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植物の世代交代制御因子の発見

遺伝子から探る生物進化
植物の世代交代制御因子の発見

四六判 190ページ 並製
価格:2,420円 (消費税:220円)
ISBN978-4-7664-2297-9 C3345
奥付の初版発行年月:2016年02月 / 発売日:2016年02月下旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

▼私が植物の発生進化を志すようになった理由(わけ)
私はつたない英語でABCモデルの提唱者の一人であるボーマン博士に自分を売り込んだ。「こんど、オーストラリアに研究室をもつと聞いたのですが、新しい研究室にヒメツリガネゴケの研究者なんていりませんか」「“How about me ? ”(私なんかどうですか)」

1980年代以降分子発生遺伝学が進展するなか、生物の形づくりにかかわる重要な遺伝子(発生遺伝子)がいくつも発見され、さらに進化的に離れた形が異なる生物間でも共通の発生遺伝子によってその形づくりが制御されていることがわかった。ここに発生進化学(いわゆる「エボデボ」)が誕生した。生物が共通にもつ発生を司る遺伝子、すなわち発生遺伝子に着目してその機能や発現を異なる生物間で比較すれば、生物が進化の過程で異なる形をもつようになった理由も説明できるのではないかと期待された。<「はじめに」より>

著者プロフィール

斎藤 成也(サイトウ ナルヤ)

1957年生まれ。テキサス大学ヒューストン校生物学医学大学院修了(Ph.D.)。現在は国立遺伝学研究所教授。おもな著書に『DNAから見た日本人』(ちくま新書)、『ゲノム進化学入門』(共立出版)、『Introduction to Evolutionary Genomics』(Springer)、『日本列島人の歴史』(岩波ジュニア新書)などがある。

塚谷 裕一(ツカヤ ヒロカズ)

1964年生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、博士(理学)。現職は東京大学大学院理学系研究科教授。岡崎統合バイオサイエンスセンターおよび放送大学客員教授も努める。おもな著書に、『漱石の白くない白百合』(文藝春秋)、『変わる植物学、広がる植物学』(東京大学出版会)、『スキマの植物図鑑』(中公新書)など。趣味は、植物に関するさまざまなこと、エッセイ書き、おいしいもの探索など。

高橋 淑子(タカハシ ヨシコ)

1960年生まれ。京都大学理学研究科博士課程修了(理学博士)。現在は京都大学大学院理学研究科生物科学専攻教授。おもな訳書に『ギルバート発生生物学』(監訳、メディカル・サイエンス・インターナショナル出版)がある。趣味は歌(合唱)。大阪フィルハーモニー合唱団所属。

榊原 恵子(サカキバラ ケイコ)

1973年生まれ。総合研究大学院大学にて博士(理学)取得。山口県立萩高等学校常勤講師、広島大学大学院理学研究科日本学術振興会特別研究員(PD)、オーストラリア・モナシュ大学リサーチフェロー、科学技術振興機構 ERATO長谷部分化全能性プロジェクト技術参事、東京大学大学院理学系研究科助教などを経て、現在は金沢大学男女共同参画キャリアデザインラボラトリー博士研究員。専門は植物の発生進化。

上記内容は本書刊行時のものです。

【監修者】
斎藤成也(さいとう・なるや)
国立遺伝学研究所教授。

塚谷裕一(つかや・ひろかず)
東京大学大学院理学系研究科教授。

高橋淑子(たかはし・よしこ)
京都大学大学院理学研究科生物科学専攻教授。

【著者】
原恵子(さかきばら・けいこ)
金沢大学男女共同参画キャリアデザインラボラトリー博士研究員。

目次

第1章 発生進化学との出合い
 1.1 ジェネラリストをめざした広島大学総合科学部
 コラム1 分子系統学
 1.2 植物の発生進化研究をしよう!―― 疾風怒濤の進学先探し
 コラム2 次世代シーケンサー
 コラム3 花器官形成ABCモデル

第2章 発生進化研究モデル
―― ヒメツリガネゴケの誕生 ――
 2.1 基礎生物学研究所での研究三昧
 2.2 ヒメツリガネゴケの名付け親になる
 2.3 ヒメツリガネゴケ研究始動
 2.4 相同組換えが容易とは
 2.5 ヒメツリガネゴケに有用物質をつくらせる
 2.6 発生遺伝子をクローニングできるようにすること

第3章 表現型のちがいを信じてもらうには 
―― 仮根分化を制御するPphb7 遺伝子の発見 ――
 3.1 陸上植物共通のホメオボックス型転写因子HD-Zip遺伝子
 3.2 緑の仮根
 3.3 顕微鏡技術を学ぶ
 3.4 仮根のアトラスをつくれ
 3.5 仮根、発生進化のモデルとなる

第4章 高校教師になる

第5章 コケ植物研究のメッカ、広島大学へ
 5.1 広島大学へ再び ―― そこはパラレルワールドへの入り口だった
 5.2 ヒメツリガネゴケは変わりもの?
 5.3 閉鎖果 ―― ヒメツリガネゴケの歩んだ道
 5.4 両立は不可能

第6章 KNOX1遺伝子研究 
―― 10年をかけてたどりついたその先は ――
 6.1 茎葉形成遺伝子は単相と複相で共通か?
 6.2 KNOX1遺伝子研究再び ―― 遺伝子ネットワークを比較する
 6.3 KNOX1遺伝子は胞子体共通の分裂組織維持遺伝子
 6.4 KNOX遺伝子は緑色植物共通の複相遺伝子

第7章 新天地メルボルンでの研究生活
 7.1 新天地での悪戦苦闘
 7.2 遺伝子重複がもたらしたもの

第8章 リプログラミングの謎に挑む
 8.1 ERATO長谷部分化全能性プロジェクト
 8.2 技術参事という仕事
 8.3 Researching manager
 8.4 ライフムービー社、研究成果を可視化する

第9章 世代交代の制御因子の発見
 9.1 世代交代因子の発見のきっかけになったのは
 9.2 論文執筆と人生初のプレスリリース

第10章 植物は進化の実験場
 10.1 次の獲物を求めて
 10.2 植物は進化の実験場

おわりに
参考文献
索  引


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