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 冷戦下の米・キューバ関係外交と移民

外交と移民 冷戦下の米・キューバ関係

A5判 366ページ 上製
定価:5,400円+税
ISBN978-4-8158-0948-5 C3022
奥付の初版発行年月:2019年05月 / 発売日:2019年05月中旬

内容紹介

人の移動がもたらす力――。ワシントン、ハバナ、そしてマイアミ。衝撃はキューバ危機だけではなかった。移民とその社会が生みだす三つ巴のダイナミズムを捉え、グローバルな冷戦の現場と、アメリカ、キューバの国内政治の連関を、アクセス困難な史料から鮮やかに描きだした俊英の力作。

前書きなど

2014年12月17日、アメリカ合衆国とキューバ共和国に「変化」の波が押し寄せた。米国大統領バラク・オバマ(Barack Obama)とキューバ革命評議会議長ラウル・カストロ(Raúl Castro)が、過去半世紀にわたる両国の対立を乗り越え、国交正常化交渉の開始を宣言したのである。この発表は瞬く間に歓喜の渦を巻き起こした。両国の歴史的決定を伝える記事や映像、ツイートが世界中で飛び交うなか、高揚感に胸を躍らせたキューバ人たちは、二つの国家の旗を掲げ、街を歩いた。屋内で暖をとる多くの米国市民たちは、カリブ海の白い砂浜で、甘酸っぱいモヒートを口にする情景を思い浮かべたに違いない。発表直後の世論調査によると、キューバでは国民の97%が、米国でも回答者の63%が国交回復を支持している。

米・キューバ関係の歴史的転換に反対の声がなかったわけではない。フロリダ州選出のキューバ系上院議員マルコ・ルビオ(Marco Rubio)は、共産主義政権との「宥和」によって、キューバ市民の「自由」が犠牲にされたと合衆国の政策転換を激しく糾弾した。2016年大統領選挙の共和党予備選に立候補していたジェブ・ブッシュ(Jeb Bush)、さらには共和党執行部の面々もルビオに同調し、競うようにキューバの「自由」を唱え、オバマを批判した。ルビオもブッシュも、フロリダ州マイアミを地盤とする政治家である。そのマイアミでは、キューバ政府を敵視し、体制転換を目指す反革命勢力が多く集まり、長らくキューバとの国交正常化については、合衆国が追求……

[「序章」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

上 英明(カミ ヒデアキ)

1984年生まれ
2008年 東京大学教養学部卒業
2010年 東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了
2015年 オハイオ州立大学学術大学院博士課程修了
現 在 神奈川大学外国語学部准教授、Ph. D.(歴史学)
著 書 Diplomacy Meets Migration: US Relations with Cuba during
    the Cold War
, Cambridge University Press, 2018
    The Cold War at Home and Abroad: Domestic Politics and
    U. S. Foreign Policy since 1945
(分担執筆), University
    Press of Kentucky, 2018 他

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

凡 例
地 図

序 章
本書の意図――人の移動と外交
本書の研究視角と手法――先行研究を超えて
本書の構成

第1章 革命と反革命
 ―ワシントン、ハバナ、マイアミの三角関係―
革命という名の過去との決別
キューバ革命とアメリカ合衆国
同時進行する反革命運動
米国政府と反革命勢力の「同盟」
イデオロギー闘争への戦術的変更
国境をまたぐ革命運動
経済封鎖と人の移動――1965年カマリオカ危機
マイアミにおける移民社会の形成
移住者と故国
「テロ」の意味――ハバナからの視線
おわりに

第2章 暴力の遺産
 ―米・キューバ関係とカリブ海のテロリズム―
キューバ革命、成熟と安定へ
軍事侵攻の狼煙
イギリス、アルファ66と対峙する
米国政府の変心
フィデル、PIPを始動する
キッシンジャー、秘密協議を開始する
自負と偏見
フォード、キューバ票をとりこぼす
テロリズム・メイド・イン・アメリカ
席巻する反革命テロ
バルバドスの犯罪の余波
フィデル、対話継続のシグナルを送る
おわりに

第3章 対話の機会
 ―ジミー・カーターとフィデル・カストロ―
フィデルからカーターへの伝言
カーター、対話外交に着手する
マイアミの人道問題
マイアミのテロ問題
ブレジンスキー、アフリカと経済制裁を連環させる
フィデル、米国社会に働きかける
フィデル、「キューバ版ネップ」を構想する
秘密協議の開始とその限界
フィデル、在外キューバ人社会との対話を進める
対話の帰結(1)――政治囚の釈放と出国
対話の帰結(2)――帰国する家族たち
対話の帰結(3)――マイアミのキューバ人たち
大統領指令第52号
マリエル移民危機の幕開け
おわりに

第4章 危機の年
 ―移民管理をめぐる米・キューバの外交闘争―
マイアミ、ワシントンを無視する
キューバとの「新しい形態の戦争」
フィデル、態度を硬化させる
カーター、仕切り直しを迫られる
カーター、多数派工作に失敗する
誰がなぜ移民危機に加わったのか
カーター、混乱の泥沼にはまる
再び外交に失敗する
危ぶまれた一触即発の事態
カーター、外交を仕切り直す
カーター、ハバナに個人使節を送る
フィデル、移民危機の停止を決定する
移民合意に達せず
おわりに

第5章 反転攻勢
 ―レーガンの登場と反革命の「アメリカ」化―
レーガン、カストロを脅迫する
キューバ、恐喝をはねつける
意思疎通なき対話
レーガンとその「仲間」たち
マス・カノーサ、カウンター・ロビーを着想する
CANF、アメリカ政治に参入する
ラジオ・マルティを準備する
レーガンのアキレス腱
国外送還のための秘密軍事作戦
おわりに

第6章 共存と対立
 ―移民交渉とラジオ・マルティが意味するもの―
変わりゆくソ連とキューバの関係
レーガン、グレナダ介入を祝う
再び、軍事作戦を検討する
なぜ交渉が開始されたのか
移民協議をめぐる思惑の違い
1948年移民合意に向けて
始まらないラジオ放送
マス・カノーサの苛立ち
フィデルの広報外交
ラジオ・マルティ、放送を開始する
三角関係のダイナミクスがつづく
おわりに

第7章 膠着の継続
 ―冷戦終結と反革命勢力の政治的台頭―
冷却する米・キューバ関係
世界は本当に変わったのか
強大化するCANF
CANF、ポスト・カストロの夢を語る
岐路に立つキューバ
ブッシュ、ベーカー提案を却下する
現状維持という選択(1)――テレビ・マルティ放送を継続する
現状維持という選択(2)――軍事不侵攻を宣言する
CANF、社会主義の終焉を予告する
コミュニティの声をめぐる闘争
忠誠、抗議、退出――政権転覆のジレンマ
畏れおののくフロリダ
キューバ民主化法案をめぐる討論
追い詰められた大統領
もう一つの「プラヤ・ヒロン」
おわりに

終 章
グローバル冷戦時代の「移民管理」
史料分析によって浮かび上がる「移民政治」
対立と紐帯――革命と反革命が彩る中南米の冷戦
おわりに――和解に向けて

あとがき

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