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 生命を操る謎の細菌創造する破壊者  ファイトプラズマ

創造する破壊者 ファイトプラズマ 生命を操る謎の細菌

A5判 400ページ
価格:3,600円+税
ISBN978-4-13-066139-3 C3045
奥付の初版発行年月:2017年08月 / 発売日:2017年08月上旬

内容紹介

1000年にわたり誰も解けなかった最小生命体の謎は,日本人により解明された.基礎から応用にいたる幅広い成果はいかにマネジメントされ世界をリードし続けたのか.その極意と醍醐味をすべての人に向け,余すところなく綴った無類の一冊.図解130点,写真330点を駆使.ヴィジュアルによる説得力に富む解説と,本文とコラムを組み合わせたメリハリある大胆な構成に興味がかきたてられる.世界中で猛威を奮い農業を壊滅させるナノ細菌「ファイトプラズマ」の謎を解明した著者が,その「研究の歴史」を縦軸としてひも解きながら,研究の現場で突き当たるさまざまな壁をいかに乗り越えたか,研究者の洞察と行動を横軸に据え,解明までの全過程を立体的に語る.科学のミステリーが解き明かされる過程は推理劇のようであり,数々のエピソードは,現代を生きる全ての学生,社会人に問いかける科学読み物として圧倒的な臨場感を放つ.物語として読み学び,エッセーとして楽しみ,実用書としても活用できる新感覚の書である.これからの時代を生き抜くためには,科学的・論理的思考だけでなく,閃きを逃さず自分の枠組みの中心におき,戦略を柔軟に組み立ててゆく能力が求められる.この能力はいくつもの難関を突破することで磨かれ身についていく.そのときに誰もが必要とする大切な智恵が随所に散りばめられた本書は,生き抜く力と心の奥底に眠るささやきを呼び覚ましてくれる現代人必読の書である.本文オールカラー.●専門的知識は不要:全て脚注に丁寧な説明●時間軸を超えた連関:至る所に参照先が示されている●多くの漢字にふりがな:中高生でも読める浅島 誠 東京理科大学副学長・東京大学名誉教授(日本学士院賞恩賜賞等受賞多数) ファイトプラズマがユニークな細菌で,農作物や果樹に甚大な被害をもたらすしくみ,診断・予防・治療,植物医師養成や植物病院開設など,研究成果が社会に貢献し国際展開している.研究の素晴らしさに感じ入った.写真,図もカラーで,社会人・学生・初学者にも分かりやすく読みやすい.すごいエネルギーでまとめられている.横尾 博 イオン(株)取締役会議長・公益財団法人 イオンワンパーセントクラブ理事長 これは面白い.興味津々である.難解な本だと思っていたが,分かりやすく書いてある.コラムも最高だ.生命とは何か,だれが勝者か.社会改革の真の意義,経済や政治,産業に通じる仮説のドグマに陥らない普遍性を感じると共に,粘り強い研究やモノの見方に感動した.

著者プロフィール

難波 成任(ナンバ シゲトウ)

東京大学大学院名誉教授.
東京大学農学部卒業,同大学院農学系研究科博士課程修了.米コーネル大学客員研究員,東京大学新領域創成科学研究科教授,同農学生命科学研究科教授を経て2017年より同特任教授.

専門は「植物病理学」で,植物病原微生物の宿主決定・病原性決定の分子機構,植物の病気の診断と治療・予防の科学をテーマとして研究活動に取り組み,ファイトプラズマ(昆虫が媒介する微生物)の研究では世界のトップリーダーである.また,世界で最初に開設され,2006年に開設100年を迎えた「植物病理学研究室」の主任教授を務めた.同時に,植物の医師認定と東大植物病院を設立し,「植物医科学研究室」を開設し担当している.

