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詳解 電力系統工学

詳解 電力系統工学

A5判 296ページ 並製
価格:3,630円 (消費税:330円)
ISBN978-4-501-11770-2 C3054
奥付の初版発行年月:2017年06月 / 発売日:2017年06月中旬

内容紹介

電力系統とは、電気を利用者へ供給するための、発電、変電、送電、配電の全てを含む電力システムのことをいう。本書は、電力系統の概要およびそれらを取り扱うための技術についてとりまとめ、近年の電力自由化における発送電分離や、スマートグリッドなどにも触れている。基礎から応用までを詳解するとともに、豊富な例題および章末問題を収録。

前書きなど

 電気は現代社会にとって不可欠なエネルギーであり,それを輸送,供給する電力系統はもっとも重要な社会インフラの1つである。
 電力系統は巨大な面的広がりを持った電気回路であるが,それにつながる発電設備や需要家までを考えれば,単なる電気回路ではなく,巨大なシステムであるといえよう。この点からも,電気回路的アプローチだけでなく,システム論的アプローチも重要となる。
 本書は,このような側面を持つ電力系統について詳しく説明している。ただ,理論だけでなく,実際の電力系統を身近に感じとってもらえるよう,写真,図などを多く使用している。
 また,電力系統を学ぶ初学者である大学学部生から,ある程度の知識を持つ大学院生までを対象に執筆したものであるが,社会において電力系統を扱う技術者にとっても十分に参考になるよう留意している。
 本書の一部は東京電機大学電気工学科で用いられたテキストを参考にしている。このテキストは故前川幸一郎教授,故広瀬淳雄教授,故荒井聰明教授により執筆されたものであることを付記するが,本書の内容については筆者が全責任を持っていることはいうまでもない。
 執筆にあたり,さまざまなご意見,資料の提供を受けた東京電力パワーグリッド,中部電力,電力広域的運営推進機関(OCCTO)の皆様,また内容について詳細なコメントをいただいた東京電機大学菅原秀雄博士に深く感謝いたします。
 また,原稿作成をサポートいただき,当初の計画通りに刊行できたのは東京電機大学出版局の石井理紗子さんのおかげです。改めて感謝いたします。
平成29年5月 筆者記す


