大学出版部協会

 

 「辺境」からのナショナリズム形成インドネシア国家と西カリマンタン華人

インドネシア国家と西カリマンタン華人 「辺境」からのナショナリズム形成

A5判 336ページ 上製
定価:5,800円+税
ISBN978-4-7664-2386-0 C3022
奥付の初版発行年月:2017年02月 / 発売日:2017年02月下旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
この大学出版部の本一覧
在庫あり

内容紹介

▼ふたつの国家に翻弄された西カリマンタン華人の60年の歴史を辿る
 本書が対象とするのは、インドネシアの一地域ではあるが、ジャワ島やバリ島といった比較的知られた地域ではなく、カリマンタン島西部という、いわば「辺境」である。西カリマンタンは、インドネシア国家とどのような関わりを持ってきたのか。
 この地域は元来、インドネシアのナショナリズムの中心であったジャワ島とは全く異なる歴史的背景を持つ。そのような別個の社会がインドネシアという国家の一部になっていく過程は波乱に満ちたものであった。
 またこの地域に暮らす華人たちは、インドネシアと中国というふたつの国家に翻弄されてきた。その60年の歩みを辿り「辺境」に暮らす民衆の視点から歴史を考える。

著者プロフィール

松村 智雄(マツムラ トシオ)

早稲田大学アジア太平洋研究センター助手。
2006年東京大学教養学部卒業、2008年同大学大学院総合文化研究科修士課程修了、2013年同博士課程修了。専門は東南アジア地域研究(主なフィールドはインドネシア)、華人研究、移民研究。
主要業績:「真正のインドネシア人 Indonesia Asli」とは誰か?――2006年国籍法の制定過程と同法の革新性」『アジア地域文化研究』第6号(2010年)、「インドネシアにおける国籍法(1958年)施行課程における華人の反応――中国語紙の分析から」『南方文化』第38号(2011年)、「インドネシア西カリマンタンにおける1967年華人追放事件の経緯」『アジア地域文化研究』第8号(2012年)、「1967年「ダヤク示威行動」におけるインドネシア西カリマンタン州ダヤク社会のポリティクス」『東南アジア 歴史と文化』第44号(2015年)、“Merantau:Chinese from West Kalimantan Pursuing Success in Pasar Tanah Abang in Jakarta,”Kurasawa Akiko and William Bradley Horton(eds.) Consuming Indonesia, Jakarta: Gramedia(2015年)、“Gagalnya Perjuangan Kemerdekaan Sarawak dan G30S,”Kurasawa Akiko and Matsumura Toshio(eds.) G30S dan Asia: Dalam Bayang-bayang Perang Dingin, Jakarta: Penerbit Buku Kompas(「サラワク独立闘争の失敗と9・30事件」倉沢愛子・松村智雄編著『9・30事件とアジア――冷戦の陰で』、ジャカルタ:コンパス出版社)(2016年)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 はじめに

序章
 1 主題――本書の視角
 (1) フロンティアとしてのカリマンタン島、「辺境」について
 (2) インドネシアという国家
 (3) 国家編成の過程
 (4) 華人の「辺境性」
 (5) 「辺境」を研究する意義
 (6) 本書の主題
 2 先行研究
 (1) ナショナリズム研究
 (2) 東南アジアの華僑華人研究
 (3) 華僑華人研究の展開
 (4) 西カリマンタン華人に即した研究
 (5) 「辺境」からの視点
 3 インドネシアの華人社会
 (1) 世界最大のアクティブな華人社会
 (2) 各地域の華人社会の特徴
 4 西カリマンタン社会の基層構造
 5 二〇~二一世紀の西カリマンタン華人社会の動向
 (1) 中国ナショナリズム
 (2) 日本軍政の傷跡
 (3) インドネシア国家の影響
 (4) スハルト体制下の西カリマンタン華人
 (5) ポストスハルト期の西カリマンタン華人
 6 研究方法
 7 本書の構成

第Ⅰ章 インドネシア国家との弱いつながり
 1 西カリマンタンにおける教育とメディア
 2 自生的教育機関と中国ナショナリズムの流行
 3 中華人民共和国成立への反応
 4 シンカワンとポンティアナックの中国語教育機関
 (1) 南華中学の教育状況
 (2) ポンティアナックの高等教育機関
 5 マスメディアの状況
 6 内陸部の華人社会
 7 華人の国籍問題と外国人の商業活動制限
 (1) 華人の国籍問題
 (2) 西カリマンタンにおける国籍問題と「経済のインドネシア化」政
    策の展開
 8 一九五〇年代の西カリマンタンの繁栄
 9 一九六〇年前後の中国への帰還
 10 インドネシアに遭遇する前の西カリマンタン華人社会

