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近代東アジア世界と憲法思想

近代東アジア世界と憲法思想

A5判 336ページ 上製
価格:7,480円 (消費税:680円)
ISBN978-4-7664-1936-8 C3032
奥付の初版発行年月:2012年04月 / 発売日:2012年04月下旬

内容紹介

西洋の文脈での「近代自然法」を必ずしも受容しなかったところに東アジアの国家・法思想の特徴があるのではないか、という試論のもと、韓国を中心とした東アジア地域の近代国家・法形成過程を分析・検証し、翻って韓国に影響を与えた近代日本の国家・法思想の位置づけを問い直す研究書。

著者プロフィール

國分 典子(コクブン ノリコ)

筑波大学人文社会系教授。
法学博士(Universität Erlangen-Nürnberg)。
慶應義塾大学大学院法学研究科公法学専攻後期博士課程単位取得退学。
専門領域:比較憲法(韓国憲法)、法思想史。
著書に『アジアの憲法入門』(共編、日本評論社、2010年)、『市民生活の自由と安全―各国のテロ対策法制』(共著、成文堂、2006年)、『東アジアにおけるアメリカ憲法』(共著、慶應義塾大学出版会、2006年)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はしがき


序 近代国際社会と東アジア


第一章 世界観転換に伴う東アジア的特徴
   一、問題の視角
   二、西洋の世界観――自然概念
     1、自然の諸概念
     2、古代ギリシアにおける「自然」の問題
     3、キリスト教と「自然」
     4、古代ギリシアとキリスト教の「自然」の連関
   三、東アジアにおける近代化において持ち込まれた自然の問題
     1、東アジアの自然観と国際法
     2、中国における進化論の受容
     3、日本における進化論の受容
     4、朝鮮/韓国における受容
   四、東アジアにおける進化論の機能


第二章 日本における進化論と国法学の連関性
   一、日本の憲法思想と進化論
     1、加藤弘之
     2、有賀長雄
   二、進化論と国家人格
     1、穂積八束
     2、美濃部達吉
     3、小結
   三、進化論と道徳的国家観
   四、おわりに――日本における法実証主義的国法学受容の意義


第三章 朝鮮開化期における人権思想の継受と国家観の形成
   一、はじめに
   二、開化思想にみられる人権理解
     1、朴泳孝の人権論
     2、兪吉濬の人権論
     3、徐載弼の人権論――独立新聞の論説
     4、小結
   三、人権論のその後の展開
   四、朴泳孝・兪吉濬・徐載弼の国家観念の検討
   五、補論――兪吉濬の『政治学』とラートゲンの『政治学』
     1、国家概念について
     2、歴史的考察について
     3、社会契約論と兪吉濬
     4、おわりに


第四章 大韓帝国から大韓民国へ
   一、韓末の政治・社会状況
   二、韓国末の法制
     1、「洪範十四条」と「大韓国国制」
     2、1894年以降の法制
     3、小結
   三、愛国啓蒙運動における国体・政体の議論
   四、大韓民国臨時政府の成立と趙素昴の思想
   五、おわりに――君主制から共和制へ


第五章 1905-1910年の韓国留学生雑誌における国家・法の思想
   一、はじめに
   二、留学生団体とその雑誌
     1、日本派遣留学生の状況
     2、各留学生団体の活動
   三、留学生団体雑誌にみる立憲国家の理念   
     1、国家に関する記述
     2、憲法に関する叙述
     3、法に関する叙述
     4、権利自由に関する叙述
     5、小結
   四、留学生団体発行雑誌の位置づけ
     1、韓国内の状況との比較
     2、自然法論の理論的基盤
     3、自然法論と有機体説、進化論
     4、梁啓超の影響
     5、小結
   五、おわりに


第六章 日本経由でのドイツ国法学受容
   一、大韓帝国におけるドイツ国法学の導入
   二、初期の憲法教科書と日本の影響
     1、初期の憲法関連著作
     2、兪致衡『憲法』と穂積八束
     3、金祥演『憲法』と趙聲九『憲法』
   三、法学的国家論の外にあるもの
   四、国家観にみられる国家目的の議論


第七章 大韓民国臨時政府の憲法思想
   一、はじめに
   二、大韓民国臨時政府と三均主義
   三、三均主義思想の内容
     1、伝統思想との結合
     2、社会民主主義と民族主義
   四、趙素昴の経歴と思想的背景
   五、三均主義の思想的特徴
   六、おわりに


第八章 近代憲法の思想基盤――第一共和国憲法制定に至る法思想史的背景
   一、はじめに   
   二、大韓民国の成立過程   
   三、憲法案の作成と兪鎮午   
   四、憲法制定の基本精神   
   五、兪鎮午の理論
     1、兪鎮午の民主主義観
     2、兪鎮午草案における民主主義論の具体化
     3、兪鎮午案と憲法制定過程での論議
     4、小結
   六、第一共和国の憲法思想の歴史的背景と韓国憲法思想の内在的特徴
   七、おわりに
   関連資料
     第一共和国憲法関連草案
     1、第一段階憲法草案
     2、司法部法典編纂委員会に提出された憲法草案
     3、国会憲法委員会の基準案になった案
     4、法典編纂委員会憲法草案
     5、国会憲法起草委員会から本会議に移送された憲法草案
     6、第一共和国憲法


終章 東アジアにおける近代と現代
   一、進化論的世界観の受容と東アジアにおけるナショナリズムの動き
   二、中国・韓国における立憲国家形成の動き
   三、東アジアにおける近代国家形成の共通性
   四、第二次世界大戦後の状況
   五、ナショナリズムと人権
   六、おわりに――東アジアにおける課題


事項・人名索引


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