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「つながり」は地域を再生させるか?ソーシャル・キャピタルの経済分析

ソーシャル・キャピタルの経済分析 「つながり」は地域を再生させるか?

A5判 288ページ 上製
価格:5,060円 (消費税:460円)
ISBN978-4-7664-2564-2 C3033
奥付の初版発行年月:2018年12月 / 発売日:2018年12月中旬

内容紹介

▼豊かで持続可能な地域社会をつくる

投資が「効く」地域と「効かない」地域は何が違うのか?
親の「つながる力」は子どもに継承されるのか?
地域の信頼関係や互酬性、ネットワークがもたらす経済効果を定量的に測定、次世代へ継承し、地域社会の担い手を育成するための方途を提案する。

著者プロフィール

要藤 正任(ヨウドウ マサトウ)

1995年東京大学経済学部卒業、同年建設省(現:国土交通省)入省、2002年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了(経済学修士)、2012年英国ヨーク大学大学院修士課程修了(MSc in Economic and Social Policy Analysis)。国土交通省総合政策局政策課政策調査室長、京都大学経済研究所先端政策分析研究センター特定准教授などを経て、現在、国土交通省国土交通政策研究所統括主任研究官。
主な業績に『インフラを科学する――波及効果のエビデンス』(分担執筆、柳川範之編著、中央経済社、2018年)、「ソーシャル・キャピタルは地域の経済成長を高めるか――都道府県データによる実証分析」(『国土交通政策研究』第61号、2005年)、「道路整備は周辺地域に何をもたらすのか?」(『季刊政策分析』第5巻(1・2)、2010年)、「PFI事業におけるVFMと事業方式に関する実証分析――日本のPFI事業のデータを用いて」(共著、『経済分析』第192号、2017年)、「政府の要請は企業行動を変えるか――「下請取引等実態調査」を用いた建設企業の賃金引き上げの実証分析」(共著、『日本経済研究』、近刊)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はしがき
図表一覧

第1章 なぜ、今、ソーシャル・キャピタルなのか?
 1.はじめに
  私たちを覆う「不安」感
  何が「豊かさ」をもたらすのか
 2.ソーシャル・キャピタルとは?
  パットナムと集合行為問題
 3.ソーシャル・キャピタルの歴史とその概念
  コミュニティとネットワーク
  義務と期待
  信頼と互酬性
 4.経済活動とソーシャル・キャピタルとの関係
  市場の質を支えるインフラ
  地域社会を支える
  人を支える
 5.政策対象としての第3の資本
  新しい公共とエリアマネジメント
  定量化への挑戦
 6.本書の構成
 〔コラム1〕 レガタム繁栄指数

第2章 ソーシャル・キャピタルをどう測るか?
――OECDの取組みの紹介
 1.はじめに
 2.ソーシャル・キャピタルをどう測るか?
  一般的な信頼
  活動への参加
  ネットワーク
 3.各国政府によるソーシャル・キャピタルの計測
  欧米での取組み
  わが国での取組み
 4.OECDにおける取組み
  ソーシャル・キャピタル計測の経緯
  概念整理――ソーシャル・キャピタルの4つの側面
  計測の方法
   ① 個人的ネットワーク/② 社会的ネットワーク・サポート/
   ③ 市民参加/④ 信頼と協調の規範
  OECDの提案を踏まえた取組み
 5.おわりに 
 〔コラム2〕 「結束型」と「橋渡し型」のソーシャル・キャピタル

第3章 ソーシャル・キャピタルは地域経済を成長させるか?
――マクロな視点から眺める
 1.はじめに
 2.ソーシャル・キャピタルと経済成長
  国別データを用いた検証
  地域別データを用いた検証
 3. 都道府県別データによる実証分析
  3.1. 実証分析の方法――Barro Regressionとは?
  3.2. ソーシャル・キャピタルの都道府県別データの作成
   逆の因果関係への対処
   「個人的ネットワーク」と「市民参加」指標の作成
   生活関連指標とソーシャル・キャピタルとの関係
  3.3. 分析結果
   他の要因の考慮
  3.4. TFPとソーシャル・キャピタル
 4.まとめ
 〔補論1〕 変数の定義とデータの出典

第4章 住民主体の活動は地域の価値を高めるか?
 1.はじめに
 2.住民主体の活動の効果の計測方法
  2.1. ヘドニック・アプローチ
  2.2. エリアマネジメント活動と地域経済とのつながりを測る
   エリアマネジメント活動の把握
   地価データとの組み合わせ
   分析のためのモデル
 3.エリアマネジメント活動と地価との関係
  パネル・データによる分析
 4.エリアマネジメント活動の質と効果
 ――商業地における団体特性を考慮した分析
  団体の特性とその影響
 5.まとめ
 〔補論2〕 地域活動とソーシャル・キャピタルの相互関係