第Ⅱ章 西カリマンタンの軍事化と華人
 1 西カリマンタン・サラワクの共産主義運動の概略
 2 インドネシア国軍の動き
 3 サラワク独立政体構想の展開
 (1) ボルネオ三邦独立政体構想の概要
 (2) マレーシア連邦形成への道のり
 (3) イギリスの対抗策
 (4) マレーシア構想
 (5) マレーシア成立
 (6) イギリスによる反対勢力の弾圧
 (7) インドネシアのサラワクゲリラ支援
 (8) 新村政策
 (9) シンガポールの離脱
 (10) サラワクゲリラへの九・三〇事件の影響
 (11) 西カリマンタン共産主義勢力から見たサラワクゲリラの存在
 (12) 西カリマンタンとサラワクゲリラの共闘
 (13) 九・三〇事件以降の西カリマンタンでの士気の高まり
 (14) サンガウレド国軍基地襲撃事件
 (15) 八・三〇部隊
 4 ダヤク人の蜂起と国軍
 (1) ダクヤ人エリートのポリティクス
 (2) 一九五〇年代の内陸部ダヤク村落の概況
 (3) 「華人追放事件」に至る経緯
 (4) ウライと「赤い椀」
 (5) 「示威行動」の拡大
 (6) 華人追放事件の例
 (7) 軍人の関与
 (8) 西沿岸部における暴力的事件
 5 難民の状況
 (1) 西加孔教華社総会(YBS)の設立と初期の活動(一九六六-一九
    七七年)
 (2) シンカワンにおける難民居住区
 6  「一九六七年華人追放事件」の結果
 7 共産主義運動の壊滅

第Ⅲ章 スハルト体制期の華人同化政策と西カリマンタン華人
 1 インドネシア国家の存在感の上昇
 (1) ジャワ人による統制と軍人支配
 (2) イスラム化
 2 規制と教化
 (1) 華人の企業活動への規制
 (2) 同化促進と華人の「異化」
 (3) メディア
 (4) 教育現場
 (5) 教育現場での同化政策
 3 西加孔教華社総会(YBS)に見る華人の自治
 (1) ポンティアナックの華人組織の概観
 (2) 華人同化政策とYBS
 (3) Bakom-PKBの活動とYBS
 (4) 一九八〇年国籍証明書発行とYBS
 (5) 国籍付与の施行過程
 4 一九八七年サンバス県議会選挙
 (1) 選挙キャンペーンの風景
 (2) 選挙結果
 5 黄威康の運動
 (1) 西カリマンタンの華人の伝統宗教の概要
 (2) 黄威康の活動の経緯
 6 西カリマンタン華人のジャカルタへの移動
 (1) 西カリマンタン華人の移動パターン
 (2) 一九七〇-九〇年代のタナアバン
 (3) 二〇〇〇年代以降のタナアバン
 (4) グロドックの西カリマンタン華人
 7 同化政策のもとで

第Ⅳ章 「改革の時代」の西カリマンタン華人
 1 一九九八年ジャカルタ五月暴動の衝撃
 2 ジャカルタにおける西カリマンタン出身華人の結束
 3 西カリマンタン華人の政治参加
 4 華人ハサン・カルマンのシンカワン市長就任
 5 西カリマンタンの汎華人組織
 (1) 「ダヤク慣習協会」と「ムラユ文化慣習協会」
 (2) 「中華文化慣習協会」
 (3) 建物による民族性の表出
 6 民族対立の脅威
 (1) 「一七番路地事件」(ポンティアナック、二〇〇七年)
 (2) 「龍の柱」事件(シンカワン、二〇〇八-二〇一〇年)
 (3) ハサン・カルマン筆禍事件(シンカワン、二〇一〇年)
 7 「ティダユ」概念による「インドネシア性」の表出
 8 台湾との紐帯
 9 ジャカルタの西カリマンタン出身者コミュニティーと元宵節の祝祭
 (1) ポストスハルト期の華人の宗教実践に起こった変化
 (2) タトゥン行列は誰が統括すべきか
 10 多様なシンカワン表象を観察する――映画に見るポストスハルト
    期の華人
 (1) 分析対象とする映画三編の紹介
 (2) 非華人フィファ・ウェスティ監督の視点
 (3) 『我愛你インドネシア』(二〇〇四年)
 (4) 『バッパオ・ピンピン』(二〇一〇年)
 (5) シンカワン華人監督による『シンピン島の夕暮れ』(二〇一二
    年)

終章
 1 各章の要点整理
 2 「辺境」について
 3 同化政策と西カリマンタン華人

 あとがき
 略語一覧
 参考文献


一般社団法人 大学出版部協会 Phone 03-3511-2091 〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目14番13号 メゾン萬六403号室
このサイトにはどなたでも自由にリンクできます。掲載さ>れている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
当協会 スタッフによるもの、上記以外のものの著作権は一般社団法人大学出版部協会にあります 。