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科学の目で偽装を見破る食品表示を裏づける分析技術

食品表示を裏づける分析技術 科学の目で偽装を見破る

B5判 240ページ 並製
価格:3,080円 (消費税:280円)
ISBN978-4-501-62580-1 C3043
奥付の初版発行年月:2010年11月 / 発売日:2010年11月下旬

内容紹介

近年、農作物や食品の産地偽装が大きな社会問題となっており、食品の安全に関して世間の関心は高い。日本では分析技術の開発や情報共有のための取り組みが始まったばかりである。本書では、微量元素組成や安定同位体比などを指標とした分析技術を組み合わせることによって、どういった判別が科学的に可能か、化学分析の最前線を紹介する。また、食品の産地判別に関して、実際の判別応用例を具体的なデータを交えて詳しく解説する。

前書きなど

 食品の「安心」は,科学的評価によって決定される「安全」と,行政,食品事業者などの誠実な姿勢と真剣な取り組みや消費者への十分な情報提供による「信頼」によって構成されます。食品表示は,消費者にとって,主として「信頼」にかかわる重要な要素です。従来,表示の信憑性を確認するには,立ち入りで書類を調査する社会的検証しか手段がありませんでしたが,表示についてのJAS法の改正や種苗法改正による育成権者の保護の強化などへの対応のために,表示内容などの科学的検証としての判別技術が必要となり,品種,産地,生産履歴,遺伝子組換え,放射線照射などについての研究が行われています。現在では,一つの分析手法だけでは起源の判別や推定に対応することは難しく,複数の分析手法の組合せが必要とされており,横断的な研究会を整備することが必要と考えられていました。
 表示・起源分析技術研究懇談会は,平成20年度に「起源と表示」をテーマに2回の勉強会を開催し,参加者の関心の高さを受けて,平成20年12月に(社)日本分析化学会の13番目の研究懇談会として発足し,平成21年度からは年2回の講演会を実施しています。
 今般,当研究懇談会の事業の一環として,食品表示の信頼性を確保するための技術について網羅的に理解していただくために,本書『食品表示を裏づける分析技術』を出版することといたしました。読者が,表示の根拠となる法律などを概観したうえで,食品の表示の検証に,どのような分析技術が使用され,あるいが研究されているのかを紹介します。
 本書では,第1章で表示の法的根拠について,主にJAS規格を紹介し,他の法律についても触れています。その他の各章では,技術開発の背景(社会からの要求も含めて),技術の紹介(原理,分析方法,限界など),および得られている成果を紹介します。また,開発された技術がそのままで社会に利用されるわけではなく,方法の妥当性確認という過程を通る必要があることも説明しています。
 表示内容の科学的検証技術について理解を深められるとともに,規格や規制にかかわる技術に要求される性能についても留意されることを期待します。
 平成22年10月
 編集委員を代表して 安井 明美


目次

第1章 食品表示のルール
 1.1 JAS法に基づく品質表示基準
 1.2 加工食品の表示
 1.3 遺伝子組換え食品の表示
 1.4 有機食品の表示
 1.5 食品衛生法に基づく表示
第2章 産地判別
 2.1 総論
 2.2 元素組成
 2.3 安定同位体比
 2.4 遠紫外分光法
第3章 品種識別
 3.1 総論
 3.2 野菜
 3.3 果実
 3.4 穀類・豆類
 3.5 牛
 3.6 肉種判別
第4章 栽培履歴
 4.1 総論
 4.2 野菜・果樹・茶・キノコ・花き
 4.3 米
第5章 放射線照射履歴
 5.1 放射線照射食品とは
 5.2 EUにおける検知法開発と国際標準化
 5.3 わが国の食品照射の実施状況と検知法
 5.4 照射検知法の特徴と概要
 5.5 まとめと課題
第6章 水産物の解凍・生
 6.1 各種判別法とその原理
 6.2 可視・近赤外分光法による判別とその原理
 6.3 おわりに
第7章 水産物の養殖・天然
 7.1 魚類の一般成分と養殖・天然の判別
 7.2 脂肪酸とその変動要因
 7.3 養殖・天然判別のマーカーと脂質
 7.4 アユにおける養殖・天然判別の検討
 7.5 カンパチにおける養殖・天然判別の検討
 7.6 おわりに
第8章 遺伝子組換え農作物
 8.1 遺伝子組換え食品に対する表示制度の導入と監視
 8.2 遺伝子組換え食品の検査に利用されている技術
 8.3 標準分析法による遺伝子組換え食品の検査
 8.4 遺伝子組換え体検知における課題
第9章 アレルゲン
 9.1 食物アレルギー
 9.2 表示制度
 9.3 アレルギー食品の検知技術
 9.4 厚生労働省通知検査法
 9.5 アレルギー食品新規検査技術の開発状況
 9.6 おわりに
第10章 混合割合
 10.1 そば粉の配合割合を推定する種々の方法
 10.2 アミノ酸パターン類似率
 10.3 蛍光指紋
第11章 判別技術の妥当性確認
 11.1 妥当性確認とは
 11.2 測定法の妥当性確認の必要性
 11.3 妥当性確認実施上の判別技術の分類
 11.4 妥当性確認のガイドライン
 11.5 定性法の妥当性確認
 11.6 定量法の妥当性確認
 11.7 時間的検証
付録
 1 参考図書,研究機関などのウェブページ
 2 用語集

  索引


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