第5章 新たな指標で地域間の違いを測る
 1.はじめに
 2.わが国におけるソーシャル・キャピタルの計測
  初期の試み――内閣府調査と市民活動インデックス
  その後の取組み――日本総合研究所調査と稲葉調査
  既存調査の課題
 3.OECD分類に対応した指標の作成
  3.1. 指標化に用いる質問の抽出・分類
  3.2. 指標化の方法
   指標化のための手段
   主成分分析
   主成分の選択
  3.3. 使用する調査データの概要
   データの記述統計
   データの地域ブロック別比較
  3.4. 4つの側面をあらわす指標の作成
   主成分の選択
   新しい指標の概要
 4.新しい指標を用いた地域間比較
  地域ブロック別比較
  都市規模別比較
  回帰分析による地域差の確認
 5.まとめ

第6章 ソーシャル・キャピタルはいかに形成されるか?
 1.はじめに
 2.先行研究
  理論に関する先行研究
  実証分析に関する先行研究
 3.分析の方法
  変数の説明と記述統計
  個人属性などを考慮することによる地域差への影響
 4.形成要因の実証分析
  4.1. 推定結果と考察
   年齢の影響
   配偶者の有無
   職業の違い
   教育の違い
   持ち家の有無
   居住年数による影響
   所得の違い
   人口流動性、高齢者比率、都市化の程度の違い
   所得水準、所得格差の違い
  4.2. 分析結果のまとめ
 5.まとめ
 〔補論3〕 所得とソーシャル・キャピタルとの関係
  ――内生性を考慮した分析

第7章 ソーシャル・キャピタルを世代間で継承できるか?
 1.はじめに
 2.受け継がれるソーシャル・キャピタル
  親子間でのソーシャル・キャピタルの継承
  ソーシャル・キャピタルの形成要因の整理
 3.親子間の継承可能性をどう測るか?
  どのようなデータが必要か?
  内閣府「生活の質に関する調査」
  新たなアンケート調査の実施
 4.何が受け継がれるのか――継承可能性の予備的な考察
  一般的信頼との関係
  利他性との関係
  地域活動参加との関係
 5.まとめ

第8章 家庭内で継承・共有されるソーシャル・キャピタル
 1.はじめに
 2.親子間での影響を測定する
  2.1. 分析に用いるソーシャル・キャピタルの指標
   他人への信頼と公的な組織・機関への信頼
  2.2. 分析モデルと考察する個人属性
   推定において考慮する個人属性など
 3.何がどのように継承されるのか?
  3.1. 基本推定の結果
   両親からの継承可能性
  3.2. 本当にソーシャル・キャピタルが継承されているのか?
   両親の学歴、気質による影響の分析
   マルチレベル分析による兄弟姉妹間での親子間継承の検証
   分析結果
  3.3. 親子のソーシャル・キャピタルの相互関係
  ――内生性の考慮
   親子間での継承は一方通行か?
   操作変数法による分析
 4.家庭内での継承と共有
  4.1. 父親と母親からの影響の違い
   父親と母親のどちらが重要か?
   父親と母親の相乗効果
  4.2. 夫婦間での共有
   似たもの同士が結婚するのか、結婚すると似てくるのか?
 5.まとめ

第9章 家庭や地域コミュニティが及ぼす影響
 1.はじめに
 2.家庭内での互酬的気質と地域資源の共有意識の継承
  2.1. ソーシャル・キャピタルの指標
  ――互酬性の意識と地域資源の共有意識
   互酬性の意識と地域資源の共有意識の関係
  2.2. 子どもの頃の家庭内教育・経験の指標
   家庭内経験とその後の意識
  2.3. 分析モデルと考慮する諸要因
   時間選好
   リスク態度
 3.家庭内での教育・経験の影響
  3.1. 子どもの頃の家庭内経験の影響
  3.2. 子どもの頃の活動参加の影響
   子どもの頃に何をしていたか?
  3.3. 家庭内経験の決定要因
  ――両親・祖父母のソーシャル・キャピタルの役割
   両親・祖父母のソーシャル・キャピタル
   子どもの頃の余暇時間の使い方
   両親・祖父母のソーシャル・キャピタルが果たす役割
 4.地域コミュニティからの影響
  4.1. 分析において考慮する新たな諸要因
  ――地域のソーシャル・キャピタルなど
   地域のソーシャル・キャピタルと地域環境(地域の賑わい)
   居住地の移動
   子どもの頃の家庭外での経験
  4.2. ソーシャル・キャピタルの外部効果
 5.まとめ
 〔補論4〕 ソーシャル・キャピタルと地域活動
  他人への信頼、互酬性の意識、地域資源の共有意識と地域活動への参
  加
  地域活動参加者の属性分析
  ソーシャル・キャピタルが地域活動への参加に与える影響の大きさ

第10章 豊かで持続可能な地域社会に向けて
 1.ソーシャル・キャピタルの役割
  ソーシャル・キャピタルを豊かにするために
  将来世代を考えた意思決定
 2.政策的インプリケーション
 ――ソーシャル・キャピタルを豊かにするために
  現在世代への対応――静学的視点
  将来世代への対応――動学的視点
  地域のステークホルダーとの連携
  社会の流動化・多様化
 3.さらなるエビデンス・ベースでの議論に向けて
 ――制度・政策の基盤整備
  定量的計測に向けての枠組みづくり――国、地方、研究機関などとの
  連携
  関連指標の定量化
  パネル・データ構築の重要性
  政策効果の測定


参考文献
初出一覧
索 引


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