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変動する社会と向き合うために教育と学びの原理

教育と学びの原理 変動する社会と向き合うために

A5判 256ページ 並製
価格:2,970円 (消費税:270円)
ISBN978-4-8158-0812-9 C3037
奥付の初版発行年月:2015年07月 / 発売日:2015年06月下旬

内容紹介

グローバル社会を生きるための課題対応力を育み、子どもたちの学びを生み出す教育の新たな姿とは。教育にできることを見きわめ、「教える-学ぶ」関係の可能性を、学びを中心にとらえ直してやさしく解説。社会や制度を知り、子どもとよりよく向き合うための、叡智あふれるテキスト。

前書きなど

はじめに――変貌する世界とわが国の教育改革

21世紀に入り、経済状況を含め日本社会が大きく変わりつつある。その変動に対応する人材を育てるために、学校教育への期待や要請も高まっている。いうまでもなく、21世紀の日本社会はグローバル化の影響を大きく受け、遠く離れたところで起こった出来事がわれわれの生活に影響を及ぼしている。1980年代には日本の経済成長や優れた人材育成が世界から注目されたが、いまや世界的な規模での経済競争が日本社会に変化を迫ってきている。社会や人間の変化に対応しなければならない教育も、グローバル化の影響から逃れられない。迫りくるグローバル化の挑戦に対応するというスローガンのもと、21世紀に入って教育改革のスピードも速まっている。

21世紀の日本の教育はどこに向かおうとしているのだろうか。一つ確かなことは、グローバル化への対応とそれに伴う社会変動に対処するために、これからも学校教育が引き続き重要な役割を果たすことである。学校教育の改善のためには、制度や組織やカリキュラムをたえず改善して、時代や社会の変化に対応できる人間を育成することが求められる。世界の変化は激しいが、そのなかでもさまざまな領域で日本や世界に貢献できる人間をどのように育てるのかを考えなければならない。教育の領域において、急激に変わるものに対しては的確で迅速な判断や提案が求められ、安定しながらもゆっくりとしかし確実に変化していくものに対しては熟慮に基づいた対応が求められる。本書ではこのような考えに基づいて、21世紀前半の日本社会に生きる人間のための教育の……

[本書「序章」冒頭より]

著者プロフィール

早川 操(ハヤカワ ミサオ)

1952年生まれ
コロンビア大学大学院教育学研究科博士課程修了
名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授を経て
現 在 椙山女学園大学教育学部教授、名古屋大学名誉教授
著 書 『デューイの探究教育哲学』(名古屋大学出版会、1994年)ほか

伊藤 彰浩(イトウ アキヒロ)

1960年生まれ
名古屋大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学
現 在 名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授
著 書 『戦間期日本の高等教育』(玉川大学出版部、1999年)ほか

伊藤 博美(イトウ ヒロミ)

椙山女学園大学教育学部

龍崎 忠(リュウザキ タダシ)

岐阜聖徳学園大学教育学部

生澤 繁樹(イザワ シゲキ)

名古屋大学大学院教育発達科学研究科

藤原 直子(フジワラ ナオコ)

椙山女学園大学人間関係学部

内田 良(ウチダ リョウ)

名古屋大学大学院教育発達科学研究科

加藤 潤(カトウ ジュン)

愛知大学文学部

宮之原 弘(ミヤノハラ ヒロシ)

金城学院中学校

長谷川 哲也(ハセガワ テツヤ)

静岡大学教育学部

阿曽沼 明裕(アソヌマ アキヒロ)

名古屋大学大学院教育発達科学研究科

児島 明(コジマ アキラ)

鳥取大学地域学部

虎岩 朋加(トライワ トモカ)

敬和学園大学人文学部

松下 晴彦(マツシタ ハルヒコ)

名古屋大学大学院教育発達科学研究科

西野 節男(ニシノ セツオ)

名古屋大学名誉教授

服部 美奈(ハットリ ミナ)

名古屋大学大学院教育発達科学研究科

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 変動する社会と向き合うための教育

第Ⅰ部 社会の流動化と向き合う

第1章 流動化する社会と教育
 ―汎用力・転移力を身につける―
はじめに
1 変動するグローバル社会と教育
2 「学習する共同体」としての学校
3 汎用力・転移力の学習と教授――主体的な学習の行方
おわりに――プロテウス的人間の誕生
 トピック 転移可能な技能/汎用的な技能

第2章 子どものケアと教育
 ―いま求められるケアと向き合う―
はじめに
1 子どもへのケアの困難さ――「アンダークラス化」する女性
2 高ケア社会への可能性
3 ケア論の提唱する学校教育と学習観
4 ケアする共同体と学習観の転換
おわりに
 トピック 市民が行うケアの姿――NPOの取り組みから

