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ワイヤレス通信

よくわかる
ワイヤレス通信

A5判 184ページ 並製
価格:2,530円 (消費税:230円)
ISBN978-4-501-32690-6 C3055
奥付の初版発行年月:2009年03月 / 発売日:2009年03月中旬

前書きなど

 はじめに
 電波を用いた通信の歴史はわずか100年程度であるものの,今日の携帯電話の普及に見られるように,その技術的進展と社会生活への影響は非常に大きなものになっている.現在もディジタル回路や信号処理技術,ネットワーク技術の発展と連動して機器の小型化,低消費電力化,そして低価格化が実現し,多くの一般ユーザにより深く浸透しつつある.あわせて,技術発展にともなって多くの新しいサービスが出現し,ワイヤレス通信システムはこれまで,主として有限資源である電波をいかに有効活用してより高速に情報を伝送するか,あるいは不安定な伝搬環境下でいかに安定した伝送品質を確保するか,という点に研究開発が注力されてきた.しかし現在は,これらの方向の研究開発とともに,ネットワーク技術との有機的な協調によるより付加価値の高いサービスシステムの研究開発が活発化している.
 このような状況の下,「いつでも,どこでも,誰とでも」つながるという形態からさらに進化して,周辺環境に組み込まれたセンサを含むコンピュータ同士が相互に接続される「何にでも」つながるという「ユビキタスネットワーク社会」が到来している.その中で,ワイヤレス通信システムの要素技術,サービスを提供するためのシステム技術は,ますます重要な位置を占めると思われる.
 システムとしての機能,性能は大きな進展を見せているものの,電波という情報を運ぶ媒体の性質やシステムを構成するそれぞれの要素技術の基本は変わらないものである.本書は技術の不変性を重視し,要素技術,システム技術の解説と説明に力点を置き,より発展した学習や将来のシステムに対する理解の助けになるように配慮した.基本的に,情報・通信系の学部生を対象として教科書を目指して執筆したものであるが,それ以外の学科や高専,専門学校の学生およびワイヤレス関連と異なる専門分野の技術者がワイヤレス関係の知識を必要とするときに参考にすることができるようにと考えている.
 本書の利用にあたって基本的な予備知識は必要ないが,高校の初年度で学ぶ三角関数,対数関数などは説明で用いている.これらに関しては付録でその基本公式を示しているので,適宜参照することにより他の書籍を参照することなく理解できる構成としている.
 本書の構成は,第1章から第6章までの前半部と,第7章から第10章の後半部に分けられる.前半部ではワイヤレス通信システムを構成する基本技術,要素技術を説明し,OFDM,MIMOなどの最新の技術に関してもその基本的な考え方を網羅するように配慮している.後半部では,前半部で説明した基盤技術上でサービスされているワイヤレス通信システムについて説明している.このとき,システム全体としての説明だけではなく,必要に応じて前半部で網羅できなかった要素技術や他の分野の技術の説明も行っている.
 本書がワイヤレス通信システムを構成している基本技術や現在のサービスを提供しているシステムの基本的な仕組みの理解の一助となり,さらに読者がより高度な専門領域への学習へと発展していくためのきっかけとなれば,その目的は充分に達したものと考えている.
 本書は執筆するにあたり,情報科学を専門とする神奈川工科大学の五百蔵重典准教授には異領域の研究者から見たコメントをいただいた.また,筆者の講義の受講生であった情報工学科の古泉壮平君には初学者の立場からの意見や誤記の指摘をもらった.東京電機大学出版局菊地雅之氏には,本書の企画とともに出版までの進捗管理,原稿のチェックをいただいた.最後になるが,ここに深い謝意を表したい.
 2009年3月
 著者しるす


目次

第1章 ワイヤレス通信の歴史と発展
 1.1 電磁気学からワイヤレス通信へ
 1.2 携帯電話の発展
 1.3 その他のワイヤレス通信システム
第2章 電波の基本的性質
 2.1 電波と周波数
 2.2 電波の伝わり方
 2.3 アンテナの基本原理
第3章 変復調方式
 3.1 変復調の目的と基本構成
 3.2 アナログ変調
 3.3 アナログ信号のディジタル化
 3.4 ディジタル変調
 3.5 位相変調波の復調
第4章 多元接続方式
 4.1 双方向通信の仕組み
 4.2 FDMA方式
 4.3 TDMA方式
 4.4 CDMA方式
 4.5 ランダムアクセス方式
第5章 信頼性確保のための技術
 5.1 基本的方法
 5.2 ダイバーシティ技術
 5.3 誤り検出と再送制御
 5.4 インタリーブ
 5.5 誤り訂正とハミング符号
第6章 高速化のための技術
 6.1 多値変調
 6.2 OFDM(直交周波数分割多重)
 6.3 MIMO
第7章 携帯電話システム
 7.1 回線交換とパケット交換
 7.2 セルの構成
 7.3 システムの基本構成と接続の仕組み
 7.4 インターネット接続
 7.5 将来動向
第8章 無線LANシステム
 8.1 無線LANの発展と使用周波数
 8.2 無線LANのアクセス方式
 8.3 セキュリティの基本技術
 8.4 無線LANのセキュリティ
第9章 衛星通信システム
 9.1 システムの原理と特徴
 9.2 システムの基本構成
 9.3 回線設計の基本
 9.4 全地球測位システム(GPS)
第10章 短近距離通信システム
 10.1 RFID
 10.2 特定小電力無線と微弱無線
 10.3 ZigBee
 10.4 Bluetooth

付録
 付録A 電波法と無線局免許
 付録B デジベル表記
 付録C フーリエ変換
 付録D 数学公式
 付録E 単位の接頭語
参考文献
索 引


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