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第2版 基礎 電子工学

第2版 初めて学ぶ
基礎 電子工学

A5判 260ページ 並製
価格:3,300円 (消費税:300円)
ISBN978-4-501-32770-5 C3055
奥付の初版発行年月:2010年09月 / 発売日:2010年09月中旬

内容紹介

電子工学の分野で特に必要とされるデジタル分野の内容を大幅に見直して改訂。電気・機械系学科の電子工学入門書としても最適。

前書きなど

 トランジスタが発明されたのは1948年のことである。以来わずか40数年の間に電子技術は今日に見るような進歩を果たし,世の中の産業技術,家庭用電化製品の様相は一変した。
 ラジオ放送は,AM(振幅変調)放送に加え,ステレオFM(周波数変調)放送が始まり,名刺ほどの大きさ,薄さのラジオ受信機で,それらの放送を山や野原あるいは電車の中でも聴けるようになった。テレビ画像は,白黒からカラーに移り,大画面で解像度の高いハイビジョンテレビ画像が見られるようにもなった。衛星テレビ放送も始まり,世界で起こった最新ニュースを瞬時に見ることができるようにもなった。
 電子技術の発達は,こうした情報・通信関係はもとより,交通や産業技術の面にも大きな変化をもたらした。それは航空機,船舶,新幹線,ものを生産する工場に見るような自動化である。そこでは,安全対策の向上と省力化を図る自働操縦装置,設計段階の作図,生産用の工作機械,組み立て・移送・ハンドリングを行う産業用ロボット,クレーン,自動倉庫などの設計から生産管理,運行にいたるまであらゆる分野に大なり小なり自動化が取り入れられている。真空管の時代では,信頼性の面から,あるいは体積,重量,消費電力の面から,こうした技術を達成させることは困難であった。このような技術は,トランジスタが発明され,それを基礎とした集積回路(IC)が開発されたことによって大きく前進した。
 半導体ICの開発・進歩に従い,信頼性が高く,小型,軽量,小消費電力の各種電子(エレクトロニクス)装置や部品が生産可能となった。と同時に,真空管の時代にすでに開発されていたデジタル・コンピュータは,ICの出現による小型,高速演算,小消費電力の高性能コンピュータへと進歩し,現代社会のあらゆる分野にそれらが応用されるようになった。電子技術が発達したおかげて,これまで単能であった機械装置に電子技術が導入され,その装置に複数の機能をもたせることも可能となった。
 計測したり制御したりする対象の物理量が温度であったり変位であったりとその違いはあるものの,このような電子技術の導入はあらゆる自動化に共通するものである。しかし,こうした計測・制御技術は,クーラー,電気炊飯器,電子ジャー,電子レンジなど,われわれの日常生活で使用している家庭用電気製品はもとより,産業生産現場で使われているロボット,NC工作機械などの諸自動機械装置類にも共通する技術である。
 本書は,上述した機械・器具の動作原理が理解できるようにとの願いをこめ,第1章で電気回路の基礎,第2章でダイオード,トランジスタを基礎とする半導体素子,第3章でオペアンプを基本とするアナログ技術,第4章でセンサと制御の基礎,そして最後の第5章でデジタル技術の入門について述べる。内容の大部分はアナログ電気・電子の基礎である。デジタル技術の入門的内容について第5章でしか述べることができなかった。アナログ・デジタルの進んだ分野についてはさらに勉強されることを望む次第である。
 本書出版に当たり,東京電機大学出版局の岩下行徳氏には大変御世話になった。ここに心より御礼申し上げる。
 1995年3月
 小川 鑛一

改訂にあたって
 本書は1995年に初版を刊行し,幸いにも第11刷と多くの読者にご愛用をいただいたものである。1995年といえば,世界で一斉にWindows95が発売された年であり,筆者はイギリスのスコットランド・アバディーン市のある大学の客員教授として半年間滞在していたことを思い出す。このとき持参したデジタルカメラのメディアは4MB〜32MBのスマートメディアであった。また,当時使用していたマッキントッシュ製ノートパソコンのフロッピーディスク(floppy disk)容量も,わずか1.2MBであった。その後,コンピュータやデジタルカメラをはじめ,多くの家電製品は発達の一途をたどり,現在のデジタルカメラのメディアはGB(ギガバイト,1MBの1000倍)の単位,コンピュータのハードディスクの容量はTB(テラバイト,1GBの1000倍)単位のものが入手可能になった。
 2010年5月にはアップル社からiPadが発売され,大人気となっている。電子メールやインターネットへの接続のほか,電子書籍の購読,地図情報の表示,辞書・辞典,ゲームなどの多彩な機能を持つ万能デジタル端末機器である。
 また,Suica,ICOCA,PASMOなどの非接触式ICカード方式による鉄道・バス乗車カードが多くのひとに普及している。これらは自動改札口に触れるだけで,あっという間に運賃決済ができ,飲食や買い物ができる機能もある。このカードを使って自動改札機をワンタッチで通過するときには,ICカードの情報を読み取ったり人の動きを感知するセンサ技術,運賃や残金を表示する電子技術,扉の開閉をする制御技術などの応用がある。そしてこれらを総合的管理するための情報処理技術など,多くの技術が用いられている。デジタル技術とアナログ技術をうまく組み合わせ,このような便利な機能を実現している。
 本書は,デジタル技術が発展・進化していくなかでアナログ量とデジタル量の違いやその基礎的な扱い,デジタルの基礎技術を十分に理解していただけるよう,内容の見直しをして改訂を行った。抵抗や論理回路などの図記号については,初版と同様に現場で使用されることが多い図記号を用いて表記している。電子工学の基礎やデジタル技術の基礎を本書で学習して頂ければ望外の喜びである。
 改訂にあたり,東京電機大学出版局の石沢岳彦氏に大変お世話になった。ここに厚くお礼申し上げる。
 2010年8月
 小川 鑛一


目次

第1章 直流回路と交流回路
 1・1 直流回路
 1・2 直流回路の応用
 1・3 交流回路
 1・4 交流回路の素子
 1・5 交流の直列回路と回路電流
 1・6 RLCの並列回路と回路電流
 1・7 交流回路の応用
  演習問題1
第2章 デジタル技術とその応用
 2・1 デジタル技術の考え方
 2・2 デジタルの量的表現
 2・3 デジタル量を利用するための具体化
 2・4 デジタル技術の活用法
 2・5 論理回路とその応用
 2・6 記憶機能と記憶回路
 演習問題2
第3章 アナログ信号とオペアンプ
 3・1 アナログ信号とアナログ技術
 3・2 オペアンプの基礎
 3・3 ダイオードとその応用
 演習問題3
第4章 センサと制御技術
 4・1 センサと電子工学
 4・2 センサと制御
 4・3 電子制御
 4・4 機械制御
 演習問題4
第5章 電子工学の応用
 5・1 トランジスタの基礎
 5・2 サイリスタ
 5・3 発光ダイオード
 5・4 電子工学の応用分野
 演習問題5
参考文献
演習問題の答
索引


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