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ネットワーク・メディアの経済学

ネットワーク・メディアの経済学

A5判 344ページ 上製
価格:4,400円 (消費税:400円)
ISBN978-4-7664-2158-3 C3033
奥付の初版発行年月:2014年07月 / 発売日:2014年07月中旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

デジタル融合時代の新たなメディア市場を描く

衛星放送、ケーブルテレビ、デジタル放送、そしてインターネットなど、次々に誕生した新メディアは、情報社会をどのように変えたのか? はたして私たちは良質な情報を手に入れられたのか? 情報財の特殊性とメディア産業の課題を解き明かし、公共放送を含め望ましい市場競争のあり方を提示する最新の研究!

著者プロフィール

春日 教測(カスガ ノリヒロ)

甲南大学経済学部教授
1993年東京大学経済学部卒業、1996年イェール大学大学院修士課程修了、2005年横浜国立大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。1993年郵政省(現総務省)入省、長崎大学助教授、神戸大学大学院准教授、近畿大学准教授を経て、2013年より現職。専門は、産業組織論、公共経済学。
主な業績:『ネット・モバイル時代の放送』(共著、学文社、2012年)、「放送市場の多面性と規制に関する考察――ドイツ規制制度からの示唆」『情報通信学会誌』第29巻第1号(2011年)、“Determinants of Profit in the Broadcasting Industry: Evidence from Japanese Micro Data,” Information Economics and Policy 18(2), (co-authored, 2006)

宍倉 学(シシクラ マナブ)

長崎大学経済学部准教授
1995年早稲田大学社会科学部卒業、1998年早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了、2006年慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了。博士(商学)。1999年郵政省(現総務省)入省後、2012年より現職。専門は、産業組織論、公共経済学。
主な業績:「電気通信産業における規制改革の応用一般均衡分析――ユニバーサルサービスのシミュレーション」『公益事業研究』第54巻第2号(共著、2002年)、「有料放送市場におけるチャンネル数とプラットフォーム間競争――間接ネットワーク効果と互換性の影響」神戸大学経済経営学会編『国民経済雑誌』第198巻第5号(共著、2008年)、“An Estimation of Marginal WTP for Variety in the Broadcasting Platform,” The Smart Revolution towards the Sustainable Digital Society: Beyond the Era of Convergence (co-authored, forthcoming)ほか。

鳥居 昭夫(トリイ アキオ)

中央大学経済学部教授
1976年東京大学理学部卒業、1983年東京大学大学院経済学研究科単位取得退学。博士(経済学)(京都大学)。城西大学助教授等を経て、1996年横浜国立大学経営学部教授、2012年同名誉教授。専門は、産業組織論、公的規制論。
主な業績: Industrial Efficiency in Six Nations (co-authored, MIT Press, 1992)、『日本産業の経営効率』(NTT出版、2001)、「情報、卸および流通経路」(日本商業学会優秀論文賞、『流通研究』 No.45, 2008)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

第1章 ネットワーク・メディア産業の実態と特徴
 1 メディア産業の現状
  1-1 放送サービスの分類
  1-2 各放送サービスの状況
  (1) 地上波民間放送
  (2) ケーブルテレビ
  (3) 衛星放送
  (4) 公共放送―― NHK
  (5) 番組制作市場
  1-3 市場環境の変化と放送法改正
  (1) 放送規制の根拠と内容
  (2) 2011年放送法改正とその背景
  1-4 関連市場の動向
  (1) 広告市場
  (2) 新聞
  (3) 出版(雑誌・書籍)
  (4) コンテンツおよびサービス
  (5) 受像機・端末市場
 2 ネットワーク・メディアの特徴
  2-1 経済的特徴
  (1) ネットワーク効果
  (2) 価値財
  (3) 経験財
  (4) 市場の多面性
  (5) 需要の2面性
  (6) 互換性
  (7) 規模の経済性および範囲の経済性
  (8) スイッチング・コスト
  (9) 即時消費性
  (10) 非排除性と非競合性
  (11) ソフトとハード・インフラの補完性
  2-2 ネットワーク技術の変化による影響
  (1) 無線化の影響―― アクセス手段の多様化と競争進展
  (2) IP化の影響―― ネットワークの共有・共用の促進
  (3) 共有と競争の両立
  2-3 ネットワーク・メディアと民主主義・倫理
  (1) メディアと民主主義
  (2) メディアと倫理

第2章 等量消費性
 1 情報財の等量消費性
 2 独占供給の場合
  2-1 消費者の効用が同一の場合
  2-2 効用の異なる消費者が存在する場合
  2-3 価格差別が可能な場合
  2-4 価格差別が不可能な場合
  2-5 消費者規模の効果
 3 複数の供給主体が存在する場合
 4 情報の非対称性
 5 情報の複製と移転(フリーライド)
 6 一律負担と強制加入
 7 有料放送市場における競争
  7-1 先行研究
  7-2 市場支配力仮説と効率性仮説
  7-3 実証
  7-4 推計結果の含意
 8 ケーブルテレビと衛星放送の差別化要因
  8-1 分析の方針
  8-2 推計結果
 9 価格差別と均一価格
  9-1 設定
  9-2 地域別料金の場合
  9-3 一律料金の場合
  9-4 料金設定が異なる場合
  9-5 価格戦略と余剰の分配
 10 小括

