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機構学入門

機構学入門

A5判 228ページ 並製
価格:2,750円 (消費税:250円)
ISBN978-4-501-41690-4 C3053
奥付の初版発行年月:2008年11月 / 発売日:2008年11月中旬

前書きなど

 自動車をはじめとする精巧な機械がますます容易に扱えるようになり,われわれはかつてのように「メカに強い」とか「弱い」ということを問題にしなくなった。コピー機の原理を知らなくともパネルの表示に従ってボタンを押せばコピーが取れ,オートマチックトランスミッションの複雑な構造を知らなくともアクセルを踏めば車は走り出す。複雑なメカニズムはますますブラックボックス化していく。これは確かに一般の人々にとって,機械を使いやすくする福音であろう。しかしその機械を設計し,あるいは機械を取り扱う人にとってはブラックボックスは問題となる。
 ”メカ”とは英語のMechanism(メカニズム)の略称で,機構学において学ぶのはこのメカニズムの基本的内容である。メカニズム,すなわち機構を知ることは,ブラックボックスの扉を開く第一歩となる。機構学が,機械工学を学ぶ際に基礎的かつ重要な科目の1つとなっているのは,機械がもつ機構の基本を理解することが設計上必須条件となるためである。機構学を学びその内容をより深く理解することは,技術者の出発点といってもよい。
 約2万点の部品から構成されている自動車は機械技術の集合体である。したがって,自動車を体系的に学ぶためには,機構学の基礎事項を把握する必要がある。このことは技術者にとって不可欠なばかりではなく,工学的素養を身につけるうえで重要である。
 筆者は,自動車を通じて工学的基礎の素養を育成する立場にあるが,教育対象である学生の出発点はそれぞれ異なっている。本書はそのようなさまざまな学生に対し,自動車を題材に機構学の基礎を学びやすいようにまとめた。
 第1章では機械としての自動車の意義を知り,機械が運動するときの基本である回転運動の基礎を学ぶ。第2章以降は,回転運動を基本に運動の伝達の基礎事項を順次学べるようにした。機構学に接する第一歩のために説明は簡潔にし,その内容は例題を解くことにより理解を深められるようにした。
 本書は当初山海堂より刊行されたものであるが,新たに東京電機大学出版局より刊行されることとなった。この機会に若干の補足を行い,読みやすいレイアウトとした。レイアウトにあたり多大な助力をいただいた植村八潮,石沢岳彦両氏に謝意を表す。
 終わりに,本書を引用させていただいた参考文献は巻末に記した。著者の方々に謝意を表す。
 2008年10月
 著者


目次

第1章 総論
 1.1 機械と社会
 1.2 機械
 1.3 機械の構成
 1.4 機構
 1.5 機械の運動
 1.6 運動の瞬間中心
 1.7 運動伝達の方法
 演習問題
第2章 摩擦伝動装置
 2.1 ころがり接触
 2.2 ころがり接触をする従節の輪郭
 2.3 速度比
 2.4 摩擦車
 2.5 変速摩擦伝動装置
 演習問題
第3章 歯車装置
 3.1 すべり接触
 3.2 歯形曲線
 3.3 歯車の種類
 3.4 自動車における歯車の役割
 3.5 歯車各部の名称と寸法
 3.6 インボリュート歯形のかみ合い
 3.7 歯車伝動
 3.8 変速歯車装置
 3.9 歯車列とその応用
 演習問題
第4章 巻掛け伝動装置
 4.1 ベルト伝動
 4.2 ベルト伝動による変速装置
 4.3 Vベルト
 4.4 Vリブドベルト
 4.5 歯付きベルト
 4.6 チェーン
 4.7 ロープ
 演習問題
第5章 リンク装置
 5.1 連鎖と機構
 5.2 4つの回り対偶よりなる機構
 5.3 3つの回り対偶と1つのすべり対偶よりなる機構
 5.4 2つの回り対偶と2つのすべり対偶よりなる機構
 5.5 平行運動機構
 5.6 直線運動機構
 5.7 球面運動機構
 演習問題
第6章 カム装置
 6.1 カム伝動
 6.2 カムの種類
 6.3 カム変位線図
 6.4 従節の運動とカム線図
 6.5 カムの輪郭
 演習問題
問題の解答
参考文献
付 表
索 引


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