目次

第1章 電力系統の概要
 1.1 電力系統の歴史
 1.2 交流送電と直流送電
  1.2.1 交流送電のメリット
  1.2.2 直流送電の用途
 1.3 系統連系と系統構成
 1.4 最近の電力系統の課題
  1.4.1 大規模停電事故
  1.4.2 スマートグリッド
  1.4.3 地球温暖化対策と再生可能エネルギー
  1.4.4 電力自由化
第2章 電力系統と三相回路の基礎
 2.1 電力
  2.1.1 電圧および電流の記号
  2.1.2 電力の基本式
  2.1.3 有効電力および無効電力
  2.1.4 皮相電力
  2.1.5 複素電力
  2.1.6 単位法
 2.2 対象三相交流
  2.2.1 対称三相交流電圧
  2.2.2 三相交流電流
  2.2.3 三相電力
  2.2.4 負荷のYおよびΔ結線
  2.2.5 対称三相回路の解析
 問題
第3章 変圧器
 3.1 単相変圧器の等価回路
  3.1.1 単相二巻線変圧器の等価回路
  3.1.2 単位法を用いた変圧器の等価回路
 3.2 三相変圧器
  3.2.1 単相変圧器鉄心と三相変圧器鉄心
  3.2.2 Y結線の変圧器
  3.2.3 Δ接続の変圧器
  3.2.4 平衡負荷におけるΔ-Y接続変圧器
 3.3 タップ付変圧器
 問題
第4章 送電線
 4.1 送電線概要
  4.1.1 架空送電線
  4.1.2 電力ケーブル
 4.2 線路インダクタンス
  4.2.1 直線単導体のインダクタンス
  4.2.2 往復導体の単位長インダクタンス
  4.2.3 正三角形配置の三相送電線の正相インダクタンス
  4.2.4 撚架三相送電線の正相インダクタンス
  4.2.5 多導体のインダクタンス
  4.2.6 大地帰路インダクタンス
 4.3 線路の静電容量
  4.3.1 正負等量の平行な線電荷による電位
  4.3.2 2条の平行導体間の静電容量
  4.3.3 単一導体の対地容量
  4.3.4 ケーブルの静電容量
 4.4 送電線の等価回路
  4.4.1 平衡三相送電線のインピーダンス,アドミタンス
  4.4.2 平衡三相送電線の等価回路
 問題
第5章 潮流計算
 5.1 対称三相回路の単位法による解析
 5.2 潮流計算と交流回路計算
  5.2.1 ノードアドミタンス行列
  5.2.2 電力方程式
  5.2.3 Newton-Raphson法
  5.2.4 潮流計算へのNewton-Raphson法の適用
 5.3 直流法潮流計算
 問題
第6章 同期発電機
 6.1 同期機の基本構造
 6.2 同期機の基本式
  6.2.1 電機子の誘導起電力
  6.2.2 電機子反作用
  6.2.3 端子電圧
  6.2.4 磁気突極効果
  6.2.5 電力公式
 6.3 無限大母線に接続された発電機の運転
  6.3.1 電力方程式
  6.3.2 有効電力の制御
  6.3.3 同期化力と定態安定極限電力
  6.3.4 無効電力の制御
  6.3.5 同期機の各種運転
 問題
第7章 故障計算
 7.1 対称故障
  7.1.1 RL直列回路の過渡現象
  7.1.2 同期機の短絡電流とリアクタンス
  7.1.3 負荷電力を供給している同期機の誘導起電力
 7.2 対称座標法
  7.2.1 対称分から不平衡ベクトルの合成
  7.2.2 非対称ベクトルの対称分
  7.2.3 対称分による電力の表現式
  7.2.4 対称分インピーダンスと対称分回路網
  7.2.5 無負荷発電機の対称分回路
  7.2.6 回路要素の対称分インピーダンス
  7.2.7 電力系統の正相,逆相および零相回路
 7.3 非対称故障
  7.3.1 無負荷発電機の地絡故障
  7.3.2 無負荷発電機の線間短絡故障
  7.3.3 無負荷発電機の線間短絡接地故障
  7.3.4 電力系統の非対称故障
 問題
第8章 安定度
 8.1 安定度の定義
  8.1.1 電力系統の保護システム
  8.1.2 安定度の種類
 8.2 発電機の運動方程式
  8.2.1 動揺方程式
  8.2.2 単位慣性定数の変換
  8.2.3 発電機群の縮約
 8.3 電力相差角方程式
 8.4 定態安定度―同期化力係数―
 8.5 等面積法による過渡安定度判定
  8.5.1 等面積法
  8.5.2 等面積法の応用
  8.5.3 過渡安定度の向上対策
 問題
第9章 電力系統における有効電力と周波数の関係
 9.1 周波数制御の必要性
 9.2 有効電力と周波数の関係
  9.2.1 発電ユニットのガバナ制御
  9.2.2 負荷の周波数特性
  9.2.3 系統の周波数特性
 9.3 連系系統の周波数―潮流特性
 9.4 負荷周波数制御
  9.4.1 単独系統
  9.4.2 連系系統
  9.4.3 連系系統における周波数制御の例
 9.5 緊急状態における周波数維持対策
  ―不足周波数リレー(UFR)―
 問題
第10章 電力系統における無効電力と電圧の関係
 10.1 無効電力と電圧の関係
 10.2 電力円線図
 10.3 電圧変動の感度
 10.4 無効電力の供給源
  10.4.1 発電機
  10.4.2 電力用コンデンサ,分路リアクトル
  10.4.3 同期調相機
  10.4.4 静止型無効電力補償装置
 10.5 電圧無効電力制御
  10.5.1 中央制御方式(または,総合制御方式)
  10.5.2 ローカル制御方式(または,個別制御方式)
 問題
第11章 電力系統の経済運用
 11.1 経済運用
 11.2 火力発電ユニットの経済負荷配分
  11.2.1 燃料費特性
  11.2.2 ラグランジェの未定乗数法
  11.2.3 火力発電ユニットの最適出力配分
      (送電損失を考慮しない場合)
  11.2.4 火力発電ユニットの最適出力配分
      (送電損失を考慮する場合)
 11.3 火力,水力発電ユニットの経済負荷配分
  11.3.1 水火協調方程式
  11.3.2 水火協調方程式のその他の適用
 11.4 火力発電ユニットの起動停止計画
    ―ユニットコミットメント―
 問題
参考文献
章末問題解答
索引


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