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 近代奈良の蒐集家と郷土研究好古の瘴気

好古の瘴気 近代奈良の蒐集家と郷土研究

A5判 384ページ 上製
定価:6,400円+税
ISBN978-4-7664-2480-5 C3021
奥付の初版発行年月:2017年11月 / 発売日:2017年11月中旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

▼「大和にアンマリ物が多いからだ」。

アカデミズムの視線を撥ね返す、
あくなき蒐集・踏査と人々のネットワーク。
「郷土で研究する」(柳田国男)ことの
意味を近代奈良に探る。

 1870年代に廃県・廃仏毀釈による大変革を蒙った奈良県(大和国)。19世紀後半、中央のアカデミズムから、国威発揚のための良質な素材を抱いた地として熱い視線を受けながら、しかし現地で圧倒的に親しまれたのは、モノや場所を媒介にして強固に社会へと根付いた、体系性に欠け整合性も怪しい知識、すなわち「土着」した知であった。アカデミズムは、知の黒船とはなり得なかったのである。
 郷土研究者たちは、平城宮跡や南朝史蹟という土地の由緒を掌握・顕彰すべく格闘した19世紀をへて、20世紀に入って訪れた雑誌の季節(読書社会)には、師範学校を軸とするネットワークを駆使して、民俗研究を土俗研究に、考古学研究を金石研究に読み替えつつ盛んに研究を行った。それらは1930年代以降の郷土教育運動へもつながってゆく。そして、「帝国日本」を所与の背景に、仏教文物や実用マレー語といったモノと知識を求めて海外雄飛する者も現れる。
 本書は、近代奈良に充満する「好古の瘴気」に中てられた郷土研究者たちの、時に常識はずれで不道徳にすら見える興味深い営為――柳田国男のいう「郷土で研究」すること――を詳細に追い、そこに立ち現れる強烈な現場・現物主義と、場所(踏査)とモノ(収集)への飽くなき執着とから、地域の知的構造を明らかにする。

著者プロフィール

黒岩 康博(クロイワ ヤスヒロ)

1974年 京都市生まれ。2004年 京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。京都大学人文科学研究所助教を経て、2014年より天理大学文学部歴史文化学科講師。博士(文学)。専門は社会・文化・娯楽を主とする日本近代史。
主要業績に、本書に収められた論考のほか、関野貞日記研究会編『関野貞日記』(翻刻・註解。中央公論美術出版、2009年)、茨木市史編さん委員会編『新修茨木市史』第3巻 通史Ⅲ(共著。茨木市、2016年)、などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 郷土に何が起こったか

 顕彰のモニュメント

第一章 平城神宮創建計画と奈良
――「南都」と「古京」をつなぐもの――
 はじめに
 第一節 明治三四~三八年の創建計画
  1 平城神宮建設会と「地元」有志
  2 貴顕と地主
 第二節 明治三八~四二年の創建計画
  1 建議と請願――県会と帝国議会――
  2 霊像と溝辺
 おわりに
 史料 「平城宮址顕彰会趣意書」

第二章 南朝史蹟の考証と地域社会
――北畠治房と賀名生村――
 はじめに
 第一節 南朝功臣の中の北畠親房
  1 親房墓の「発見」と『古蹟弁妄』
  2 学界の認定
  3 奈良県会と策命使派遣
 第二節 古蹟の中の親房墓
  1 帝国議会と神社創建計画
  2 奈良県史蹟勝地調査会と墳墓の発掘
 おわりに
 史料1 賀名生古蹟保存建議案
 史料2 室生寺墓発掘報告書

 師範ネットワークと雑誌

第三章 高田十郎『なら』に見る近代大和の「地域研究」ネットワーク
 はじめに
 第一節 民俗研究
  1 師範学校という磁場
  2 『爐邊叢書』の位相
 第二節 金石文研究
  1 朝鮮鐘への憧憬
  2 コレクターから「学者」へ
  3 燈籠への執着
  4 学僧の活躍
 おわりに

第四章 「うまし国奈良」の形成と万葉地理研究
 はじめに
 第一節 万葉歌枕の比定
  1 万葉地理研究と雑誌『奈良文化』
  2 『大和万葉地理研究』『大和万葉古跡巡礼』と後学の簇生
 第二節 万葉歌枕の可視化
  1 万葉地理研究における写真の重視
  2 アノニマスな風景への志向と写真
  3 『大和万葉古跡写真』とその反響
 第三節 万葉歌枕の巡歴
  1 「巡歴地」万葉歌枕の盛衰
  2 案内人辰巳と奈良文化夏季講座
 おわりに
 史料 『大和万葉古跡写真』

第五章 奈良万葉植物園の創設過程
 はじめに
 第一節 離宮設置の頓挫と昭和大典
  1 奈良公園の改良と植物園
  2 昭和二年の再燃
 第二節 万葉学者佐佐木信綱の奔走
  1 信綱の博物館構想
  2 万葉植物園期成会の成立
 第三節 造園家大屋霊城のデザイン
  1 古都の苑池
  2 四苑の植栽
 おわりに
 史料1 「万葉植物園期成会趣意書」
 史料2 「万葉植物園期成会会則」

第六章 蒐集家コレクター崎山卯左衛門の郷土研究
 はじめに
 第一節 「骨董もん」の考古学
  1 村内遺跡の研究と遺物の蒐集
  2 森本六爾と大和考古学会
 第二節 「土俗学者」の任務
  1 雑誌『旅と伝説』と風習・伝説紹介
  2 民謡・童謡の蒐集と『童心』
 おわりに

 雄飛する心身

第七章 雑誌『寧楽』の仏教美術研究
――郷土文化と請来古物――
 はじめに
 第一節 美術雑誌『寧楽』
  1 刊行・編集体制と特集
  2 ヴィジュアル面
  3 その他の事業
 第二節 学僧と大陸
  1 仏教文化研究の国際性
  2 大屋徳城の「鮮支巡礼」その一――大正一一年朝鮮半島巡歴――
  3 大屋徳城の「鮮支巡礼」その二――大正一二年朝鮮半島・中国大
  陸巡歴――
 おわりに

第八章 宮武正道の「語学道楽」
――趣味人と帝国日本――
 はじめに
 第一節 エスペラント
  1 切手蒐集からエスペラントへ
  2 社交か思想運動か
 第二節 パラオ語
  1 エラケツとの出会い
  2 「土俗趣味家」への「堕落」
 第三節 マレー語
  1 新聞・雑誌の「生キタマレー語」
  2 「南方の言語政策」
 おわりに


あとがき


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