環境法の考えかたⅠ― 「人」という視点から
価格:2,860円 (消費税:260円)
ISBN978-4-7664-2404-1 C3032
奥付の初版発行年月:2017年03月 / 発売日:2017年03月下旬
▼「あなたの大切な人」にとってのよい環境とは何だろうか? 環境法はもっと面白く、その裾野は広い。
▼公害や環境保全といった問題だけでなく、「認知症」や「躁鬱」といった“ 個々の人”の環境の問題までを考える。
▼社会問題の書籍として読めるだけではなく、弁護士、企業法務担当者、CSR 担当者にも必携の1冊。
「あなたの大切な人」にとってのよい環境とは何だろうか?
「これまであたりまえに思ってきたことにとらわれず、自分の頭で考えるということが、これほど求められている時代があったでしょうか。 この本を手にとってくださった方が、みんながそういっているけれど、本当はどうなのか、どうすれば本当のことがわかるのか、そこからなにを考え、これからどのように生きていったらいいのか、そんなふうに考えるようになってほしいと思っています」とは、本書にある著者のメッセージ。
1人1人がよい環境でいてほしい。
かつては裁判官として、また学生とともにある研究者として生きてきた著者が、「躁鬱」や「認知症」といった周りにある身近なテーマや、ウサギが原告となった「アマミノクロウサギ訴訟」等興味深いテーマをも、例にとりあげながら、環境と法のもっとも基本であるべきことを考える。
六車 明(ロクシャ アキラ)
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)教授。
弁護士(京橋法律事務所)。専攻 環境法。趣味 フルート演奏。
1975年慶應義塾大学法学部卒業、1976年同大学大学院法学研究科修士課程民事法学専攻退学。同年司法修習生(30期・東京4班)。1978年東京地方裁判所判事補、1982年高松家庭裁判所判事補兼地方裁判所判事補、1985年東京地方検察庁検事法務省刑事局局付検事、1988年外務事務官(国際連合局)併任(ILO第4回公務合同委員会〔ジュネーブ〕政府代表顧問)、1989年東京地方裁判所判事、1991年仙台地方裁判所判事、1995年東京地方裁判所判事東京高等裁判所判事職務代行、1997年東京高等裁判所判事、1998年東京地方検察庁検事総理府公害等調整委員会事務局審査官、1999年東京高等裁判所判事。同年慶應義塾大学法学部助教授、2002年同大学法学部教授、2004年から現職。2014年弁護士登録(第二東京弁護士会。環境保全委員会・環境紛争制度部会所属)。
日米法学会評議員、環境法政策学会理事。日本私法学会、東北法学会、LAWASIA(個人会員)所属。
その他、1999年WWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)事務局特別顧問(~現在)、2002年法務省政策評価懇談会委員(~2014年)、2009年独立行政法人環境再生保全機構契約監視委員会委員(~2015年)を歴任。
目次
はしがき
序 章 環境法の考えかた
Ⅰ 環境問題のとらえかた
Ⅱ 環境問題と法の対応
Ⅲ ある個人にとっての法という新たな視点から
第1章 ユニバーサルデザインの環境法
I ユニバーサルデザインの法
1 ユニバーサルデザイン
2 ユニバーサルデザインの条約と法律
3 アクセシビリティの条約と法律
Ⅱ ユニバーサルデザインの環境法
1 緊急時における環境情報の提供
2 環境白書・環境影響評価書類
3 環境教育・広報活動・NGO
第2章 そううつ・うつと環境法の問題
Ⅰ そううつ・うつ
1 そううつ・うつの症状
2 うつになりやすい世代
3 うつ病の治療目標
4 そううつ・うつの治療法
Ⅱ そううつ・うつの人の感じかた
1 美しいながめ
2 聞こえてくる音
3 においの感じかた