第3章 補完性
 1 情報財と補完財
 2 補完性とネットワーク効果
 3 補完財の結合供給
  3-1 設定
  3-2 社会厚生の最大化条件
  3-3 補完財を含む等量消費財の供給
  3-4 補完財の分離供給
 4 補完財供給の一般的なケース
  4-1 価格決定の場合
  4-2 数量決定の場合
  4-3 分離供給と結合供給の比較
 5 新技術の導入と補完財の連携
  5-1 デジタルテレビ普及に関する先行研究
  5-2 デジタル化と受信端末の購入選択
  5-3 受信端末の購入とネットワーク効果
  5-4 設定
  5-5 データ
  5-6 推計結果
 6 補完性とプラットフォーム
 7 プラットフォームの戦略
  7-1 バンドリング戦略
  7-2 ロックイン戦略
  7-3 ウインドウ戦略
 8 プラットフォーム競争
  8-1 設定
  8-2 加入者数の決定
  8-3 価格の決定
  8-4 情報財の共有
  8-5 対称制約下の均衡
  8-6 情報財の共有インセンティブ
  8-7 情報財共有の互恵性
 9 多様性選好パラメータの推計
  9-1 放送サービスに対する効用
  9-2 設定
  9-3 推計結果
 10 小括

第4章 市場の多面性
 1 多面市場
 2 広告に対する効用
 3 多面市場下での価格戦略
  3-1 独占モデル
  3-2 復占モデル
  3-3 収入方式と差別化
 4 多面市場における市場支配力
  4-1 広告放送の利潤
  4-2 利潤と集中度
  4-3 実証モデル
  4-4 分析データ
  4-5 推計結果
  4-6 多面市場と市場集中度
 5 収入方式と差別化
  5-1 広告収入型と有料収入型の行動
  5-2 広告放送の差別化戦略
  5-3 有料放送の差別化戦略
  5-4 放送事業者の差別化に関する先行研究
  5-5 差別化と視聴行動
 6 小括

第5章 メディア需要者の行動
 1 メディア利用の実態
 2 情報の受け手に対する影響
  2-1 メディアの存在と人々の行動
  2-2 メディア報道と政治行動
  2-3 メディア報道と株式市場
  2-4 テレビ報道と利用者行動

第6章 メディア市場の制度設計
 1 通信・放送の融合と規制制度
  1-1 国境のないテレビ指令
  1-2 2002年電子通信規制パッケージと放送分野
  (1) 放送サービス提供の認証と放送目的のための周波数利用
  (2) マスト・キャリー(Must-Carry)責務
  (3) ネットワークと関連設備へのアクセス
  1-3 国境のない視聴覚メディアサービス指令
  (1) 広告規制の緩和
  (2) 発信国主義の維持
  (3) 視聴覚メディアサービス提供者にかかる透明性確保義務
 2 メディア集中排除原則―― ドイツの事例
  2-1 ドイツにおけるメディア監督制度
  2-2 競争当局によるメディア規制
  2-3 ケーブルテレビ市場における競争当局の判断
  (1) リバティ・メディア社の地域ケーブル会社買収差し止め
  (2) KDGの他ケーブル事業者買収案撤回
  (3) KDGによるOrionの一部買収認可
 3 公共放送の扱い
  3-1 EUにおける公共放送の扱い
  3-2 イギリスの公共放送
  3-3 ドイツの公共放送
  3-4 フランスの公共放送

第7章 公共放送
 1 放送における「市場の失敗」
  1-1 公共財
  1-2 不完全競争
  (1) 独占的競争
  (2) 空間的競争
  (3) 番組重複の問題
  (4) 公共放送の存在と不完全競争
  1-3 外部効果、価値財、不確実性
 2 多様な番組の供給と無料広告放送・有料放送
  2-1 Spence and Owen(1977)のモデル分析
  2-2 Peitz and Valletti(2008)のモデル分析
  (1) 2面市場の分配上の特性
  (2) 基礎モデル
  (3) 有料放送
  (4) 無料広告放送
  (5) 広告量と番組の多様性
  2-3 Armstrong(2005)のモデル分析
 3 公共放送の存在と民間放送事業者間の競争
  3-1 モデル
  3-2 民間放送事業者間の競争
  3-3 公共放送が存在する場合
  3-4 公共放送の存在が民間放送事業者に与える効果
 4 品質維持の政策
  4-1 モデル
  4-2 品質に関連づけた料金制度の可能性


初出一覧
参考文献
索引
執筆者紹介


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