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イスラーム法の歴史と理論イジュティハードの門は閉じたのか

イジュティハードの門は閉じたのか イスラーム法の歴史と理論

B7 472ページ 上製
価格:5,280円 (消費税:480円)
ISBN978-4-7664-1004-4(4-7664-1004-1) C3014
奥付の初版発行年月:2003年09月 / 発売日:2003年09月上旬

内容紹介

エドワード・サイードが指摘した「オリエンタリズム」的言説の克服を実践的に推し進め、国際的に注目されるイスラーム法理論研究者、ワーイル・ハッラーク氏(カナダ・マギル大学教授)本邦初の訳書。
西暦10世紀頃、人間の側からの理性の行使による法規範を発見する努力(=イジュティハード)が禁止され、それ以後、イスラーム法が停滞し、その近代化が妨げられたとする西側のオリエンタリズム的定説(=イジュティハードの門の閉鎖)を、膨大な資料の解読から実証的に覆す「イジュティハードの門は閉じたのか」をはじめ、イスラーム法がいかに時代に即した人間のための法であるのかを透徹した批判的精神によって歴史的に解明した八編からなる画期的論考集。


著者紹介

ワーイル・ハッラーク Wael B. Hallaq
1955年生まれ。マギル大学(カナダ)イスラーム学研究所教授。
1978年ハイファ大学卒業。83年ワシントン大学(アメリカ)にてPh.D.取得。
イスラーム法学研究の世界的第一人者。イスラーム法理論の初期形成段階における中心主題を緻密に分析し、多様な教義を生み出したイスラーム法の発展過程を検証。イスラーム法の理論的基礎や方法論に関する考察を多角的に行う。最近の著作では、宗教的・倫理的であると同時に、本質的には理知的であるイスラーム法が、構造的にいかに変化に富んだメカニズムを内包しているのかを実証している。本書に収められた「イジュティハードの門は閉じたのか」は西側のイスラーム法研究の根底を覆す画期的論文。
Authority, Continuity and Change in Islamic Law, Cambridge University Press, 2001. A History of Islamic Legal Theories: an Introduction to Sunni usul al-fiqh, Cambridge University Press, 1999. Law and Legal Theory in Classical and Medieval Islam, Variorum, 1995. Ibn Taymiyya against the Greek Logicians, Clarendon Press, 1993等、著書多数。


編訳者紹介

奥田 敦(おくだ・あつし)
1960年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部助教授。
1984年中央大学法学部卒業。90年同大学大学院博士課程後期課程規定年限経過後退学。シリア国立アレッポ大学アラブ伝統科学研究所客員研究員(93年〜99年)、同大学学術交流日本センター主幹(94年〜99年)などを経て、99年4月より現職。専攻はイスラーム法。イスラームの教えを軸にした人間・社会・法・文化にかかわる総合的研究のほか、SFCを拠点にアラブ・イスラーム圏との実践的な相互理解を目指す地域研究・文化交流も積極的に展開している。
著訳書に、『フサイニー師「イスラーム神学五〇の教理」——タウヒード学入門』(慶應義塾大学出版会、2000年)、主要論文に、「イスラームの信仰とスークの経済」『市場の法文化』法文化叢書②、国際書院、2003年、「イスラームにおける宗教的義務の「法」的性格——ガバナンス論構築への手がかりとして」『ガバナンス論の現在』KEIO SFC JOURNAL, vol.1, no.1, 2002年等がある。

目次


第一部 イスラーム法史

 第一章 イジュティハードの門は閉じたのか
序/ 法理論におけるイジュティハード/ 反イジュティハードの潮流とスンニー派からの排斥/イジュティハードの実践/ 実定法の発達におけるイジュティハードの役割/ 「イジュティハードの門の閉鎖」の表現の登場とその意味/ムジュタヒドの存在に関する論争/イジュティハードとタジュディードに対するスユーティーの要求/ 十/十六世紀以降のイジュティハード/ 結論

 第二章 シャーフィイーは、イスラーム基礎法学の大棟梁だったのか
序/ 三/九世紀における『リサーラ』の評価/ 『リサーラ』の位置づけ/ 四/十世紀における『リサーラ』に対する強い関心/ ウスール・アル=フィクフ学の創設者とされたのはいつか/結論

 第三章 スンナ派イジュマーアの権威性について
問題の所在/ イジュマーアの権威性に関する西側の研究/ シャーフィイーまでのイジュマーアの権威性/ 四/十世紀前半における議論/ アブド・アル=ジャッバールにおけるイジュマーアの権威性/ ジュワイニーとガザーリーにおけるイジュマーアの権威性/ アーミディーとシャ
   ーティビーにおけるイジュマーアの権威性/ 廃棄の理論とイジュマーアの権威性/ まとめ

第二部 法論理学

 第一章 スンナ派法学のキヤースにおける非類推的論証
序/ ア・フォルティオリ論証(一層強力な理由による論証)/ 帰謬法による論証/ ア・フォルティオリ論証および帰謬法の論理学的属性と三段論法

 第二章 スンナ派法学における論理学、形式的論証、および論証の形式化
はじめに/ ガザーリーにおける論理学と法理論の統合/ イブン・クダーマによる総合的統合アーミディーによるアプローチ/ イブン・アル=ハージブによる多大な関与/ 法理論における論理学の中心性/ むすび

 第三章 スンナ派法理論における論理構造の発展
シャーフィイーおよび彼の後継者たちの理論におけるイッラの概念/ 三/九世紀におけるイッラ/ バスリーのイッラ理論/ ガザーリーのイッラ理論/ まとめと結論

第三部 方法論

 第一章 シャーティビーの法理論におけるクルアーンの優位について
イスラーム法理論の現世性/ クルアーンとシャーティビー/ クルアーンの完結性と優位性/シャリーアの普遍的原則とシャーティビーの現世性

 第二章 ウスール・アル=フィクフ——伝統を超えて
ずっしりと重い凋落——オリエンタリズム的言説の中のイスラーム法/ イスラーム法理論についての独創性研究の意義/ 現世性という構成要素/ イスラーム法理論の個別的独創的展開/ ガザーリーによるウスール・アル=フィクフ学に関する三作品/ マスラハ理論の発展/ 時代とともに変化する進展の学としてのウスール・アル=フィクフ学


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