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中国近代小説の成立と写実

中国近代小説の成立と写実

A5判 288ページ 上製
価格:4,180円 (消費税:380円)
ISBN978-4-87698-240-0 C3097
奥付の初版発行年月:2012年11月 / 発売日:2012年11月上旬

内容紹介

日清日露戦争に衝撃を受けた中国知識人たちは、中国における意識の改造は「文学」の改造によって果たされると考えた。中国に近代小説が生まれなかったのは、思想の不在ではなく、思想を表現する形式が不在だったからである。『佳人の奇遇』『経国美談』など明治政治小説の中国語による翻訳文を詳細に分析し、中国近代小説の誕生をたどる。

著者プロフィール

森岡 優紀(モリオカ ユキ)

神戸大学文化学研究科単位取得退学。博士(学術)。中国文学研究、東アジア比較研究、韓国文化研究。
博士論文「『先鋒派』代表作家 蘇童論——中国八十年代後半からの文学状況において」
主な業績に「『先鋒派』における『文革』:蘇童の小説から」(『現代中国』76号)、「明治期雑誌と魯迅の「スパルタの魂」(森時彦編『20世紀社会システム』)、「『社会』を描く方法をもとめて——『写実』から社会主義リアリズムへ」(石川禎浩編 『中国社会主義文化の研究』)等がある。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 中国における近代的世界観への転換と「写実」

第一部 写実をめぐる言説の形成と変遷

第一章 伝統的小説観の転換と日本政治小説の翻訳
  一 伝統的文学観の転換
  二 『佳人之奇遇』
  三 『経国美談』
  四 「理想派」と「写実派」——啓蒙の二つのかたち
第二章 自然主義・写実主義から現実主義へ
  一 清末の文芸評論——小説と社会の相互影響関係
  二 五四時期の文芸理論——客観的描写と真実
  三 二十年代後半の西洋文芸理論の翻訳
  四 中国の文芸理論書
  五 社会主義リアリズムの受容

第三章 アンチ・リアリズムとしてのポストモダン
  一 ポストモダニズム理論の受容
  二 ポストモダニズム文学としての「先鋒派」
  三 馬原の「叙述革命」
  四 陳暁明の「写実主義」批判

第二部 翻訳からつくられる写実小説のかたち

第四章 物語と啓蒙¥文字合成——明治期科学小説の重訳
  一 魯迅の日本留学期における翻訳
  二 魯迅の科学小説の翻訳
  三 清末の科学小説の翻訳
  四 『月界旅行』
  五 『地底旅行』
  六 小説の具象性

第五章 叙述と啓蒙——『スパルタの魂』と明治期の雑誌記事
  一 幾つかの問題
  二 執筆時期
  三 明治期のギリシア史
  四 明治期の婦人雑誌、少年雑誌の記事
  五 セレーネの形象
  六 拒俄事件
  七 構成
  八 語り

第六章 小説の遠近法——『域外小説集』
  一 出版当時の状況
  二 底本
  三 翻訳方法
  四 『四日』、『謾』と『黙』
  五 魯迅の翻訳の変遷

第七章 再現される「現実」——文言小説『懐旧』
  一 近代小説形式の萌芽
  二 現実と小説の関係
  三 語り
  四 世界を対象化する視線
  五 近代精神と写実

附 小説の正統性への自覚——周作人の初期翻訳の軌跡
  一 周作人の初期の翻訳
  二 『玉虫縁』
  三 周作人の『灯台守』と呉梼の『灯台卒』
  四 正統な文学としての小説

おわりに

参考文献
後 記
人名索引


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