第3章 学習する力の新しい姿
 ―課題を解決する力とは―
はじめに
1 21世紀型学力観と学校教育
2 教授と学習の新たな関係
3 新しい学力を育てるための実践事例
4 これからの学習の姿――デューイ的伝統をどう読み解くか
おわりに――課題を解決する力とは
 トピック PISA型学力の新展開

第4章 新時代のティーチングとカリキュラム開発
 ―教えることに向き合う―
はじめに
1 近代のティーチングの原理を問い直す
2 ティーチングを考え直すカリキュラム
3 教師のティーチングと学校組織・文化――カリキュラム開発のための視点
おわりに――教えることと社会に向き合う
 トピック PBL

第5章 キャリア教育に何ができるか
 ―変わる職業観と人生キャリア―
はじめに
1 キャリア教育の登場と若者雇用問題
2 キャリア教育に関する施策
3 学校教育におけるキャリア教育
4 キャリアデザインと生涯学習
おわりに
 トピック インターンシップ

第Ⅱ部 教育改革と向き合う

第6章 子どもの問題行動
 ―「いじめ」「不登校」をどう考えるか―
はじめに
1 私の立ち位置を知る
2 「いじめ」「不登校」に迫る
3 教育改革と子ども問題
おわりに
 トピック 心理主義

第7章 情報リテラシーの革新
 ―激変するネット環境と向き合う―
はじめに
1 情報教育政策のはじまりと現在
2 情報教育とは何か――メディア・リテラシーからクリティカル・シンキングへ
3 メディア革新がもたらす教育のパラダイム転換――一斉授業から協働学習へ
4 新たなメディア・リテラシー教育の試み
おわりに――ネット環境を生きる次世代の教育とは
 トピック 科学的リテラシー――科学技術は社会を幸福にするのか

第8章 教員養成改革の功罪
 ―新しい教師像と向き合う―
はじめに
1 現代の教員養成改革
2 教員の資質能力をめぐる議論
3 大学で進められる教員養成の新たな取り組み
4 今日の教員養成改革の光と影
おわりに
 トピック 教員需要と教員養成

第9章 入試改革と大学教育
 ―選抜から教育へ―
はじめに
1 大学入学(アドミッション)の多様性――競争選抜・資格選抜・開放入学
2 大学入学システムを規定する要因――学校教育体系と需給関係
3 大学入学システムの戦後日本的構造
4 戦後日本的構造の変容(1990年代以降)
5 大学教育の問題へ
おわりに
 トピック GPA

第10章 教育と不平等
 ―「格差」と向き合う―
はじめに
1 格差の実態
2 「分断される社会」というシナリオ
おわりに――「格差はなくすべき」なのか
 トピック 教育の地域間格差

第Ⅲ部 多様化する価値観と向き合う

第11章 多文化共生社会と市民性教育の接点
 ―多様性と向き合う―
はじめに
1 戦後日本社会と「多文化共生」
2 外国人の子どもの教育と「多文化共生」
3 多文化共生社会を生き抜く教育
おわりに
 トピック 異文化尊重の「意図せざる結果」

第12章 女性の教育と社会参画
 ―隠れた格差と向き合う―
はじめに
1 女性の進路形成とその「障壁」
2 男女平等原則とジェンダーの不平等の間
3 二重基準と二重意識――差別を循環させる構造と意識
おわりに
 トピック ポジティブ・アクション

第13章 道徳教育の課題と可能性
 ―民主的な社会の担い手をいかに育成するか―
はじめに
1 道徳的価値の探究
2 日本の道徳教育
3 道徳教育の方法と工夫
おわりに――普遍的な価値志向と共感の拡張
 トピック 脳科学の最前線とモラルの起源

第14章 宗教教育の新しい姿
 ―コンフリクトと共生と―
はじめに
1 グローバル化時代の宗教と教育
2 第二次世界大戦後のわが国の宗教教育
3 諸外国における宗教と教育のあり方
4 共生を目指す宗教教育の可能性
おわりに
 トピック 文明の衝突――寛容なイスラーム思想形成に向けて

第15章 教育のグローバル化は進んでいるか
 ―日本の行方―
はじめに
1 教育のグローバル化への日本の対応
2 グローバル化対応の教育改革――外国語教育とグローバル人材育成
3 多言語教育と多文化教育の観点
おわりに
 トピック 小学校の外国語教育

終 章 教育にできることとできないこと

参考文献
あとがき
索 引

関連書

速水敏彦編『教育と学びの心理学―基礎力のある教師になるために―』


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