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身体医文化論 III腐敗と再生

腐敗と再生 身体医文化論 III

B7 422ページ 並製
価格:4,620円 (消費税:420円)
ISBN978-4-7664-1120-1(4-7664-1120-X) C3022
奥付の初版発行年月:2004年11月 / 発売日:2004年11月上旬

内容紹介

「身体の発見」をめぐる研究史の中で、〈観念/肉体〉〈個人・社会><文系/理系>の区別は、一見対立項に見えながら、実際には繋がり、重なり、逆転する。そして、この""""連接・重層・逆転""""は、今日、あらゆる知の現場で、不断に起こっている現象であり、好むと好まざるとに関わらず我々はそれを意識し、自らの知の在り方を再考せざるを得ない。身体という場で、集団という場で、そして、学問という場においても、かつてあったパラダイムの変更が不可避なものとなっているのである。
 本書のテーマ「腐敗と再生」もまた、身体、医、文化のあらゆる局面に見出され、しかもこの主題系もまた”連接・重層・逆転""""をその性格とする。身体、医、文化という場面において、腐敗は再生へ(再生は腐敗へ)と変転し、腐敗は再生を(再生は腐敗を)包容し、腐敗と見えたものに再生の美が(再生と見えたものに腐敗の醜が)宿るのである。


小菅隼人(こすげ はやと)
1962年生まれ。慶應義塾大学理工学部助教授
慶應義塾大学文学部卒、慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学
専門:英文学、演劇学、英国ルネサンス演劇
主要業績:「『ここで座り、考え込む』—ニコラス・ユーダルと〈瞑想的モノローグ〉の成立について」(『演劇論の現在』白凰社、1999年)、「シェイクスピア『ハムレット』」(『ベスト・プレイズ』白凰社、2000年)〔翻訳・解説〕、「表われる内面」(石塚久郎・鈴木晃仁編『身体医文化論—感覚と欲望』慶應義塾大学出版会、2002年)。

Geoffrey E. R. Lloyd(G. E. R. ロイド)
1933年生まれ。ケンブリッジ大学ダーウィンコレッジ学寮長(1989-2000)
ケンブリッジ大学卒
専門:古代哲学・科学史
主要業績:Adversaries and Authorities: investigation into ancient Greek and Chinese science(Cambridge, 1996), Magic Reasons and Experience: studies in the origin and development of Greek science(Cambridge, 1979)

齋藤健太郎(さいとう けんたろう)
1964年生まれ。京都産業大学経済学部専任講師
慶應義塾大学卒、ケンブリッジ大学大学院博士課程修了Ph.D.
専門:比較経済史・労働経済論
主要業績:「技能・徒弟制・熟練供給—戦間期イギリスにおけるトゥールメーカーを事例にして」(『社会経済史学』68巻1号、2002年)、「イギリス労使関係史の諸論点—労働史研究における『危機』と『未来』」(『三田学会雑誌』95巻3号、2002年)

William Snell(ウィリアム スネル)
1959年生まれ。慶應義塾大学文学部助教授
英国ロンドン大学キングスカレッジ校大学院修了M.A.
専門:1525年以前の英文学、英語学、ヨーロッパ文学
主要業績:""""Chaucer's Pardoner's Tale and Pestilence in Late Medieval Literature.""""Studies in Medieval Language and Literature No.10(JSMES: 1995), """"A Prayer Against the Sweating Sickness: Oratio contra infirmitatem sudoris(Keio Univ. MS 120X. 432. 1)""""(『芸文研究』第73号、1998年), """"A Note on Dr. Samuel Johnson and the Reception of Chaucer in Eighteenth-Century England.""""(『日吉紀要・英語英米文学』第44号、2004年)

小池寿子(こいけ ひさこ)
1956年生まれ。國學院大學教授
お茶ノ水女子大学卒、同大学院博士課程単位取得満期退学
専門:西洋美術史
主要業績:『死者たちの回廊—よみがえる死の舞踏』(平凡社ライブラリー、1994年)、『死者のいる中世』(みすず書房、1994年)、『死を見つめる美術史』(ポーラ文化研究所、1999年)、『描かれた身体』(青土社、2002年)

伊藤進(いとう すすむ)
1949年生まれ。中京大学教養部教授
名古屋大学大学院修士課程修了
専門:16世紀フランス文学・思想
主要業績:『森と悪魔—中世・ルネサンスの闇の系譜学』(岩波書店、2002年)、『怪物のルネサンス』(河出書房新社、1998年)、『ノストラダムス 予言集』(共訳、註解、岩波書店、1999年)

