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論理学をつくる

論理学をつくる

B5判 442ページ 並製
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-8158-0390-2(4-8158-0390-0) C3010
奥付の初版発行年月:2000年10月 / 発売日:2000年10月上旬

内容紹介

論理学って、こんなに面白かったのか! 出来あいの論理学を天下り式に解説するのでなく、論理学の目的をはっきりさせた上で、それを作り上げていくプロセスを読者と共有することによって、考え方の「なぜ」が納得できるようにした傑作テキスト。初歩の論理学が一人でマスターできる。

前書きなど

分厚い論理学の教科書を書いてみたいとずっと思っていた。でも日本ではなぜか教科書はコンパクトなものと決まっているので、無理だろうなと思っていたら、「出しましょう!」と言ってくれる話の分かる編集者が現れ、うれしさのあまり書いてしまったのがこの本だ。はじめはおおよそこの倍の分量の原稿があった。「それはいくらなんでも……」ということで、泣く泣く削っていってもこれだけの分量になった。論理学の教科書としては異例の厚さではないかと思う。きっと日本最厚(?)だ。

なぜ厚くなったかというと、次の4点を目指したからだ。

(1) これまでまったく論理学というものを学んだことのない人のための教科書を書こう。だから、重要なことがらはくどいくらいに説明をした。いろいろな証明も途中を省略せず、最初に見通しを述べた上で行うようつとめた。そうしたら、厚くなった。

(2) 1人で読みながら練習問題を解いていくだけで、初歩の論理学がマスターできる教科書を書こう。こういうのをself-containedな教科書と言う。だから、練習問題をたくさん用意し、そのすべてに解答をつけた。そうしたら、ますます厚くなった。

(3) こまかなテクニックの習得だけでなく、なぜそのようなテクニックが必要なのか、そのテクニックの有効性と限界はどこにあるか、論理学のどこが面白いのかということを分かってもらえる教科書を書こう。そのため、すでにできあがっている論理学を天下り式に解説するというやり方はやめた。まず論理学の目的をはっきりさせた上で、それを果たすにはどのような道具だてをつくっていけばよいかを考え、次にその道具だては目的をきちんと果たしているかを調べ、限界があればさらによい道具に改善していく……といった叙述の進め方を採用した。ようするに、この本の中で論理学をつくってみよう、と考えたのだ。そうしたら、どんどん厚くなった。

(4) 欲張った教科書を書こう。この本はタブロー、わりとちゃんとした述語論理のセマンティクス、自然演繹、非古典論理、第2階の論理など、初心者向けとしてはかなりたくさんの内容を含んでいる。こう言ってはなんだが、論理学のごく初歩的なところは、あまり面白くない。ある程度進んでパッと道が開けたところに面白い話題がたくさんある。どうしてもそこまでの話題は盛り込みたかった。そうしたら、こんなに厚くなった。


大学で教え始めた頃、論理学の授業はたいてい2学期間をかけて行われていた。そのときには、私はこの本に盛り込んだ内容をざっとカヴァーすることができた。しかし、その後のカリキュラム「改革」の中で、1~2年生向けの科目は内容や到達目標を考えもせずにほとんどが機械的に半年間で終了する授業科目になった。こうして、論理学の本当に面白いところに到達する前に授業期間が終了、ということになってしまった。そこで、基本事項の確認とか論理学のテク……

[「はじめに」冒頭より]

著者プロフィール

戸田山 和久(トダヤマ カズヒサ)

1958年生
1989年 東京大学大学院人文科学研究科修了
現 在 名古屋大学情報学研究科教授
著 書 『知識という環境』(共著、名古屋大学出版会、1996)
    『誇り高い技術者になろう』(共編、名古屋大学出版会、2004、第2版2012)
    『科学哲学の冒険』(日本放送出版協会、2005)
    『「科学的思考」のレッスン』(NHK出版、2011)
    『科学技術をよく考える』(共編、名古屋大学出版会、2013)
    『哲学入門』(筑摩書房、2014)
    『科学的実在論を擁護する』(名古屋大学出版会、2015)
    『〈概念工学〉宣言!』(共編、名古屋大学出版会、2019)他

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

第I部 論理学をはじめる

第1章 What is THIS Thing called Logic ?
1.1 論理とは何か?そして論理学は何をするのか
1.2 論理の正しさをどこに求めたらよいか

第2章 論理学の人工言語をつくる
2.1 自然言語から人工言語へ
2.2 人工言語L

第3章 人工言語に意味を与える
――命題論理のセマンティクス
3.1 結合子の意味と真理表
3.2 論理式の真理値分析
3.3 トートロジー
3.4 「何だ、けっきょく同じことじゃない」を捉える――論理的同値性
3.5 真理表を理論的に反省する
3.6 矛盾とは何か
3.7 論証の正しさとは何か
3.8 論理的帰結という関係
3.9 真理関数という考え方
3.10 日本語の「ならば」と論理学の「→」
3.11 コンパクト性定理
3.12 メタ言語と対象言語をめぐって

第4章 機械もすなる論理学
4.1 意味論的タブローの方法
4.2 タブローの信頼性

第I部のまとめ

第II部 論理学をひろげる

第5章 論理学の対象言語を拡張する
5.1 なぜ言語の拡張が必要なのか
5.2 述語論理での命題の記号化
5.3 述語論理のための言語をつくる
5.4 タブローの方法を拡張する

第6章 おおっと述語論理のセマンティクスがまだだった
6.1 述語論理のセマンティクスをつくらなければ
6.2 セマンティクスとモデル
6.3 存在措定と会話の含意
6.4 伝統的論理学をちょっとだけ

第7章 さらに論理言語を拡張する
7.1 MPLの限界
7.2 PPLのセマンティクス
7.3 PPLにタブローを使ってみる
7.4 論理学者を責めないで――決定問題と計算の理論

第8章 さらにさらに論理言語を拡張する
8.1 同一性を含む述語論理IPL
8.2 個数の表現と同一性記号

第II部のまとめ

第III部 論理をもう1つの目で見る

第9章 自然演繹法を使いこなそう
9.1 自然演繹法をつくる
9.2 他の結合子のための推論規則
9.3 矛盾記号を導入した方がよいかも
9.4 述語論理への拡張
9.5 同一性記号を含む自然演繹

第10章 シンタクスの視点から論理学のゴールに迫る
10.1 公理系という発想
10.2 シンタクスとセマンティクス
10.3 命題論理の公理系の完全性証明

第III部のまとめ

第IV部 論理学はここから先が面白い! 進んだ話題のロードマップ

第11章 めくるめく非古典論理の世界にようこそ!
11.1 古典論理は神の論理である――2値原理と排中律のいかがわしさ
11.2 多値論理
11.3 直観主義論理
11.4 古典論理の拡張としての様相論理

第12章 古典論理にもまだ学ぶことがたくさん残っている
12.1 完全武装した述語論理の言語FOL
12.2 AFOLの完全性とそこから得られるいくつかの結果
12.3 第1階の理論
12.4 モデル同士の同型性
12.5 第2階の論理

第IV部のまとめ

付録
A. A little bit of mathematics
B. 練習問題解答
C. ブックガイド


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