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 人類社会の進化極限

極限 人類社会の進化

菊判 586ページ
定価:6,000円+税
ISBN978-4-8140-0254-2 C3039
奥付の初版発行年月:2020年01月 / 発売日:2020年01月上旬
発行:京都大学学術出版会  
発売:京都大学学術出版会
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内容紹介

ヒトは,たとえ顕示的でないにせよ常に消滅と隣り合わせである。これを死や絶滅を左右する「マクロな極限」とすれば,日々の生存に関わる社会行動を規定する,何某かの変化への気づき,すなわち「ミクロな極限」が社会にはある。この両者が常に連関し合いながら社会の在り方を決定づける。人類社会の進化に迫る学際共同研究の最終形。

著者プロフィール

河合 香吏(カワイ カオリ)

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授
1961年生まれ.京都大学大学院理学研究科博士課程修了,博士(理学).
主な著書に,『野の医療――牧畜民チャムスの身体世界』(東京大学出版会,1998年),『集団――人類社会の進化』(編著,京都大学学術出版会,2009年),『ものの人類学』(共編著,京都大学学術出版会,2011年),『制度――人類社会の進化』(編著,京都大学学術出版会,2013年),『他者――人類社会の進化』(編著,京都大学学術出版会,2016年),『ものの人類学2』(共編著,京都大学学術出版会,2019年)など.

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 生存・環境・極限
―― 人類社会の進化史的基盤を求めて[河合香吏]
1 絶滅と隣り合わせの生存――「極限」を問う問題意識1
2 変化への気づきと生き残り――「極限」を問う問題意識2
3 「なくなること」と極限・社会・文化
4 対象とアプローチの幅――「極限」を論じる多様な視角
5 極限概念の配置図(Ontology of concepts)
6 本書の構成

第1部 生きられる極限――自然と社会のあわい

第1章 極限としての〈いきおい〉
――移動する群れの社会性[足立 薫]
Keyword:移動 環境 いきおい ゆくえ 予期 非構造
1 移動からみた社会のかたち
2 移動する環境を捉える
3 移動の成り立ち
4 移動の極限と混群
5 極限を生きる――ニッチ,非構造,時間

第2章 社会の果てで
――現在という極限が生み出す世界[伊藤詞子]
Keyword:端=〈いま・ここ〉,不具合,不安定,不完全,環境(とりまくもの),離合集散,自然,チンパンジー
1 社会の果て
2 はじまりとおわりの今
3 今を変える
4 今は過去にしばられもする
5 いまが生み出すもの

第3章 極限のオントロギー
――イヌイトの生業システムと近代のシステムにみる人類の社会性の進化史的基盤[大村敬一]
Keyword:カナダ・イヌイト,生業システム,「大地」,近代,グローバル・ネットワーク
1 はじめに
2 イヌイトの生業活動の現実における極限
3 イヌイトの生業システム――世界を持続的に生成する装置
4 イヌイトの生業システムにおける極限
5 末期近代における極限――グローバル・ネットワーク拡張のエンジン
6 極限のオントロギー――人類の社会性の進化史的基盤

第4章 死亡率 生活史としての理解と生態学としての理解[D.スプレイグ]
Keyword:持続性、死亡率、人口学、生態学、生活史
1 はじめに
2 生態学と生活史理論における死亡率
3 r戦略とK戦略の生活史
4 ヒトはK戦略か,r戦略か?
5 人類にとっての環境収容力
6 狩猟採集民の生活と環境収容力
7 生活史理論と少子化
8 考察 生活史進化の行く末

第5章 人新世という極限[竹ノ下祐二]
Keyword:人新世,物語,ナラティヴ
1 人類の生存環境の極限
2 極限的環境としての人新世
3 人新世をもたらした人間の特性
4 世界の物語化と超越的視点
5 超越的視点の起源
6 人新世のパラドクスと未来志向性
7 物語の自走
8 極限としての人新世に関する二つの見方

第2部 作り出される極限1――社会環境と生存

第6章 チンパンジーの孤児の生存をめぐって
――「母親の不在」は極限的な社会環境か[中村美知夫]
Keyword:チンパンジー,孤児,母親の不在,アロケア,生活史
1 はじめに――ヒトに特別な生活史上の特徴?
2 ヒト特有な生活史特徴と関連する人類進化の議論
3 野生チンパンジーの孤児
4 野生チンパンジーのアロケア
5 終わりに

第7章 新入りメスがはぐれるとき
――チンパンジーの別れと再会からみたヒトの共存の様態とその「極」[花村俊吉]
Keyword:別れ方,別れの挨拶,再会を可能にする機序,同じ集団のメンバーであること,新入りメス/既住個体,プロセス志向・物語探索/ゴール指向・物語遂行
1 別れと再会からみた共存の様態
2 新入りメスと他個体の関係――既住メスとの差異・連続性
3 チンパンジーの別れと再会
4 集団のメンバーであり続けるかどうかの極
5 別れ方と再会を可能にする機序――ヒトとの比較

第8章 社会の特異点としての孤独化
――野生チンパンジーが孤独になるとき[西江仁徳]
Keyword:構造/非構造化,正則性/特異点,潜在性/現実化
1 生き物と極限
2 伊谷純一郎の構造/非構造
3 チンパンジー社会の離合集散の果て――集団からの離脱と長期単独生活
4 チンパンジーのオスの単独性
5 野生チンパンジーのオスが孤独になるとき
6 社会の特異点としての孤独化