Ⅲ そううつ・うつの人のための法の関わりかた
1 どのような状況が問題なのか
2 裁判所はどのように考えているのか
3 どのような立法がされているか
Ⅳ 環境法は何ができるのか
1 そううつ・うつの人たちのおかれている環境
2 環境法はそううつ・うつの人たちに何ができるのか
第3章 認知症の人に向ける環境法の目
Ⅰ 認知症の人クリスティーン
1 認知症の人の発信
2 高い精神活動
Ⅱ 認知症の人に向ける政府の目線
1 従来の目線
2 新しい目線
3 政府が説明する認知症の症状
Ⅲ ある特定の認知症の人と向き合う環境法
1 佐藤雅彦のメッセージ
2 音に対する敏感さ
3 認知症の人の環境権
第4章 ハンセン病と環境法
Ⅰ ハンセン病
1 ハンセン病とは何か
2 熊本地裁判決が認定した被害
3 熊本地裁判決とその後
4 ハンセン病問題の解決の促進に関する法律
Ⅱ ハンセン病であった人々をとりまくもの
1 物理的制限
2 園内の趣味
3 「元患者」という差別
Ⅲ 犠牲となった人たちと私たち
1 私たちの社会
2 医学・医療界
3 マスコミと学会
4 司法
Ⅳ より根源的なこと
1 断種・堕胎の強制のため家族がいない
2 知覚麻痺で失明することがある
3 人権の森
Ⅴ 環境法のありかた
第5章 基本法を創るもの 基本法が創るもの
I 公害対策基本法
1 公害対策基本法制定に至る経緯
2 公害対策基本法の立法作業
3 経済調和条項
Ⅱ 公害対策基本法の改正
1 公害対策基本法の改正作業
2 公害対策基本法の改正
3 経済調和条項削除が及ぼすもの
Ⅲ 環境基本法
1 環境基本法制定に至る経緯
2 環境基本法の目的と理念
3 環境基本法が創るもの
第6章 生活環境から環境一般へ
I 生活環境に関する法の規定
1 公害の定義のなかの生活環境
2 生活環境の外延
3 人の生活と密接性
Ⅱ 生活環境の範囲の拡大
1 動植物の生息と生育を保護するための化学物質規制立法
2 水生生物を保全するための環境基準・規制基準
3 都市景観を生活環境として法律上保護に値すると解した裁判例
Ⅲ 生活環境から環境一般へ
1 生活環境における保護対象を広げようとする学説
2 一般にされている環境の定義
3 環境の定義の構成要素
4 環境の定義の試み
第7章 環境の保全
―― 基本理念における環境と経済
I 環境の保全についての基本理念
1 基本理念に至る経緯
2 基本理念と14条の施策策定の指針
3 下位の基本法の基本原則
4 実施法の位置づけ
Ⅱ 基本理念(1)における環境の類型
1 環境基本法3条の構造
2 恵み豊かな環境
―― 基本理念(1)における環境の第1類型
3 人類の存続の基盤としての環境
―― 基本理念(1)における環境の第2類型
4 復元力を失わないこと
Ⅲ 基本理念(2)における環境と経済の関係の展開
1 環境基本法4条の構造
2 環境と経済の「統合」
3 経済発展と経済成長
4 環境の2類型からの考察
第8章 アマミノクロウサギ訴訟
―― 開発者と反対者との対話
I アマミノクロウサギ訴訟に対する基礎的視点
1 事案の概要
2 奄美の小史
3 日本経済の状況
4 動物を原告として表示する訴状
Ⅱ 環境NGO・住民などの原告適格
1 原告・控訴人らの主張
2 鹿児島地裁の判断(平成13年1月22日)
3 福岡高裁宮崎支部の判断(平成14年3月19日)
4 私の見解
Ⅲ 自然との対話
1 原告・控訴人らのいう自然との対話
2 対話の現実
3 私の見解
第9章 農業と環境を考える視点
Ⅰ 農業が環境に与える影響
1 農薬と肥料の使用
2 遺伝子組換え生物の使用
Ⅱ 環境が農業に与える影響
1 農業就労者への影響
2 土壌への影響
Ⅲ 農業と環境を考える4つの視点
1 自然の復元力の限界
2 生物の多様性
3 ゼロにできないリスクの和を最小にするという考えかた
4 農業のもつ正の外部性
あとがき
索 引
初出一覧