吉本秀之(よしもと ひでゆき)
1958年生まれ。東京外国語大学外国語学部教授
東京大学卒、同大学院博士課程単位修得退学
専門:科学思想史
主要業績:「ロバート・ボイルの読書/引用/執筆—ボイルのマージナリアの分析」(『東京外国語大学論集』第68巻、2004年)、「ボイルとスピノザ」(『スピノザーナ』第3号、2002年)

仙葉豊(せんば ゆたか)
1947年生まれ。大阪大学言語文化部教授
大阪大学卒、同大学院文学研究科博士後期課程中途退学
専門:英文学・比較文学
主要業績:「『ロビンソン・クルーソー』と小説の生成」(沼野充義編『岩波講座 文学3 物語から小説へ』岩波書店、2002年)、「漱石と神経衰弱と退化と」(武藤浩史・榑沼範久編『運動+(反)成長—身体医文化論Ⅱ』慶應義塾大学出版会、2003年)、「クラリッサの死因—メランコリーとショックと神経と」(玉井暲・仙葉豊共編『病と身体の英米文学』英宝社、2004年)

原田範行(はらだ のりゆき)
1963年生まれ。杏林大学外国語学部教授
慶應義塾大学卒、同大学院文学研究科博士課程修了
専門:18世紀英文学
主要業績:""""Regeneration from Vanity: Johnson's Satiric Mode in The Vanity of Human Wishes""""(『英文学研究』第73号、1997年)、『図説 本と人の歴史事典』(共著、柏書房、1997年)、""""Individuality in Johnson's Shakespeare Criticism,""""Japanese Studies in Shakespeare and His Contemporaries(Delaware: University of Delaware P, 1998)、『読書の歴史』(翻訳、柏書房、1999年)、『イギリス文学と旅のナラティヴ』(共著、慶應義塾大学出版会、2004年)

鈴木美佳(すずき みか)
1962年生まれ。静岡大学人文学部助教授
東京大学卒、ロンドン大学Ph.D.
専門:英文学
主要実績:""""The 'Words I in Fancy Say for You': Sarah Fielding's Letters and Epistolary Method,""""The Yearbook of English Studies 28(1998): 196-211; """"Sarah Fielding and Reading,""""The Eighteenth-Century Novel: A Scholarly Annual ed. Albert J. Rivero, 2(2002): 91-112. AMS Press.

時実早苗(ときざね さなえ)
1947年生まれ。千葉大学文学部教授
東京教育大学大学院文学研究科修了
専門:アメリカ文学、文学理論
主要業績:Faulkner and/or Writing, Liber Press, 1986. The Politics of Authorship, Liber Press, 1996. 『ポール・ド・マン』(翻訳、法政大学出版局、2004年)

萩原眞一(はぎわら しんいち)
1954年生まれ。慶應義塾大学理工学部教授
慶應義塾大学卒、同大学院文学研究科修士課程修了
専門:英文学
主要業績:「シュタイナハ手術の影—イェイツとノーマン・ヘア」(『日吉紀要・英語英米文学』第40号、2002年)、「オルダス・ハックスリーと単為生殖のディス/ユートピア」(石塚久郎・鈴木晃仁編『身体医文化論—感覚と欲望』(慶應義塾大学出版会、2002年)

武藤浩史(むとう ひろし)
1958年生まれ。慶應義塾大学法学部教授
慶應義塾大学卒、英国ウォリック大学博士課程修了Ph.D.
専門:イギリス文化・文学
主要業績:『運動+(反)成長—身体医文化論Ⅱ』(共編著、慶應義塾大学出版会、2003年)、『ロレンス文学鑑賞事典』(共編著、彩流社、2002年)

小菅信子(こすげ のぶこ)
1960年生まれ。山梨学院大学法学部助教授
上智大学卒、同大学大学院博士後期課程修了満期退学
専門:近現代史
主要業績:『戦争の記憶と捕虜問題』(共編著、東京大学出版会、2003年)、The Non-religious red cross emblem and Japan"""", The International Review of the Red Cross, No. 849, March 2003、「<戦死体>の発見—人道主義と愛国主義を抱擁させた身体」(石塚久郎・鈴木晃仁編『身体医文化論—感覚と欲望』(慶應義塾大学出版会、2002年)

