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事実/価値二分法の崩壊 〈新装版〉

叢書・ウニベルシタス847
事実/価値二分法の崩壊 〈新装版〉

四六判 254ページ 上製
価格:3,190円 (消費税:290円)
ISBN978-4-588-09942-7 C1310
奥付の初版発行年月:2011年06月 / 発売日:2011年06月下旬

内容紹介

大衆文化や哲学思想・社会科学などにおいて、歴史的にさまざまな形で展開され擁護されてきた「事実/価値二分法」に対して論争を挑むパトナム哲学の批判的考察。その「事実認識は客観的でありうるが、価値判断は主観的である」という根底的思想をD.ヒュームに始まりカント、デューイ、A.セン、ハーバーマスらを検証して斬新かつ独創的反論を提示し、問題の把握と理解に導く。

著者プロフィール

H.パトナム(パトナム ヒラリー)

1926年シカゴに生まれる。48年ペンシルベニア大学哲学部卒業。51年カリフォルニア大学(UCLA)で哲学博士号(Ph. D.)を取得。その後、ノースウェスタン、プリンストン、MIT などの大学で教鞭をとり、65年以降はハーバード大学哲学部教授を務め、同大学名誉教授。現代アメリカを代表する哲学者で、論理実証主義の批判的検討をはじめ、数理論理学・科学哲学・言語哲学・心身問題、さらには倫理や歴史の哲学など多方面のテーマについて、斬新なアイデアを提起し、世界の哲学界をリードしてきた。今日「科学について最も良い全体的見通しをもつ哲学者」(シュテークミュラー)と評されている。本書のほかに、『論理学の哲学』『理性・真理・歴史』『心・身体・世界』(以上、法政大学出版局)、『実在論と理性』(勁草書房)などが邦訳されている。

藤田 晋吾(フジタ シンゴ)

1941年生まれ。筑波大学名誉教授。科学哲学専攻。著書:『なぜ科学批判なのか』(勁草書房)、『意味と実在』(同)、『相補性の哲学的考察』(多賀出版)、『スラッファの沈黙』(東海大学出版会)。訳書:『ウィトゲンシュタイン全集』第7巻(大修館書店)、ダメット『真理という謎』『真理と過去』(以上、勁草書房)。

中村 正利(ナカムラ マサトシ)

1966年生まれ。元高崎健康福祉大学講師。哲学専攻。2006年7 月死去。訳書:ダメット『真理と過去』(勁草書房)。主な論文:「指示の不可測性は我々自身の言語においても生ずるか」(『科学哲学』第30号)、「大切なものは目に見えないか?──パトナムの形而上学的実在論批判」(『哲学・思想論叢』第18号)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

  序文
  序論

 第I部 事実/価値二分法の崩壊

第一章 経験主義的背景
区別は二分法ではない:分析的と総合的
事実/価値二分法の歴史
二分法の「事実」の側
論理実証的言語観の貧困

第二章 事実と価値の絡み合い
認識的価値も価値である
認識的価値と倫理的価値の違い(なぜその違いの重要性が誤解されてはならないか)
「濃い」倫理的概念
われわれはなぜ事実/価値二分法に誘われるのか
次回に……

第三章 アマルティア・センの世界における事実と価値
セン、アダム・スミス、「第二局面」の古典派経済学
倫理学と経済学
潜在能力アプローチ
結論:絡み合い再論

 第II部 合理性と価値

第四章 センの「命令主義的」出発点
価値判断は命令を含意するか?
「副次的に評価的な名辞」
倫理的議論における理由

第五章 選好の合理性について
合理的選好の理論
自律を顧慮することは本当に合理的か
理由を欲するのは合理的か
内部理由と外部理由
結論

第六章 価値はつくられるのか発見されるのか
価値評価についてのデューイの見解
ローティとデューイ
デューイの価値理論に対する還元主義的反論
真理と保証された主張可能性
要約

第七章 価値と規範
ハーバーマスの立場の簡潔な記述
「規範/価値」二分法には問題がある
バーナード・ウィリアムズの抜け道
「討議倫理学」はこの問題をかわしているか
アーペルとパースは間違った真理論を奉じている
倫理的真理についてのアーペルの説明とその難点
それにしても、なぜ人びとは価値を相対化ないし「自然化」したがるのか
結論

第八章 科学哲学者たちの価値からの逃避
結論

  訳者解説
  註
  索引


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