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ともに生きる地域コミュニティ

ともに生きる地域コミュニティ

A5判 144ページ 並製
定価:1,800円+税
ISBN978-4-501-63150-5 C3000
奥付の初版発行年月:2018年10月 / 発売日:2018年10月上旬

内容紹介

「Society 5.0(超スマート社会)」では、「地域コミュニティ」に関する事柄が不十分であり、「人々がともに生きる社会(コミュニティ)」から「科学技術」を考える必要がある。本書では、人間を中心とした望ましい未来社会の基盤(地域社会のあり方)を検討し、どのようにサイバー空間と地域(都市)を計画すればよいか、事例をもとに提言する。

前書きなど

本書の目的―― 未来社会をコミュニティの観点から考える
 情報通信技術(ICT)の進歩に伴って,IoT(Internet of Things:モノのインターネット),ロボット,AI などさまざまな新しい技術が私たちの日常生活に入ってきつつある.こうした新技術は私たちの生活や社会をどのように変えるのだろうか.あるいは,私たちはそれらの技術によってどのような素晴らしい未来社会を思い描くことができるのだろうか.
 現在,世界各国がこのような未来戦略を模索している.なかでも,ドイツが掲げる“Industrie 4.0:Smart Manufacturing for the Future” は世界の注目を集めている.これに対して日本でも2016年5月,内閣府が「科学技術イノベーション総合戦略2016」を策定し,そのなかで「Society 5.0(超スマート社会)」の実現というテーマを打ち出した.
 「Society 5.0(超スマート社会)」が“Industrie 4.0:Smart Manufacturingfor the Future” を超えているのは,後者が,「製造分野(モノつくり)」に限定した視野しか持たないのに対して,前者はより広く,社会全体を射程に捉えている点にある.後述するように,「後期近代」としての現代においては,「科学技術」の社会的評価に関して――より正確にいえば「科学技術」と社会の相互関係と人類の未来について,しっかりと見据える必要がある.その意味で,「Society 5.0(超スマート社会)」は“Industrie 4.0:Smart Manufacturing for the Future”を超える意義を持っている.そして,この立場において,「横断型基幹科学技術」「文理融合研究」の真価が発揮される.とはいえ,現状の「Society 5.0」構想に,「社会」(人びとの関係性としてのコミュニティのあり方)に関する事柄が十分に書き込まれているとはいえない.現状の「Society 5.0」構想は,経済産業省による「第4次産業革命」に「社会に関する若干の言及」を付加したものである.これでは,未来の社会戦略としては不十分である.われわれはいま,むしろ,「人びとが共に生きる社会(共同体:Community)」の側から,「科学技術」を考えるべき時期に来ているのである.
 本書は以上のような問題意識のもとに,文理を横断する多様な視座から,人間を中心とした望ましい未来社会の基盤を検討するものである.

