
英文摘要
中文摘要


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