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美術史の目的への問いイメージの前で〈増補改訂版〉

叢書・ウニベルシタス971
イメージの前で〈増補改訂版〉 美術史の目的への問い

四六判 534ページ 上製
価格:5,060円 (消費税:460円)
ISBN978-4-588-14049-5 C1310
奥付の初版発行年月:2018年04月 / 発売日:2018年04月中旬

内容紹介

ルネサンス以降、美術史はいかなる知の言説として確立されたのか。ヴァザーリによる人文主義的美術史の発明から、パノフスキー的イコノロジーの成立にいたる美学の歴史を、フロイト的「徴候」への眼差しを通じて批判的に解体する“美術史の脱構築”。バタイユやヴァールブルクを継承し、独自のイメージ人類学を実践する注目の美術史家の初期代表作に、英語版の序「悪魔祓い師」を増補して刊行。

著者プロフィール

ジョルジュ・ディディ=ユベルマン(ディディ ユベルマン ジョルジュ)

(Georges Didi-Huberman)
哲学者,美術史家。1953年6月13日生(サン=テティエンヌ,フランス)。リヨン大学で哲学の学士号を取得した後,美術史学の修士号を取得。その後,社会科学高等研究院(E.H.E.S.S.)で博士号を取得。1990年から社会科学高等研究院の助教授。日本語訳として『ヒステリーの発明──シャルコーとサルペトリエール写真図像集』(みすず書房),『フラ・アンジェリコ──神秘神学と絵画表現』『ニンファ・モデルナ──包まれて落ちたものについて』『イメージ,それでもなお──アウシュヴィッツからもぎ取られた四枚の写真』(以上,平凡社),『ジャコメッティ──キューブと顔』(PARCO出版),『時間の前で──美術史とイメージのアナクロニズム』(法政大学出版局),『ヴィーナスを開く──裸体,夢,残酷』(白水社),『残存するイメージ──アビ・ヴァールブルクによる美術史と幽霊たちの時間』(人文書院),『イメージが位置をとるとき──歴史の眼1』『受苦の時間の再モンタージュ──歴史の眼2』『アトラス,あるいは不安な悦ばしき知──歴史の眼3』(以上,ありな書房)がある。

江澤 健一郎(エザワ ケンイチロウ)

1967年生まれ。フランス文学専攻。博士(文学)。立教大学兼任講師。著書に『バタイユ──呪われた思想家』(河出書房新社),『ジョルジュ・バタイユの《不定形》の美学』(水声社)。共著書に『中平卓馬──来たるべき写真家』(河出書房新社)ほか。訳書にジョルジュ・バタイユ『有罪者──無神学大全』『ドキュマン』(以上,河出文庫),『マネ』(月曜社),『聖なる陰謀──アセファル資料集』(共訳,ちくま学芸文庫),ジル・ドゥルーズ『シネマ2*時間イメージ』(共訳,法政大学出版局)。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

悪魔祓い師(英語版の序)

提起される問い

[われわれが芸術的イメージへ眼差しを向けるとき
確信的な調子に対する問い
カント的調子、いくつかの魔術的な言葉、知の規定に対する問い
形象可能性という非常に古い要請]


第一章 単なる実践の限界内における美術史

[白い壁の面に向けられた眼差し──見えるもの、読めるもの、見えないもの、視覚的なもの、潜在的なもの
視覚的なものの要請、あるいはいかにして受肉は模倣を「開く」のか
そこでこの学問は非‑知を警戒するように理論を警戒する。特殊性という錯覚、正確さという錯覚、そして「歴史家の一撃」
そこで過去が過去を隠蔽する。不可欠な発見と思考不可能な喪失。そこで歴史と芸術が美術史を妨げにくる
第一の陳腐さ──芸術は終焉した……美術史が存在し始めてから。形而上学的罠と実証主義的罠
第二の陳腐さ──すべてが見える……芸術が死んでから]


