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アタテュルクとエルドアンのはざまでトルコ共和国 国民の創成とその変容

トルコ共和国 国民の創成とその変容 アタテュルクとエルドアンのはざまで

A5判 324ページ 上製
価格:5,280円 (消費税:480円)
ISBN978-4-7985-0257-1 C3022
奥付の初版発行年月:2019年04月 / 発売日:2019年03月中旬

内容紹介

第一次世界大戦の敗北によって多民族・多宗教国家であるオスマン帝国が崩壊したのち、建国の父アタテュルク(1880/1~1938年)を指導者とする独立運動を経て、1923年にトルコ共和国は誕生した。トルコ民族主義と世俗主義を国是として出発したこの国は、まもなく建国100周年を迎えようとしている。国父アタテュルクによって、新しく生まれたこの国の「かたち」は、いかに形作られたのか。そして、親イスラム政策をとる現大統領エルドアンによって、それはどのように変わろうとしているのか。

本書は、国民史や言語改革を通じた国民の創成プロセス、上からの国民形成に対するトルコの民衆の抵抗やネゴシエーション、国民国家を形作る国境の成り立ちとその揺らぎなどに焦点を当て、トルコ共和国が歩んできた一世紀を実証的に描き出す試みである。歴史的背景から最新のトルコ情勢まで視野に入れた、気鋭の若手研究者による論集。

出版部から一言

本書の編者は、中公新書『オスマン帝国』の著者・小笠原弘幸氏。新書でトルコの歴史に興味を持ち、さらに知識を深めたい読者に最適な書。

著者プロフィール

小笠原 弘幸(オガサワラ ヒロユキ)

序章、第一章を執筆

九州大学大学院人文科学研究院 准教授
主要業績:
『イスラーム世界における王朝起源論の生成と変容  古典期オスマン帝国の系譜伝承をめぐって』刀水書房、2014年。
『オスマン帝国史  繁栄と衰亡の六〇〇年史』中央公論新社、2018年。
 “Enter the Mongols: A Study of the Ottoman Historiography in the 15th and 16th Centuries,” Osmanlı Araştırmaları, 51, 2018, pp. 1-28.

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 はしがき
 トルコ共和国地図
 凡 例

序 章 「アタテュルクのトルコ」を問い直す
       共和国史をめぐる研究潮流と本書の射程

 第一節 アタテュルクの戦いとエルドアンの挑戦
 第二節 アタテュルク時代への二つの視角
 第三節 トルコ共和国の国民形成を脱構築す  本書の射程と三つの視角

  第一部 アタテュルクの描いたトルコ国民像とその創成

第一章 国民史の創成  トルコ史テーゼとその後

 はじめに
 第一節 トルコ史テーゼの興隆  「歴史におけるクーデタ」
 第二節 トルコ史テーゼの展開
 第三節 テーゼの衰退と新しい歴史認識の潮流  アタテュルク死後から現在まで
 おわりに

第二章 国民創出イベントとしての文字革命

 はじめに
 第一節 文字革命への歴史的展開と新字普及のプロセス
 第二節 文字革命の実態
 第三節 成功言説の醸成と不可逆性の担保
 おわりに

第三章 感性を「統合」する
       国民音楽からトルコ民俗音楽へ

 はじめに
 第一節 トルコ国民音楽とトルコ民俗音楽  「価値転換」への道のり
 第二節 民俗音楽が経験した「衝撃」  民俗音学をめぐる「制度」と五線譜化
 第三節 民俗音楽をめぐる実践
 おわりに

第四章 国父のページェント
       ムスタファ・ケマルと共和国初期アンカラの儀礼空間

 はじめに
 第一節 帝国末期
 第二節 ムスタファ・ケマルのアンカラ入市
 第三節 「駅通り」と独立戦争時のパレード
 第四節 アンカラの都市計画
 第五節 共和国建国一〇周年式典
 第六節 ムスタファ・ケマルの葬列
 おわりに

  第二部 トルコ国民像をめぐるネゴシエーション

第五章 アタテュルク後の宗教教育政策  ライクリキの転換点

 はじめに
 第一節 非宗教的な道徳教育の試み
 第二節 私教育における宗教教育の構想
 第三節 公教育における宗教教育の再開
 おわりに

第六章 国民国家トルコとアナトリアの諸文明
       イスラム化以前の遺跡をめぐる文化政策

 はじめに
 第一節 トルコ共和国の成立とイスラム化以前の文化遺産
 第二節 国民国家の時間・空間枠組みと文化遺産
 おわりに

第七章 トルコにおける抵抗文化
       ハンスト・キャンペーンからみる国家・社会関係

 はじめに
 第一節 たたかいの政治とハンスト
 第二節 一九八〇年代と九〇年代におけるトルコのハンスト
 第三節 二〇〇〇年代以降における二つの集団ハンスト
 おわりに

  第三部 交雑する空間のなかのトルコ国民  国境、移民・難民、隣国からの眼差し

第八章 トルコ共和国の境界  領域紛争と国境

 はじめに
 第一節 トルコ共和国の領域の形成:セーヴルからローザンヌへ
 第二節 戦間期トルコ共和国の領土紛争
 第三節 第二次大戦後トルコの領域紛争
 おわりに

第九章 トルコの移民・難民政策

 はじめに
 第一節 移民送り出し国としてのトルコ
 第二節 移民のトランジット国家としてのトルコ
 第三節 移民受け入れ国としてのトルコ
 第四節 シリア難民流入のインパクト
 おわりに

第一〇章 イラクからみるトルコ  世論調査の計量分析から

 はじめに
 第一節 錯綜する両国関係とリサーチデザイン
 第二節 イラク人のトルコ観  世論調査の記述統計から
 第三節 トルコ観はどのような要因で作られたのか  計量分析から
 おわりに

終 章 激動の五年間(二〇一三〜一八年)と大統領制の始まり

 第一節 権力基盤を固める公正発展党
 第二節 強まるエルドアンのリーダーシップ

 索 引
 執筆者紹介


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