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生態資源と人びとの関わり争わないための生業実践

アフリカ潜在力4
争わないための生業実践 生態資源と人びとの関わり

太田 至 :シリーズ総編者, 重田 眞義:編, 伊谷 樹一:編
A5判 370ページ 上製
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-8140-0008-1 C1330
奥付の初版発行年月:2016年03月 / 発売日:2016年04月上旬

内容紹介

異なる社会・文化的集団の接触や人の越境は,新たな技術を創出する。資源を巡る対立はしばしば紛争の原因となるが,こうした革新は新たな利用の道を開き,それが日常のマンパワーを基盤とするかぎり,利用/再生の均衡は保たれる。多様な技術や価値観の混合によって自然資源の共有を図る人々の営みに,平和的・持続的な社会の形を見る。

【推薦】嘉田由紀子氏(前 滋賀県知事,びわこ成蹊スポーツ大学 学長)
1970年代,学生時代に女ひとりアフリカへ向かった私は,タンザニアの農村に暮らしていて,ここは何と安全で平和なんだろうと感銘を受けました。1990年代以降は毎年,マラウィ湖畔の村で住み込み調査をしました。アフリカでは紛争イメージが先行していますが,その暮らしの深部にせまれば,40年前に私の抱いた感慨が正しかったことを本書は教えてくれます。

著者プロフィール

太田 至 (オオタ イタル)

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授
京都大学大学院理学研究科修了,理学博士。
主な著書に Displacement Risks in Africa(Kyoto University Press,共編著),『遊動民(ノマッド)』(昭和堂,共編著),『続・自然社会の人類学』(アカデミア出版会,共編著)など。

重田 眞義(シゲタ マサヨシ)

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授
京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了,博士(農学)。
主な著作に,『アフリカ農業の諸問題』(京都大学学術出版会,共編著)など。

伊谷 樹一(イタニ ジュイチ)

京都大学・准教授
京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了,博士(農学)。
主な著作に『アフリカと熱帯圏の農耕文化』(大明堂,共著),『酒づくりの民族誌』(八坂書房,共著),『アフリカ地域研究と農村開発』(京都大学学術出版会,共編著)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 生態と生業の新たな関係 [伊谷樹一]
   1 農村が抱える三つの課題
   2 外部社会との接触
   3 生業様式の変容
   4 生態資源と生業

第1部 外部社会との接触

第1章 富者として農村に生きる牧畜民―タンザニア・ルクワ湖畔におけるスクマとワンダの共存 [泉 直亮]
   1 移住を繰り返してきた牧畜民スクマと農村の経済格差
    (一)牧畜に対する外部社会からの圧力/(二)消失しつつある「フロンティア」
    (三)農村の富者としてのスクマ
   2 ルクワ湖畔に移住したスクマと地元住民ワンダ
    (一)スクマの地理的・政治的な周辺性/(二)スクマ世帯とワンダ世帯の経済状況の比較
   3 もめごとへの対応
    (一)暴動にいたった事例/(二)食害事故への対応
   4 スクマ―ワンダの関係構築
    (一)二〇一三年はじめの食料不足/(二)救済を目的とした仕事の提供
   5 地元住民と共存するために
    (一)居住場所を確保するための社会的繋がり/(二)富者として農村に生きる牧畜民
第2章 民族の対立と共存のプロセス―タンザニア・キロンベロ谷の事例 [加藤 太]
   1 民族の移動
   2 調査地域の概要と調査方法
   3 地元民ポゴロと移住民スクマ
   4 民族間の土地争い
   5 関係の修復プロセス
   6 自然保護政策への対応と民族関係
   7 両民族をつなぐ接点
   8 農牧民スクマの民族性について
第3章 コーラナッツがつなぐ森とサバンナの人びと―ガーナ・カカオ生産の裏側で [桐越仁美]
   1 コーラナッツとカカオをめぐる人びとの動き
   2 西アフリカに流通するコーラナッツ
   3 調査地概要
   4 コーラナッツとカカオの関係
   5 長距離交易ネットワークとゾンゴの形成
   6 コーラナッツ・ビジネスの構造
   7 コーラナッツ・ビジネスを取り巻く信頼のネットワーク
    (一)採取者からのコーラナッツの買い付け/(二)商人とヤロの関係性
    (三)シャゴ・システム
   8 ガーナ南部への人口の流入と民族共生の可能性

