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国家・教会・世論ベンサムとイングランド国制

ベンサムとイングランド国制 国家・教会・世論

A5判 328ページ 上製
価格:4,400円 (消費税:400円)
ISBN978-4-7664-2088-3 C3010
奥付の初版発行年月:2013年10月 / 発売日:2013年10月上旬
発行:慶應義塾大学出版会  
発売:慶應義塾大学出版会
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内容紹介

▼フランス革命はジェレミー・ベンサムの社会認識と人間観を大きく揺るがした。ウィリアム・ブラックストンへの批判から始められた思索がたどりついた「立法の科学」と「自由な国家」構想。革命の動乱を契機に、ベンサムは、構想が前提とする合理的な人間――適切に功利計算ができる人間――の存立を阻む様々な外的要因に関心を広げてゆく。人民による世論が決定的な意味を持つ民主政治において、アナーキーに陥ることのない「自由な国家」はいかにして可能なのか。
 本書は、ベンサムの思想が、フランス革命の衝撃を経てイングランド国制批判として展開していく過程を同時代の知的文脈と関連づけて考察する。イングランド国教会批判と議会改革論を経て『憲法典』に結実する、ベンサムの「自由な国家」の具体的構想が明らかにされる。
 一貫した哲学を持つ功利主義者像を相対化し、ベンサムの生涯にわたる思想的格闘を追究する画期的な研究成果。

著者プロフィール

小畑 俊太郎(オバタ シュンタロウ)

1975年生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了。
博士(政治学)。現在、首都大学東京都市教養学部法学系助教。

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

第一章 ブラックストンのイングランド国制論
 第一節 イングランド法の基礎原理
 (一) 自然法と神法
 (二) 所有権の起源と基礎
 第二節 イングランド法の歴史と古来の国制
 第三節 イングランド国制の均衡と調和
 (一) 主権の基礎と諸形態
 (二) 「権力均衡」 の政治学

第二章 ベンサムにおける 「立法の科学」 と 「自由な国家」
 第一節 「立法の科学」 の再構築
 (一) 神学と法学
 (二) 解説的法学と評価的法学
 (三) 「犯罪」 の諸類型と 「私的倫理」
 第二節 ベンサムの主権論と 「自由な国家」
 (一) 主権の神学的基盤とイングランド議会
 (二) 服従の習慣―― 「政治社会」の多様性
 (三) 「専制的統治」 と 「自由な国家」

第三章 フランス革命とイングランド国制
 第一節 参照基準としてのイングランド国制
 (一) 社会認識―― フランスとイングランド
 (二) 諸利益の制度的統合
 (三) 「安全」 と 「平等」 ―― 幸福の判断能力
 第二節 「政治的急進主義」 の成立
 (一) 憲法制定国民議会と 『権力の分割』
 (二) 『フランス憲法典草案』 の構造
 (三) イングランド国制の 「腐敗」 問題
 第三節 革命への懐疑と批判
 (一) 憲法改正条項と立法府の全能性
 (二) 植民地解放の正義と利益
 (三) 権利宣言批判―― 『大げさなナンセンス』

第四章 イングランド国教会と世論
 第一節 ベンサム宗教論の基本的視座
 第二節 国民協会と三位一体教義法
 第三節 イングランド国教会の 「腐敗」 問題
 第四節 ベンサムの教会論
 第五節 イングランド国教会の 「安楽死」 と 「宗教的自由」

第五章 統治の「経済性」と統治者の「適性能力」
 第一節 イングランド国制論における経営的視座の成立
 (一) バークの影響力論と 「高貴な原理」
 (二) ベンサムにおける 「経済性」 の擁護
 (三) 官職俸給最小化原理の展開
 第二節 統治者の 「道徳的適性能力」 と議会改革
 (一) 「適性能力」 の三類型
 (二) 政治的急進主義の展開
 (三) 統治者の 「道徳的適性能力」 と 「世論法廷」
 第三節 統治者の 「知的適性能力」 と官僚制構想
 (一) 「政治的誤謬」 と 「世論法廷」
 (二) 統治者の「知的適性能力」 と 『クレストメイシア』

おわりに

あとがき

文献一覧
索引


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