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TPPによる所得増加への道筋北海道経済の多面的分析

北海道経済の多面的分析 TPPによる所得増加への道筋

A5判 344ページ 上製
価格:4,620円 (消費税:420円)
ISBN978-4-7664-2161-3 C3033
奥付の初版発行年月:2014年08月 / 発売日:2014年08月下旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

TPP締結による域際・国際取引の拡大によって、地域の所得を増加させる方策を紹介する。

付加価値、所得移転、域際収支、産業構造、産業連関、生産性、国際貿易という7つの分析視角から、北海道経済を多面的に検討。経済学の基本的な分析手法を用い、そのアプローチは他地域にも適用可能。

▼国際経済学の分析法を用いて北海道経済の構造を客観的に把握するとともに、貿易自由化(TPP)の中で道民全体が経済的な豊かさを得られる方策を提言する。

▼TPPによる生産性と所得の上昇を北海道内に波及させる道筋を2つ示します。1つは、農産物、観光、情報・通信など、北海道が比較優位を有する産業の移出を拡大させることです。もう1つは、道外取引を行う企業の数を増やすことや、外資系企業を道内に誘致することなどを通じて、道内の生産性を上昇させることです。

著者プロフィール

遠藤 正寛(エンドウ マサヒロ)

慶應義塾大学商学部教授
経歴 1991(平成3)年慶應義塾大学商学部卒業、1996(平成8)年慶應義塾大学大学院商学研究科後期博士課程単位取得退学、同年小樽商科大学商学部助教授、1999(平成11)年慶應義塾大学商学部助教授、2000(平成12)年博士(商学)(慶應義塾大学)、2006(平成18)年慶應義塾大学商学部教授。2001(平成13)年パリ政治学院客員教授、2003(平成15)年-2005(平成17)年イェール大学経済成長センター客員研究員を兼務。
専攻 国際経済学
著書 『地域貿易協定の経済分析』東京大学出版会、2005(平成17)年、『国際経済学』(阿部顕三との共著)有斐閣、2012(平成24)年。他論文多数。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 序 文

第1章 付加価値:2000年代における総生産・所得の変動とその要因
 第1節 低迷した北海道の総生産と所得
     実質総生産からの説明
     1人当たり名目所得からの説明
 第2節 北海道の域内総生産
     県内総生産の定義
     生産面から見た県内総生産
     生産面と支出面の関係
     支出面から見た県内総生産
 第3節 北海道の住民所得
     県内総生産から県民所得への調整
     県民所得の分配
     都市部と地方部における所得分配の変化
 第4節 全国と比べた1人当たり総生産・所得の推移
     札幌市を除く北海道の総生産・所得
     民間・政府活動の市場との関わり
     札幌市の総生産・所得
 第5節 純生産変化の要因分解
     公共投資減少と北海道経済
     要因分解の方法
     就業者1人当たり域内純生産と域内就業者比率
     国内純生産の変化
     道内純生産の変化

第2章 所得移転:経常・資本移転による所得再分配の規模と比較
 第1節 経常・資本移転による所得再分配の把握
     経常移転と資本移転
     道民経済計算における経常・資本移転
     北海道への経常・資本移転の推移
     所得再分配の指標としての移転収支の長所と短所
     純所得移転額の試算
 第2節 所得再分配の規模の比較
     道府県間の比較
     アメリカ州間の所得移転額
 第3節 県内経済のマクロ恒等関係
     県民可処分所得における経常・資本移転の意味
     貯蓄・投資バランスと経常県外収支の一致
     県外資産の購入
 第4節 マクロ経済変化の府県との比較
     県民可処分所得の構成の変化
     県民貯蓄の変化
     貯蓄・投資バランスの変化

第3章 域際収支:国際収支統計に基づいた域際収支統計の作成と解釈
 第1節 国際収支統計
     国際収支統計の主要項目と複式計上の原理
     貿易収支・サービス収支・第1次所得収支
     第2次所得収支・資本移転等収支
     金融収支
 第2節 域際収支統計の作成
     国際収支統計と県民経済計算の対応
     域際収支統計の項目別取引内容
 第3節 北海道の域際収支統計の概要
     北海道の域際収支
     北海道の域際収支の推移
     北海道と日本の部門別域際収支
     貿易・サービス収支と県内総生産の関係

第4章 産業構造:生産要素から考える道内産業構造と経済政策
 第1節 北海道の産業構造の変遷
     総生産の産業別比率
     就業者の産業別比率
 第2節 道内の生産要素量からの説明
     モデルの設定
     数値例
     分析結果へのコメント
     北海道経済への適用
 第3節 製造業が雇用を提供できなかった要因
     3産業3生産要素モデル
     農業生産技術の変化
     資本量の増加
     製造業と所得の関係
     所得増加のための経済政策

第5章 産業連関:産業連関表から見る道内外の産業・地域関係
 第1節 3部門モデルによる北海道産業連関表
     取引基本表の見方
     国内各地域の域外取引
     最終需要増加の生産への波及効果
     生産と粗付加価値に及ぼす影響
 第2節 北海道の産業・地域連関
     生産誘発効果と粗付加価値誘発効果の産業別比較
     北海道内6地域間の生産連関
     道内公共事業予算減少の影響
     CGEモデルと比較した産業連関分析の短所
 補 論 生産誘発額の導出方法
     波及効果の具体例
     行列による生産誘発額の計算
     逆行列係数の意味

第6章 生産性:財務諸表を用いた道内外企業の全要素生産性の計算
 第1節 生産性の計測方法
     労働と資本への付加価値の分配
     労働生産性の計算
     生産関数を用いた全要素生産性の計算
     生産性指数を用いた全要素生産性の計算
 第2節 北海道企業の生産性
     データの概要
     全国と北海道の生産性指数の推移
     産業調整をした場合の生産性指数の推移
     北海道経済における外資系企業の意義
 補 論 分析方法の詳細
     生産性指数の計算式
     平均的企業の生産性指数の計算方法
     財務諸表と事業年度に関する留意点
     分析対象企業の選択
     ソースコード
     日経NEEDS一般企業財務データの利用項目

第7章 国際貿易:輸入制限の経済分析と米・生乳取引への応用
 第1節 貿易政策の余剰分析
     資源配分効果
     厚生効果
     輸入関税と生産補助金の効果
     産業保護の発動に関する留意点
     輸入関税と生産補助金の選択に関する留意点
 第2節 輸入の拡大:米の事例研究
     日本の米市場のモデル化
     政策変更の厚生効果
     生産量と消費量の変化
     総余剰の変化
     貿易自由化の影響に関するコメント
 第3節 移出の拡大:生乳の事例研究
     日本の生乳市場構造
     牛乳・乳製品の国際貿易と自由化の影響
     牛乳の域際貿易自由化の影響
 補 論 米市場の部分均衡分析に関する設定
     米生産の保護政策の概要
     2010(平成22)年産米の価格と数量
     保護政策撤廃後の生産者価格と消費者価格
     供給と需要の価格弾力性

第8章 TPP:北海道がTPP締結の利益をより多く得るために
 第1節 WTOとRTAによる貿易自由化交渉
     大国のケースにおける関税政策
     国際交渉の必要性
     RTAの余剰分析
     RTAを巡る論点
 第2節 TPPを通じた北海道経済の活性化
     TPP交渉促進への提言
     北海道の経済活性化への提言:移出
     北海道の経済活性化への提言:生産性


 参考文献
 謝 辞
 索 引
 著者紹介


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