第2部 生業構造の変容

第4章 農牧複合と土地争い―社会と技術の両アプローチを実践した対立の克服 [山本佳奈]
   1 アフリカにおける農耕―牧畜の関係と土地の競合
   2 ボジ高原の概要
   3 農牧複合の実態
   4 季節湿地の耕地化が引き起こした土地の競合
   5 季節湿地をめぐる住民の争い
    (一)土地利用の折り合いにいたった事例/(二)湿地の畑を放牧地に戻した事例/
    (三)土地争いを回避した事例
   6 農地不足の克服へ向けた新たな動き
   7 土地争いを収束させる農村社会
第5章 バナナを基盤とする農耕社会の柔軟性―ウガンダ中部、ガンダの事例から [佐藤靖明]
   1 社会の柔軟性が生み出される背景
   2 ガンダにおけるバナナ栽培と土地管理の特色
   3 主食作物の選択にみられる柔軟性
   4 生業活動にみられる分業から協働への変化
   5 世帯間にみられるいさかいの増加と互助組織の誕生
   6 農村社会の柔軟性がもたらす持続性
第6章 半乾燥地域の林業を支える火との付きあい方―タンザニア南部、ベナの農村の事例から [近藤 史]
   1 林業の可能性
    (一)「はげ山」の変貌/(二)タンザニアにおける森林の利用と保全
   2 造林焼畑―利用するための林づくり
    (一)木を管理する/(二)食料生産の安定から林業の経済性重視へ
   3 林業景気
    (一)カネのなる木/(二)大規模林家の台頭
   4 林を守る
    (一)野火の脅威/(二)火を制御する
   5 平準化と経済格差
第7章 平準化機構の功罪―ザンビア・ベンバ社会のピースワーク [吉村友希・大山修一]
   1 ピースワーク
   2 ザンビアの農業政策とベンバの農耕
   3 ベンバ農村の現在
   4 村でおこなわれるピースワーク
   5 ピースワークのもつ両義性
   6 平準化機構がもたらす経済格差と農村内の共生のゆくえ

第3部 生態資源と生業

第8章 マルーラ酒が守るサバンナの農地林―ナミビア北部、オヴァンボ社会の事例 [藤岡悠一郎]
   1 畑と林の共存景観、農地林
   2 ナミビア半乾燥地域のオヴァンボ社会と生業形態
   3 ナミビアの社会変動とマルーラ利用の変化
    (一)伝統的権威と厳格なルール/(二)オヴァンボ社会と樹木利用の変化
   4 マルーラ酒づくりの共同労働と酒の贈与
   5 「共」を守る酒
第9章 多様性をうみだす潜在力―カメルーン東南部、熱帯雨林における焼畑を基盤とした農業実践 [四方 篝]
   1 熱帯林における生物多様性の保全をめぐる議論
    (一)ランド・スペアリングとランド・シェアリング/(二)焼畑へのまなざし
   2 調査地域
    (一)調査の対象/(二)カメルーン東部州の植生景観
   3 焼畑がうみだす多様性
    (一)バナナから読み解く焼畑システム/(二)焼畑が創り出す動的な生態系模様
   4 「伐らない焼畑」がうみだす多様性
    (一)カカオ・アグロフォレストリー
    (二)「伐らない焼畑」における自給作物栽培と商品作物栽培の両立
    (三)「伐らない焼畑」における庇陰樹の多様性
   5 焼畑の潜在力
第10章 水資源の活用と環境の再生―小型水力発電をめぐって [黒崎龍悟]
   1 水利用の新しい動き
   2 河川流域の利用と保全
   3 対象地の概要
   4 タンザニアの電力事情
   5 ルデワ県における小型水力発電の動向
    (一)簡単に入手できる素材や廃材の活用/(二)知識・技術の習得と実践者たちのネットワーク
    (三)資金/(四)自然地形を活用した発電/(五)発電規模と電気の用途
   6 環境保全への展開
    (一)エントリー・ポイント―乾季の流量の問題/(二)「ルママ小水力発電プロジェクト」の影響
    (三)不満を募らせる村びとたち/(四)小型水力発電の役割
   7 農村における自然環境とエネルギーのつながり
    (一)自然と人をつなぐ小型水力発電/(二)自然と人の距離
終章 争わないための作法―生業と生態をめぐる潜在力 [重田眞義]
   1 常態としての平安―「潜在力」へ接近するために
   2 三つのドグマ―アフリカの人と自然の関係に対する大きな誤解
   3 ドグマの背景―どのようにアフリカは偏った見方にさらされているか
   4 生業生態をめぐる対立と協調―集団間の平安
   5 土地をめぐる生業経済の変動―集団内の平安
   6 人と生態資源の新たな関係性
   7 争わないための作法―生業における人と環境の相互関係
    (一)平準化を志向して生み出される格差/(二)格差を超えて共生を求める

索引
執筆者紹介


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