日本植物病理学会賞(2002),マイコプラズマ学会北本賞受賞(

上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに
1章 謎の病気
 1.1 謎の病気
 1.2 基幹産業の衰退
 1.3 戦後の食糧難
 1.4 ウイルス病原説
 1.5 他にもある萎黄叢生病
2章 MLO(ファイトプラズマ)の発見
 2.1 ウイルス病と考えられていた
 2.2 マイコプラズマ様微生物(MLO)の発見
 2.3 病原であることの証明
 2.4 学問のパラダイムシフト
 2.5 その後の研究
3章 挑戦の系譜
 3.1 一番良い場所
 3.2 裸一貫からのスタート
 3.3 軸足の大切さ
 3.4 金と地位と名誉は追いかけるのでなく付いてくるもの
 3.5 組織マネジメントと異分野から学ぶことの大切さ
 3.6 外部ストレージによる創造力強化
 3.7 元々携わっていた牙城「植物ウイルス研究」
4章 MLOからファイトプラズマへ
 4.1 混沌とした世界
 4.2 2つのブレークスルー
 4.3 分類体系
 4.4 RFLPによる分類
 4.5 リボソームRNAオペロン
 4.6 ハウスキーピング遺伝子
5章 不可能と思われたゲノム解読
 5.1 コドン暗号は変則的か?
 5.2 世界で唯一のファイトプラズマ・ミュータント
 5.3 解き明かされた全ゲノム
 5.4 巨大植物産業が微小細菌ファイトプラズマに翻弄される!
 5.5 ゲノムサイズの謎
 5.5 染色体外DNAの進化
6章 植物と昆虫に感染するしくみ
 6.1 ファイトプラズマの動き
 6.2 分泌タンパク質は直接宿主にはたらきかける
 6.3 少ない遺伝子を植物と昆虫で使い分ける
 6.4 膜タンパク質が媒介昆虫を決める
7章 病原性因子の発見——重鎮の言葉を跳ね返すまで
 7.1 ユニークな病徴
 7.2 ファイトプラズマで初めての病原性遺伝子
 7.3 タンパク質分泌装置
 7.4 天狗巣病の病原性因子「TENGU」
 7.5 TENGUは植物を不捻にする
 7.6 葉化病とABCEモデル
 7.7 「かたち」を決める遺伝子
 7.8 葉化病の病原性因子「ファイロジェン」
 7.9 病原性因子はなぜ生まれたか?
8章 ファイトプラズマ病をどのように根絶するか?
 8.1 診断技術が確立されるまで
 8.2 世界初の遺伝子診断キット
 8.3 診断キットが果たす国際的使命
 8.4 治療技術の開発
おわりに ファイトプラズマ研究の新たなパラダイムに向けて
 9.1 ライフワークの発見
 9.2 終わりの見えないもう1つの仕事
 9.3 実在する青い鳥を追い求めて
 9.4 ファイトプラズマ研究の新たなパラダイムに向けて

【コラム】
自然哲学者科学者研究屋/日本初のファイトプラズマ病報告/研究の先見性/横に這わないヨコバイ?/ファイトプラズマ発見伝/日本語雑誌はネタの宝庫/ゆっくりと流れていた昔の時間/MLO培養の試みと記録消失/ファイトプラズマ研究に交錯した人々/研究と雑用の両立は可能か?/人文社会系の解は1つではない/サイロ・エフェクト/課題設定の難しさ/ファイトプラズマ研究と研究費/研究室マネジメントのコツ/要素還元/ライフワークはどのようにして生まれるのか/国際学会/RFLPによる分類のリスク/複数あるリボソーム遺伝子の意味/デジタル知とアナログ知/タイミングとスタンダード/三財を散財する日本/材料がすべて/ブレークスルーはどうしたらできるか/ブレークスルーに必要な戦略/名付け親は共同通信/壮大なる復讐戦略/ファイトプラズマはどのように昆虫・植物に適応してきたか/粒子と波の二面性を持つ微生物/篩部の居心地/ファイトプラズマの起源は植物か昆虫か?/表と裏/菌と金/ポインセチアは天狗巣病?/生命と非生命のあいだ(前):農業・食料の保守性/生命と非生命のあいだ(後):科学・技術の進歩は直線的ではない/何かことを極めるにはマクロよりもミクロから入れ/ネーミングがすべて/アジサイ葉化病は品種か?/論文の掲載雑誌の選択の難しさ/病徴に見え隠れするファイトプラズマのしたたかな生存戦略/生命の軸/共生と寄生のあいだ/視点を変えるだけで景色は一変/無理な注文/なぜ途上国では植物病の根絶が難しいのか/ゴッドハンド/テトラサイクリン治療とナツメの味/優性抵抗性と劣性抵抗性/AI農業の先に見えるもの/文理両道官と胆力理事

Phytoplasmology
Shigetou NAMBA


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