第二章 再生としての芸術 そして理想的人間の不死性

[そこで芸術は自らの灰から再生するものとして発明された、そこで美術史は芸術とともに自らを発明した
ヴァザーリの『列伝』における四つの正当化──大公への服従、芸術の社会体、起源への訴えと目的への訴え
そこでヴァザーリは芸術家を忘却から救い、永遠の名声(eterna fama)において「名声を与える」。理想的人間の不死性に捧げられた第二の宗教としての美術史
形而上学的目的と宮廷的目的。そこで亀裂は理想と現実主義において縫合される──魔術的なメモ帳の操作
三つの最初の魔術的言葉──再生(rinascita)、模倣(imitazione)、イデア(idea)
第四の魔術的言葉──素描(disegno)。そこで芸術は統一された対象、高貴な実践、知的認識として正当化される。フェデリコ・ツッカリの形而上学。そこで美術史は自分自身のイメージに似せて芸術を創造する]

第三章 単なる理性の限界内における美術史

[ヴァザーリがわれわれに伝えた目的。単なる理性、あるいはいかにして言説はその対象を発明するのか
ヴァザーリ的定立の変貌、反定立の契機の出現──美術史が採用したカント的調子
そこでエルヴィン・パノフスキーは反定立と批判の契機を展開する。いかにして見えるものは意味を持つのか。解釈の暴力
反定立から総合へ。カント的目的、形而上学的目的。魔術的操作としての総合
第一の魔術的言葉──人文主義。そこで知の対象は知の形式となる。カント的ヴァザーリと人文主義的カント。意識の力と理想的人間への回帰
第二の魔術的言葉──イコノロジー。チェーザレ・リーパへの回帰。見えるもの、読めるもの、見えないもの。超越論的総合としてのイコノロジー的内容という概念。パノフスキーの後退
さらに遠くへ、あまりにも遠くへ──観念論的強制。第三の魔術的言葉──象徴形式。そこで感性的記号は知性的なものによって消化される。機能の適切さ、「機能の統一性」という観念論
イメージから概念へ、そして概念からイメージへ。第四の魔術的言葉──図式論。表象における総合の最終的統一性。モノグラム化され要約された「純粋な」イメージ。論理学と形而上学を強制された芸術の科学]

第四章 裂け目としてのイメージ そして受肉した神の死

[美術史の図式論と絶縁する第一の接近方法──裂け目。イメージを開くこと、論理を開くこと
そこで夢の作用は表象の箱を打ち砕く。作用は機能ではない。否定的なものの力。そこで類似は作用し、働き、転倒し、非類似化する。そこで形象化することは脱形象化することと等しくなる
夢の範例の拡張と限界。見ることと見つめること。そこで夢と徴候は知の主体を脱中心化する
美術史における観念論と絶縁する第二の接近方法──徴候。メタ心理学者パノフスキー? 問題提起から徴候の否認へ。パノフスキー的無意識は存在しない
重層決定というフロイト的範例と対峙する演繹というパノフスキー的モデル。メランコリーの例。象徴と徴候。構築された部分、呪われた部分
美術史における図像主義と絶縁して、模倣の専制と絶縁する第三の接近方法──受肉。肉と身体。二重の構造(エコノミー)──模倣の織物と「クッションの綴じ目」。キリスト教における原型的イメージと受肉の指標
徴候的強度の歴史のために。いくつかの例。非類似と塗油。そこで形象化することは形象を変貌させることと等しくなり、脱形象化することと等しくなる
美術史における人文主義と絶縁する第四の接近方法──死。ドラマとしての類似。ヴァザーリと対峙する中世の二つの芸術論──人文主義的人間と対峙する引き裂かれた主体。美術史とは錯綜の歴史である
生の類似、死の類似。キリスト教における死の構造(エコノミー)──狡知と危険。そこで死はイメージにおいて存続する。そしてわれわれはイメージの前で?]

補遺 細部という問題、面という問題

[細部という難問(アポリア)
描くこと、あるいは描写すること
事故──物質の輝き
徴候──意味の鉱脈
細部原則の彼岸]

〈付録〉内容紹介文
訳者あとがき
第二版への訳者あとがき
図版目録
人名索引


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