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超伝導の基礎

超伝導の基礎

B5判 498ページ 並製
価格:5,500円 (消費税:500円)
ISBN978-4-501-61900-8(4-501-61900-7) C3042
奥付の初版発行年月:2002年02月 / 発売日:2002年02月上旬

内容紹介

超伝導の標準理論が確立される過程を追い解説
 超伝導現象が発見されて90年が経つ。近年,熱狂を呼んだ新しい超伝導物質の発見などがあり,現在は従来理論のうえに新しい理論が期待される時期となった。そこで,従来の標準理論が確立されていく過程を追体験するように通覧して,次の展開を啓くうえで一つの契機となるようまとめられた本である。大学院の標準的学力レベルで読めるように,数式の展開を丁寧にして,目的である追体験的通読を可能にしてある。うまく周知させれば,この分野の研究者から喜んで迎え入れられる可能性を秘めている。

前書きなど

 超伝導現象がKamerlingh-Onnesに発見されて,昨年は90周年を迎えた.この間,超伝導に関する実験的,理論的研究は飛躍的な進歩を遂げた.初期に発見された金属単体に関しては,Bardeen-Cooper-Schrieffer(BCS)理論で見事に説明されることが広く認知されているが,近年,新しい超伝導物質(希土類化合物,酸化物,フラーレン,ホウ素化合物等々)が続々と発見されてくると,従来の理論の枠内で十分であるのかという疑問も生じてきた.このような状況にある現在は,過去の理論を再検討し,新たな理論の構築へと向かう時期にさしかかっているように思われる.したがって,従来型超伝導体(conventional superconductor)の標準理論であるBCS理論が確立されていくまでの発展過程を追体験することは,これから超伝導の分野で研究を志すものにとって非常に教訓的である.
 本書は,超伝導理論の発展過程から真に基礎的な事項を厳選し,そうして取り上げたテーマについては懇切,丁寧をモットーに記述した入門書兼サブテキストである.基礎的なテーマに限定したため,強結合超伝導体の理論,不純物効果の微視的理論,近接効果やAndreev反射,酸化物超伝導体に関して提唱されてきた新理論の紹介等々興味深い事柄については割愛せざるを得なかった.しかし,そのかわりに通常の専門書では省略されている計算過程は目で追っていくだけでも理解できるくらい詳しく書いておいた.このような方法をとったのは,読者の負担を軽減するとともに,数式の導出や変形等で昏迷してしまうよりもむしろ,その式の背後に横たわる物理的描象を明確にすることへ時間を費やして頂きたいと考えたからである.また,利用される数学的基礎知識については,巻末の付録で詳細に解説してあるから,他の書物を参考にしなくても,微積分と線形代数の初歩,および量子力学と統計物理学の知識があれば,本書は必ず読破できるであろう.ここに記述されている論理的な流れ,基本的な考え方を汲み取って,そこから斬新で画期的な理論を生み出される読者の現れんことを願っている.
 体裁をみて頂ければわかるように,本書は,LATEX2εで組版されている.したがって,内容についてはもちろん,誤植があればすべて筆者の責任であることをお断りしておく.チェックは十分行ったつもりであるが,気のつかれた点など,ご指摘頂ければ幸いである.
 この本の出版にあたり,元物理工学科教授,東京電機大学名誉教授 小川信二先生には,原稿を丁寧に査読して頂きました.心より感謝します.また,いろいろの面でお世話になりました東京電機大学出版局の植村八潮氏,徳富亨氏に謝意を表します.
 最後に,本書がまがりなりにも出版に漕ぎ着けられましたのは,ゼミ等で御指導を頂きました東京電機大学名誉教授 篠原正三先生のお陰であります.ここに,厚くお礼申し上げます.

西暦2002年2月
丹羽雅昭


目次

第1章 超伝導研究史
第2章 超伝導の実験事実
第3章 超伝導の現象論I−初期の理論
第4章 超伝導の現象論II−GL理論
第5章 2種類の超伝導体の磁気的振る舞い
第6章 微視的理論への準備
第7章 超伝導の微視的理論I−BCS-Bogoliubov理論
第8章 超伝導の微視的理論II−Green関数法
第9章 超伝導体におけるトンネル効果
 付録A 複素関数概論
 付録B 特殊関数I
 付録C 特殊関数II
 付録D BCS理論で用いられる積分公式,級数公式の証明
 付録E 楕円積分と楕円関数
 付録F 単位系と物理定数表
 参考文献


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