第9章 牧畜民の遊動再考
――東アフリカ・ドドスの「極限」への対処をめぐって[河合香吏]
Keyword:東アフリカ牧畜民,家畜キャンプ移動,家畜の略奪,共同実践,記憶と予見
1 はじめに――遊動生活と「極限」状況
2 ドドスの遊動生活――分散居住と家畜キャンプの移動
3 キャンプ移動の契機
4 「敵」の存在様態
5 おわりに――記憶と予見と共同実践

第10章 「見えないもの」という極限から生きる世界を考える
――精霊と死者と放射能を手がかりに[西井凉子]
Keyword:見えないもの,予測と予期,精霊,死者,放射能,呪術と科学
1 「見えない」ものという極限
2 「予測」
3 「予期」
4 日常的実践における予測と予期――未来志向と現在志向

第11章 ハザード状況下における環境と生存に関する試論
――フィリピン南部ミンダナオ紛争と福島原発事故・放射能災害における極限状況の比較から[床呂郁哉]
Keyword:ハザード,ミンダナオ紛争,福島第一原発,放射能災害,自然的極限と社会的極限,例外状態,人新世
1 極限状況下の生存と環境をめぐって
2 フィリピン南部のミンダナオ紛争の事例
3 福島原発事故の事例から
4 まとめと考察――ふたつの極限とそのハイブリッド,人新世をめぐって

第3部 作り出される極限2――記憶と想像の力

第12章 自民族愛と他民族憎悪のあいだ[曽我 亨]
Keyword:文化進化論,利他行動,紛争,牧畜民
1 紛争のなか生きる
2 戦争への対処
3 極限から抜け出す
4 他集団への共感と憎悪

第13章 人口極限集団の生存戦略
――ムボトゥゴトゥ1976年[船曳建夫]
Keyword:生存戦略,人口減少,消滅,儀礼
1 人口とその内訳
2 土地の権利と儀礼の権利
3 伝統の売り買いと,新たな「伝統」の市場
4 結論――集団,家族,個人の戦略

第14章 相互行為システムのコミュニケーションと「社会」というコンテキスト
――「地域社会の消滅」という極限に向き合うコミュニケーションを手がかりに[北村光二]
Keyword:相互行為,社会,社会システム,協働のコミュニケーション,二重の選択
1 人間の社会・文化の進化
2 白石島における「協働のコミュニケーション」
3 島社会の存亡に関わる問題への対処
4 人類史における「社会の再生産(=存続)」という課題
5 「社会」はどこから来るのか?

第15章 極限としての亡失
――絶滅と消滅[内堀基光]
Keyword:実在の亡失,範疇の亡失,文化=生態的なニッチ,タタウ人,ネアンデルタール人
1 亡失の語り
2 ブキタンとタタウの場合
3 ネアンデルタール人の「絶滅」はどう語られるか
4 進化の語り方
5 亡失語りの意義

第16章 極限を生きる売春女性
――インド・ムンバイの調査から[田中雅一]
Keyword:売春,セックスワーク,デーヴァダーシー,ヒンドゥー教
1 カマティプラ
2 女性たちの語り
3 デーヴァダーシー
4 売春女性の絶望,顧客関係,家族関係
5 生殖と性的快楽の分離について

第17章 極限の必然――パプアニューギニアの成人式から考える[春日直樹]
Keyword:物質と精神,成人式,生殖力,呪術
1 成人式の過程
2 それぞれの立場からみた成人式
3 女の能力,男による統制
4 特別な女祭司
5 結

第4部 人類進化史に刻まれる極限

第18章 極限化する出産と誕生
――苦難の隘路の祝福[黒田末寿]
Keyword:産科のジレンマ,児頭骨盤不均衡,難産,助産介助,オキシトシン,ストレス耐性,LABOR仮説,Terminivore
1 人間は難産なのだろうか?
2 極限を食む Terminivore
3 出産と誕生の極限相
4 産科のジレンマ:極限化した出産
5 助産介助進化の仮説と無介助出産の歴史
6 霊長類に共有される産みの苦しみ
7 出産の危機に対する助産介助と医療
8 隘路通過の意義:LABOR仮説と産科のジレンマの読み直し

第19章 ヒト的な様態としての調理加工の共同と生存
――食が社会にひらかれるとき[杉山祐子]
Keyword:食,調理加工,共同,半自然環境,共食,女性,子ども,生存
1 料理仮説,人類史における食性の変化と環境
2 極相化する環境と変化――半自然環境の生成
3 現代のアフリカ農民における調理加工の共同――ベンバ農村の事例から
4 子どもたちの食と調理加工の共同
5 「外部化」された食を取り戻す人類史的意味

第20章 現生霊長類の群れが生存できる環境を推定するモデルからアルディピテクス・ラミダスの生息環境を探る[中川尚史] 
Keyword:群れ,環境,活動時間割合,時間的制約,現生霊長類,化石人類
1 群れとしての生存と時間的制約というダンバーの発想
2 ヒヒの群れ生存の時間的制約モデル
3 群れ生存の時間的制約モデルを化石人類アウストラロピテクスへ適用する
4 改訂版私論――アルディピテクスの進化モデルとしてのサバンナモンキー
5 群れ生存の時間的制約モデルを化石人類アルディピテクスへ適用する
6 まとめにかえて

第21章 異なる人々との出会いと進化的・文化的スイングバイ[寺嶋秀明]
Keyword:サピエンス,交替劇,アフリカ熱帯雨林,狩猟採集民,通婚
1 旅のはじまり
2 アフリカ熱帯雨林の狩猟採集民と農耕民
3 共に生きられる世界
4 出会いと別れ――新天地へのスイングバイ

あとがき[河合香吏]
索  引
著者紹介


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