本書の構成
 本書は,「Society 5.0」をキータームとして,以下の各章から構成される.
 第1 章「共生のためのサイバー・コミュニティ――未来へのロードマップ」(遠藤薫)は,超スマート社会の設計とマネジメントに社会/人間的要素を組み込むことの重要性を説き,そのための,住民の社会運営への積極的参画を前提とした,具体的なサイバー・コミュニティ評価システムを提案する.
 第2 章「超サイバー社会の構成――沼島プロジェクト」(榊原一紀・玉置久)は,太陽光発電や水素燃料,あるいは蓄電池などの新たな要素技術の発展に伴って近年注目されている,比較的小さなコミュニティ内でエネルギーを生成・供給・消費する自律分散型システムについて,「沼島プロジェクト」を題材に検討する.
 第3 章「地域の“ 情報場” をめぐるコミュニティ構想に向けて」(河又貴洋)は,地域をめぐる現代日本の抱える社会経済的問題に着目し,先端の情報通信技術(ICT)の「社会形成」について考察し,課題先進国としての日本が直面する技術課題の問題点に関する議論において,「場所性」(「没場所性」(placelessness)の反語としての)と「地域性」(locality)の観点が重要であることを提示する.
 第4 章「映像アーカイブの活用による地域コミュニティの文化的再生」(北村順生)は,アナログの写真やフィルムなどの形で地域社会に残された映像資料を,デジタル技術を活用した映像アーカイブとして保存,活用することが,地域コミュニティの再生と結びつく可能性について,具体的な実践事例を踏まえながら考察する.
 第5 章「﹁思い出﹂ をつなぐネットワークからCommunity 5.0へ――宮城県山元町の復興支援活動より」(服部哲・松本早野香・吉田寛)は,Society 5.0の構想が実社会にフィットして,豊かな社会を実現するためには,スマート技術を使って構築される情報システムの外部にあり,情報システムに直接参与していない人びとの意志や文化,そして協力などが不可欠であることを,筆者たちが2011 年の東日本大震災以降,復興に関わってきた被災地の現実から考える.
 第6 章「Society 5.0とコンテンツツーリズム――聖アウグスティヌス号について」(平田知久)は,旅客船「聖アウグスティヌス号」の来歴とこの船に関連するさまざまな情報を用いながら,Society 5.0に資するコンテンツツーリズムのあり方を考察し,その答えをもってSociety 5.0への提言を行う.
 第7 章「“ 人を中心とした” システムとの共創」(椹木哲夫)は,国際自動制御連盟世界会議IFAC World Congress 2023の大会テーマに「わ:WA」(『わ:「環」を以て「輪」を為し「和」を創る』)が採用され,自然環境と人間社会の適切な相互作用(フィードバック)をなすためのシステム理論の構築とそれを実現するシステム化技術の確立に焦点が当てられていることを踏まえ,3 つの「わ」の観点から,来るべき超スマート社会の実現課題について概観する.

 本書とともに来るべき社会について考えていただければ幸いである.

2018年7月
横幹〈知の統合〉シリーズ編集委員会
委員長 遠藤薫


目次

第1章 共生のためのサイバー・コミュニティ―― 未来へのロードマップ……遠藤 薫
 1.はじめに――未来社会学と歴史
 2.第4次産業革命とは
 3.スマートシティ/ Society 5.0への動きとその問題
 4.社会的なるものと社会の進化
 5.社会が進化するとは
 6.おわりに
第2章 超サイバー社会の構成―― 沼島プロジェクト……榊原 一紀・玉置 久
 1.沼島プロジェクト
 2.実証実験:直流マイクログリッドの開発
 3.仮想実験:全体システムの評価と最適化
 4.システム学から見た沼島プロジェクト
 5.沼島プロジェクトの今後
第3章 地域の“ 情報場” をめぐるコミュニティ構想に向けて……河又 貴洋
 1.はじめに――Society 5.0への視座
 2.情報と場所性――「地域性」(Locality)
 3.都市と地方の相剋/相補性
 4.まとめ――「地域・場所性」とコミュニティ
第4章 映像アーカイブの活用による地域コミュニティの文化的再生……北村 順生
 1.「Society 5.0」と地域コミュニティの再生
 2.映像アーカイブと地域社会
 3.地域のデジタル映像アーカイブの事例
 4.映像アーカイブの活用事例
 5.映像アーカイブ実践の可能性
 6.まとめ
第5章 「思い出」をつなぐネットワークからCommunity 5.0へ―― 宮城県山元町の復興支援活動より……服部 哲・松本 早野香・吉田 寛
 1.はじめに
 2.被災地としての山元町とその課題
 3.山元町パソコン愛好会と地域SNS の事例
 4. 臨時災害放送局「りんごラジオ」の記録に基づく復興記録アーカイブの事例
 5.被災地からCommunity 5.0を考える
 6.おわりに――山元町からの提案
第6章 Society 5.0とコンテンツツーリズム―― 聖アウグスティヌス号について……平田 知久
 1.はじめに――本章の目的
 2.コンテンツツーリズムとSociety 5.0
 3.コンテンツツーリズムの陥穽としてのコトの一意化
 4.コンテンツツーリズムの課題としてのコトの多意化
 5.聖アウグスティヌス号について
 6.おわりに――まとめとSociety 5.0の展望
第7章 “ 人を中心とした” システムとの共創……椹木 哲夫
 1.はじめに
 2.「環」を以て――第3の生活世界
 3.「輪」を為し――SoSと知識の流通
 4.「和」を創る――レジリエンスと共感
 5.さいごに
あとがき

参考文献
索 引
編著者紹介


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