中村哲子(なかむら てつこ)
1961年生まれ。日本医科大学医学部助教授
慶應義塾大学卒、同大学大学院、及び、ノッティンガム大学大学院M.A.、慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学
専門:英文学
主要業績:「乳癌を病むドゥラクール子爵夫人、そして女の欲望—マライア・エッジワースの『ベリンダ』(1801年)をめぐって」(石塚久郎・鈴木晃仁編『身体医文化論—感覚と欲望』(慶應義塾大学出版会、2002年)、「すれ違う意思と会話の変貌—戯曲David Mamet, Oleanna」(斉藤兆史編『英語の教え方学び方』東京大学出版会、2003年)

梅澤一夫(うめざわ かずお)
1946年生まれ。慶應義塾大学理工学部教授
東京大学理学部卒、マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了Ph.D.
専門:生化学
主要業績:シグナル伝達阻害物質の探索と応用が主な研究テーマ。約300編論文を発行。最近、強力な抗癌剤を発見し、薬剤として開発するために、2004年、大学発ベンチャー企業の株式会社シグナル・クリエーションを設立

金子洋之(かねこ ひろゆき)
1954年生まれ。慶應義塾大学文学部助教授(生物学)
熊本大学卒、名古屋大学大学院理学研究科分子生物学専攻博士課程単位取得退学
専門:発生生物学
主要業績:Acellularity of starfish embryonic mesenchyme cells as shown in vitro. H. Kaneko et al. Development 109: 129-138(1990), Coelomic pouch formation in reconstructing embryos of the starfish Asterina pectinifera, Tamura et al., Develop. Growth and Differ 31: 567-575.「私のおすすめ実験生物 イトマキヒトデ Asterina pectinifera」(『細胞工学』第22号、2003年)

藤井千枝子(ふじい ちえこ)
1964年生まれ。慶應義塾大学看護医療学部専任講師
専門:基礎看護・遺伝学
主要業績:Association between polymorphism of the cholecystokinin gene idiopathic Parkinson's disease, Clin Genet, 1999.「住環境と看護」(『看護学雑誌』、2001年)、「多因子遺伝疾患の基礎知識と看護の課題」(『看護学雑誌』、2002年)、『情報科学』(共編、ヌーベルヒロカワ、2003年)


目次

 序章 腐敗と再生——身体医文化論Ⅲ 小菅隼人

第Ⅰ部 腐敗——浄化—再生
 第1章 ギリシアの医学と文化における「浄め」の曖昧さ G・E・R・ロイド(齋藤健太郎訳)

第Ⅱ部 腐敗——恐怖・忍耐・誘惑
第2章 祈祷と治療
——中世のペスト蔓延の中での感染・生き残り・死への社会文学的なアプローチ ウィリアム・スネル
 第3章 腐敗と救済——スペクタルとしての死体と腐敗 小池寿子
 第4章 フランス・バロック詩における死と再生 伊藤進
 第5章 十七世紀後半の水銀学派の腐敗/発酵理論——スターキー、ボイル、ニュートン 吉本秀之
 第6章 デカダンスあるいは腐爛について——ユイスマンス小論 谷川渥

第Ⅲ部 腐敗と再生——十七世紀から二十世紀
 第7章 メランコリーと腐敗の体内イメージ——精気と瘴気と神経と 仙葉豊
 第8章 魔女の大釜、レヴェットの洞窟——文学的表象にみる近代英国ヤブ医者群像 原田範行
 第9章 「不運な女」と「堕ちた女」——十八世紀から十九世紀の慈善と売春婦 鈴木実佳
 第10章 腐敗の意味——アメリカン・ゴシックの荒野 時実早苗
 第11章 腐敗は再生?——D・H・ロレンス、『リズム』、リズムの時代 武藤浩史

第Ⅳ部 再生——現代
第12章 切断/補綴、あるいは身体の再構成
——オットー・ディックスの一枚の絵をめぐって 萩原眞一
 第13章 泰緬鉄道の日本軍捕虜収容所における腐敗、即興、再生 小菅信子
 第14章 乳癌との闘い=再生へのプロセス——オードリー・ロードの拓いた道 中村哲子
 
第Ⅴ部 再生——科学的展開
 第15章 微生物による腐敗と再生 梅澤一夫
 第16章 細胞の機能と行動に視点をおいた形態形成の解明——ヒトデ胚の形態形成を中心に 金子洋之
 第17章 うつること——遺伝と環境とひと 藤井千枝子


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